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【特別企画】マイクロソフト、Linuxをターゲットとしたキャンペーンを展開中

2004年03月07日 15時30分更新

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選択肢のない状態が果たしていいことなのでしょうか

[編集部]

設計思想の違いにも関連するかと思いますが、オープンソースの場合、サポートの問題があるかと思います。自由に改変できるソフトウェアのサポートはどのようにされているのでしょうか。

[関川氏]

我々が認識していた問題として、これまでのRed Hat Linuxは、ほぼ半年ごとにバージョンアップしていまして、たとえばISVさんが動作検証をしましても、半年後には新製品が登場するので、今度はそちらにあわせて動作検証をして頂く必要があります。そうすると、あるソフトウェアは「Red Hat Linux 7.2」で動作検証されていて、別のソフトウェアは「Red Hat Linux 7.3」で動作検証されている場合、両方を組み合わせて使用すると、動作保証できないわけです。

我々は昨年5月に「Red Hat Linux Advanced Server 2.1」(現在はRed Hat Enterprise Linux ASとして販売)をリリースしました。こちらは1年から1年半ごとにリリースし、5年間のパッチ提供サポートを付けるといったことをしています。開発に際しても、コミュニティに依存する形から、ISV、IHVパートナーさんからのリクエストをきちんと受け入れるようになっています。結局、ある意味でWindowsに近い、もちろん動作検証を行なった製品をリリースできるようになりました。

データセンター市場に対しても、ベリタスソフトウェアや、BEAシステムズ、オラクルなど、これまで商用UNIX上で実績のあるソフトウェアがLinux上で稼働しています。ハードウェアも、リソース割り当て機能を持つイージェネラの「BladeFrame」や、IBMのeServerシリーズなど、IAサーバだけでなくメインフレーム上でも利用できます。これまで実績のあるアプリケーションやハードウェアを利用できるわけです。また、UNIXからWindowsに移行するときのように、アプリケーションを1から開発し直す必要はありません。今まで稼働していたものがUNIX用であれば、Linuxには移りやすいと思います。当然、マイクロソフトさんもそこはお気づきで、「Windows Services for UNIX」といった移行ツールを用意されています。

お客様サイドについても、モルガン・スタンレー様やメリルリンチ様、リーマン・ブラザーズ様といった金融系のお客様が、大規模に「Red Hat Enterprise Linux AS」を導入されておりまして、我々のコンサルティング部隊がご協力しております。

また、元々がディストリビューションパッケージとして開発しておりますので、WebサーバのApacheや、メールサーバのsendmail、アプリケーションサーバのTomcatといった、オープンソースのアプリケーションが標準で提供されています。これらを使ってシステムを構築される場合、わざわざWindowsを使おうという方は少ないのではないでしょうか。

[編集部]

しかし、ISVさんから見ると、“Linux対応”といった場合、必ずしもレッドハットさんの製品だけでなく、ほかのディストリビューションをサポートする必要もあるのではないでしょうか。

[関川氏]

Linuxの世界という意味では、我々の計画的なリリースサイクルや、すでに昨年から「Red Hat Linux Advanced Server 2.1」をリリースしているという実績、もともとあるレッドハットの認知といったところで、ISV様にLinux対応の最初のプラットフォームとして頂いていると思います。また、UNIXと比べますと、LinuxディストリビューションはLSB(Linux Standard Base、Linuxのディレクトリ構造やライブラリの標準仕様)といった仕様がありますので、ディストリビューション間でのポーティングはそれほど大変ということはないでしょう。

マイクロソフトさんは、ISVさんがいちいちいろいろなプラットフォームに対応するのは大変じゃないか、とおっしゃるかも知れませんが、これは競争原理というものをどのように捉えるかという問題だと思います。

1社しか選択肢がない世界が果たして幸せな世界なのでしょうか。たとえばUNIXでも、SolarisもあればHP-UXも、AIXもあり、ISVさんはたとえばこの市場はHP-UXが強いからまずはHP-UXにポーティングしよう、それからお客様のご要望があればSolarisやAIXにも対応する、といったようにされているかと思います。Red Hat Linuxに対応して、要望があればほかのディストリビューションにも対応する、それはISVさんがビジネスとしてお考えになることだと思います。

さらに広く見れば、現在たとえばUNIXに対応したアプリケーションがあるとして、次にどのプラットフォームに対応するかといったときに、WindowsもLinuxもあり、どちらを選ぶかは各社さんの戦略によるわけです。世の中の常識から見れば別にこれはごく普通のことで、逆にすべてのプラットフォームがマイクロソフトさんのものになるべきか、すべてが独占されている方がISVさんにとって幸せなのかということになるかと思います。

お客様にとっても、たとえばハードウェアベンダーさんがたくさんいらっしゃって、価格競争が起きるわけですが、競争があるから価格が下がるわけではないですか。

ですから、ここから先は思想的な問題になるのでしょうが、資本主義をどう考えるか、競争があるべきかどうかという問いになるでしょう。レッドハットは、UNIXや他社さんのLinuxディストリビューション、場合によってはWindowsとも競争になるわけですが、それはある意味で、競争があるから世の中が健全になると考えています。

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