OSにはLinuxを採用
アプリケーションも充実
シャープ「ザウルス SL-A300」レビュー。写真をクリックすると当該記事に移動します。 |
続いてソフトウェアを見ていこう。まずOSには、「SL-A300」と同様にLinuxが採用されている。その上で動作するアプリケーションは、「カレンダー」「アドレス帳」「ToDo」などといった基本的なものから、先述した「HancomMobileWord」や「HancomMobileSheet」といったビジネスアプリケーション、そしてインターネット関連ツールに「メール」とWebブラウザである「NetFront v3.0」、そのほか「電卓」や「世界時計」など17種類があらかじめインストールされている。PDAとして基本になるカレンダーやアドレス帳は、さすがにソツなくまとめられているという印象で、まったくマニュアルやヘルプを見なくても使い始められる。またシステム液晶のおかげで、カレンダーの月間表示の使いやすさやアドレス帳の閲覧性が高くなっている点は特筆しておきたい。
画面2 カレンダーの画面。1カ月分のカレンダーでも、その日の予定がしっかり表示されるため一覧性が高い。 | 画面3 アドレス帳で登録しているところ。文字の滑らかさ、読みやすさに注目してほしい。 |
ビジネスアプリケーションのHancomMobileWordは、書式設定なども行えるワープロソフト。さすがにPC上で動作するワープロソフトと比べると機能面で見劣りするが、PC上のワープロを使う前に、電車の中で文書の骨子を作っておく、あるいはちょっとしたメモを記述するといった用途であれば何ら問題はない。HancomMobileSheetは、180種類以上の関数が用意されているので「表計算を行うための機能」という部分では不足なし。ただ装飾関連の機能などはないため、そのあたりは割り切って使う必要がある。
HacomMobileWordとHancomMobileSheetは、それぞれMicrosoft Word 97/98/2000/2002(.doc)形式とMicrosoft Excel 95/97/2000/2002(.xls)形式のファイルとの互換性もあり、読み込みおよび編集を可能にしている。気になるのは互換性だが、文字列に対しての装飾(ボールド、イタリックなど)や文字の大きさといった書式情報はすべてHancomMobileWord/Sheetでも反映されるが、Word/Excel上におけるフォントの指定は無効になる、Excelのグラフは表示できないなどといった部分もあるが、まずまず互換性は高いと言えるのではないだろうか。いずれにしてもdocやxlsファイルを変換作業などを経ずに読み込めるメリットは大きく、これにより、会社に忘れたdoc形式の資料をメールで送ってもらい、それを受信して内容を確認するといった使い方がザウルス単体で行える。ビジネスユースでの利用時に大きな意味を持ってくるだろう。
画面4 とにかく表示される文字数が多いため、PDAとは思えない見通しの良さを実現し「HancomMobileWord」。 |
Microsoft Word 2000の画面。 | HancomMobileWordの画面。 | |
画面5、6 Microsoft Word 2000とHancomMobileWordで、まったく同じドキュメントを表示したところ。罫線もしっかり表示されている。 |
インターネット関連ツールであるメールとNetFront v3.0は、どちらもモバイル環境として使うものとして考えると必要にして十分な機能を備える。まずメールは、画面左側にアカウントとフォルダが並び、そのいずれかを選択すると右側にメール一覧が表示される、という画面構成で、メールの内容を参照する場合はメールのリストから読みたいメールをタップする。SL-C700自身でPOP3もしくはIMAP4での受信とSMTPでの送信が行えるほか、PCとの間でシンクロしたメールもここで参照する。受信したメールはフォルダを使って振り分けられ、このときは条件として送信者と宛先、サブジェクト、本文の内容が指定できる。そのほかファイルを添付したメールの作成が可能なため、HancomMobileWordやHancomMobileSheetで作成したファイルをメールで送るといった作業もSL-C700だけで完結する。
画面7 付属する表計算ソフト「HancomMobileSheet」。VGA液晶の威力がもっとも発揮されるアプリケーションだ。 |
Microsoft Excel 2000の画面。 | HancomMobileSheetの画面。 | |
画面8、9 こちらはMicrosoft Excel 2000とHancomMobileSheetの比較。セルの背景色などは反映されているが、残念ながらグラフは表示されない。 |
NetFront v3.0は組み込み型ブラウザの開発元として定評のあるアクセス製のもので、HTML 4.01およびXHTML 1.0に準拠している。またCSSやJavaScript 1.5(サブセット仕様)、フレームやアニメーションGIF、そして暗号化通信のプロトコルであるSSLにも対応しているため、ほとんどのページを問題なく閲覧できる。ブラウザとしての機能を見ると、ブックマーク機能はもちろん、表示しているページ/画像の保存やページ内検索など、基本的な機能はしっかり抑えられている。便利なのが「オートクルーズ」と呼ばれている機能で、これはあらかじめ設定されたWebサイトを自動的に巡回して保存してくれるというもの。外出する前にオートクルーズ機能を使ってWebサイトを保存しておき、電車の中でゆっくりと読むといったことが可能になる。640×480ドットの高精細液晶のおかげでWebサイトが非常に見やすいことと相まって、非常に利用価値の高い機能だ。
画面10 各種設定項目が並ぶ「設定」。ソフトウェアの追加や削除、パソコンへのバックアップなどはここで行う。 |
もうひとつ、ザウルスに添付されているアプリケーションで注目したいのが「MediaPlayer」だ。これはMP3とWAVE、そしてMPEG-1形式のファイルを再生できる。特に注目したいのがMPEG-1形式に対応しているという部分で、例えばパソコン上で録画したTV番組を、MPEG-1に変換してザウルス上で見るといった使い方が考えられる。こうした使い方をするには映像ソースを取り込み、MPEG-1形式に変換するハードウェアやソフトウェアが必要なため敷居が多少高くなるが、少なくともザウルスの活用方法が広がる機能であるのは間違いない。
SL-C700にプリインストールされているソフトウェア
カレンダー |
- カレンダー
- ファイルを新規作成/コピーすると、カレンダーの該当日付にそのファイルがリンクされる「ファイルリンク」機能は健在。1日のタイムテーブルだけでなく、予定のみを抽出して表示できるようになった。
アドレス帳 |
- アドレス帳
- 郵便辞書による自動住所入力や、メールアドレスにタッチするとメーラが、URLにタッチするとWebブラウザが起動するなど、外部アプリケーションとの連係機能もあり。住所は、「郵便番号」「都道府県」「市町村」「番地」といった項目分けだ。
ToDo |
- ToDo
- 重要度、期限日、プライベート/ビジネスの分類などを設定でき、完了/未完といった要素を含めてソート表示が可能。アラームもあり。
メモ帳 |
- メモ帳
- 「TEXT」(テキスト文章)と「Memo」(Outlookのメモ帳)の2種類の形式で保存できる。さらにTEXTとMemoはお互いに変換可能。さらに、文字コードの変換もでき、「SHIFT-JIS」「JIS」「EUC」「Unicode(UTF-8)」などのメニューが並ぶ。
メール |
- メール
- ファイル添付、フォルダ作成、メモリカードへの保存が可能なほか、マルチアカウントにも対応する。プロトコルはSMTP、POP3、IMAP4。Outlookのメールデータとシンクロすることもできる。メール画面は、左ペインにフォルダツリーが、右ペイン上にSubjectなどメール一覧が、右ペイン下に選択されているメール一覧が並ぶといった標準的な構成。アドレス帳と連動し、宛先メールアドレスを自動入力してくれるのもうれしい。また、非接続時にメールボタンを2秒以上押すと自動接続し、通信が終了した時点で自動切断してくれるといった動作も可能だ。
NetFront v3.0 |
- NetFront v3.0
- Webブラウザ。画像、アニメーション、テーブル、JavaScript、CSS、プラグインなどのオン/オフができるほか、Webページをザウルスの画面内に納めてはみ出さないように表示することが可能。自動巡回機能や、メールとの連動機能も有する。
Media Player |
- Media Player
- MPEG-1、MP3、WAVファイルを再生可能。下記ボイスレコーダー(WAV)の再生も行う。音楽ファイル再生中は画面表示をオフにできるほか、動画ファイル再生中は省電力設定による輝度低下や画面表示オフが行われないようになっている。
イメージ ノート |
- イメージ ノート
- BMP、JPEG、GIF、PNG形式の画像ファイルを表示可能。ザウルスショットで取り込んだ画像も、このアプリケーションで表示することとなる。また、ファイルの新規作成を選べば、手書きメモも作成できる。
HancomMobileSheet |
- HancomMobileSheet
- Microsoft Excel互換の表計算ソフト。Microsoft Excel 2002の、財務関数、日付/時刻関数、数学/三角関数、統計関数、データベース関数、文字列操作関数など、76個の関数をサポートする。罫線を引いた簡単な集計表であれば、ほぼ問題なく使用できるだろう。
HancomMobileSheet |
- HancomMobileWord
- Microsoft Word互換のワープロソフト。Microsoft Word 2002の日付け指定(yy/mm/dd ○○時○○分など)や、図版(BMP、PNG、GIF、JPEG、PCX、PCT、TIF)の読み込み、下線、フォントサイズ、フォントの色も再現可能。斜体などは表示しないが設定のみは保持する。
ボイスレコーダー |
- ボイスレコーダー
- 別売りの「ボイスレコーダーキット CE-VK1」(プラグインマイクとイヤホンマイクのセット、実売3800円程度)の使用を推奨。WAV形式で録音を行う。本体/SD/CFのすべてに保存できる。録音レベルの設定は、8000Hz 64kpbs~48000Hz 768kbpsまで行える。再生時の早送り、巻き戻しが、絶対時間単位ではなく、録音時間の1/10となっているのが惜しい。
電卓 |
- 電卓
- 計算可能桁数は12桁。レート換算機能もあり。
ブンコビューア |
- ブンコビューア
- シャープお得意の電子ブックビューア。同社の運営する「Sharp Space Town」からデータを購入することができる。縦書き、横書き表示のほか、行間、文字間の設定など、自分にもっとも見やすい形で本を表示することができる。CG Siliconの本領発揮で、とても小さい文字で表示させると「SL-C700を買って良かった……」としみじみ思うことだろう(一番小さいフォント表示は、本を読むには実用的ではないのだが)。
世界時計 |
- 世界時計
- ユーザーが選択した6都市の時刻を同時に表示する。
時計 |
- 時計
- ストップウォッチ機能も有する。
Sharp Space Town 入会案内 |
- Sharp Space Town 入会案内
- シャープが運営するポータルサイト。積極的にザウルスを利用したいのならば、入会しておこう。接続会員のほか、コンテンツ会員としても登録できる。同コンテンツ内で買い物をする場合はコンテンツ会員としてクレジットカードを登録しておくと楽。関連製品のラインナップにも気が配られており、例えばザウルス文庫で「鬼平犯科帳」を購入すると、関連グッズとしてPC用の「江戸古地図ソフト」などが表示されるといった具合だ。
ターミナル |
- ターミナル
- コマンドラインでザウルス(Linux)を操作できるソフトウェア。Linuxでは標準的なシェルであるbashが採用されている。lsやps aux、grepなど、16のメジャーなコマンドはドロップダウンリストで選択できる。Tabキーによる補完機能や、カーソルキーによる履歴表示/入力機能なども、タッチパネルにて利用することが可能だ。