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【特別企画】マイクロソフト、Linuxをターゲットとしたキャンペーンを展開中

2004年03月07日 15時30分更新

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マイクロソフト(株)が4月8日に開催したプレス向けワークショップ“Windows Server 2003 Reviewer's Workshop”で「一度Linuxをやっている人とちゃんと話をしてみたい」という趣旨の提案を受けた。“脱”Windowsで話題の電子政府市場をターゲットに、Red Hat LinuxとWindowsのガチンコ勝負となるはずだったが……。

Linuxに対する5つの疑問

●Linuxには管理ツールがなくTCOがかかるのでは?
●Linuxは機能が少なくROIが低いのでは?
●Linuxは自由に改変できるのにサポートできるのか?
●ディストリビューションが多く、ISVがLinuxをサポートするのは難しいのでは?
●電子政府はまだできていないのに本当にLinuxを採用するのか?

マイクロソフト(株)はこの6月、データセンター向け新OS「Windows Server 2003」を発売する。普段は日刊アスキー Linuxの編集を担当している筆者は、4月8日に行なわれた“Windows Server 2003 Reviewer's Workshop”を取材する機会に恵まれた。そこでは、マイクロソフトのデータセンター向け管理機能である“Dynamic System Initiative”(動的なリソース割り当て機能や運用管理機能、管理ツールなどを含めたソフトウェアのアーキテクチャ)といった、OS機能の説明が行なわれた。セミナー終了後、マイクロソフトのサーバ製品担当者と話す中で、Linuxに対する率直な問題点の指摘を聞くことができた。

マイクロソフトがLinuxの問題点として主張していたのは、次のようなポイントだ。 ・LinuxはWindowsと比べて管理ツールが少なく、TCO(Total Cost of Ownership、総所有コスト)が高くなる

・LinuxはWindowsと比べて管理ツールが少なく、TCO(Total Cost of Ownership、総所有コスト)が高くなる
・Linuxは必要十分な機能しか提供しないから、WindowsのほうがROI(Return On Invenstment、投資利益率)が高い
・Linuxは自由に改変できるのに、きちんとサポートできるのか
・ディストリビューション(配布パッケージ)が多いので、ISVはサポートする手間がかかる
“電子政府、脱Windows”といった報道があるが、まだ実現していない電子政府で“脱”Windowsはあり得ず、感情的にLinuxを支持しているにすぎない

レッドハット(株)マーケティングマネージャの関川誠氏
レッドハット(株)マーケティングマネージャの関川誠氏。
そこで、マイクロソフトから話題が出た、電子政府市場に対するマーケティング戦略をテーマに、マイクロソフトが指摘するLinuxの問題と、Linux陣営から見たマイクロソフトの問題点についてそれぞれに意見を述べてもらう対談を行なうこととした。対談の相手には、Linuxディストリビューションや開発ツール、サポートなどを提供しているレッドハット(株)から、同社マーケティングマネージャである関川誠氏の参加が決まった。レッドハットの条件は、「“オープンソースコミュニティと共に”がレッドハットの基本理念」(会社概要より)であるため、製品の比較だけでなく、その背景にあるオープンソースの理念も含め議論することであった。

レッドハットは、4月14日に企業システム向け中規模サーバOS「Red Hat Enterprise Linux ES」と、企業向けワークステーションOS「Red Hat Enterprise Linux WS」をリリースし、すでに販売されている「Red Hat Enterprise Linux AS」とあわせ、企業システム向けのOSラインナップがちょうどそろったところだ。リリース間近の「Windows Server 2003」とのマーケティング戦略の違いについても興味がある。

テーマ設定などに時間をかけすぎたこともあり、マイクロソフトへの連絡は当初の予定から大幅に遅れてしまった。対談の相手とテーマについて事情を説明したところ、製品リリースが近いためスケジュールの都合がつかず、またオープンソースとクローズドソースという不毛な論争になるのではないかとの懸念から、今回は参加できないという説明があった。タイミングの問題や、趣旨がうまく伝わらなかったこともあり、対談に応じてもらうことができなかった。非常に残念だ。

とはいえ、先に挙げた問題については何らかの回答を出しておきたい。この記事では、レッドハット関川氏にご協力頂き、マイクロソフトが指摘する問題への解答を提示する。



e-Japanは“脱”Windows?

昨年11月16日、朝日新聞一面に「電子政府 脱ウィンドウズへ 基本ソフト 公開型導入の動き」と題する記事が掲載された。このような記事が出てくる背景にはまず、政府機関が使用するシステムの多くにWindowsが採用されてきた事実がある。有名なものでは、昨年8月5日より稼働を開始した“住民基本台帳ネットワーク”(住基ネット)がある。住基ネットは、いわゆる“国民総背番号制”への感情的な反論とセキュリティに対する不安感が絡んで、大きな議論を呼んだ。元総務大臣政務官の河野太郎氏は、総務省が“セキュアOS”についての研究会を設けた背景として、住基ネットにWindowsを採用したことへの批判があったと指摘している。

また、経済産業省は、国内のコンピュータ産業が国際競争力を欠くという危機感を持っており、Linuxの実用化研究を目的に、産業技術総合研究所で大規模にLinuxを導入するプロジェクトを開始するという。この文脈では、オープンソース市場が今後拡大するであろうという予測に基づき、産業政策的な位置づけでLinuxが登場する。

そのほか、ドイツ政府によるSuSE Linux導入や、米国国防総省でのLinux導入など、海外の政府機関でLinux採用が進んでいることもある。

Windowsは世論と経済政策、外圧により、政府機関が脱ぐべきものにされてしまったわけだ。



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