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SL-C700

SL-C700

2003年05月24日 00時00分更新

文● 及川 晴生

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強化されますます便利になった
ザウルスショット

 パソコンとの連携は、製品に添付される専用のUSBケーブルで行う。USBは残念ながら2.0には対応していないが、それほど大きなデータを頻繁にやり取りする機会が多くないとを考えると、USB 1.1でも十分だろう。またインストール時に従来と同様の「TCP/IP」と、今回から追加された「USB-シリアル接続」のどちらかを選択する。シャープではUSB-シリアル接続を追加した理由として、ファイアウォールなどの設定によってザウルスドライブが使えないことがあり、そのための措置としている。後述するが、特にザウルスドライブの利用時に、USB-シリアル接続では使えない機能がある。利用できるのであれば「TCP/IP」を選択したい。

 パソコンと連携することにより、SL-C700内蔵メモリのバックアップやリストアのほか、「Intellisync for Zaurus」を使ってMicrosoft Outlook 97/98/2000/2002(Microsoft Outlook Expressは不可)との間で、スケジュールやアドレス帳、ToDo、メモ、メールのデータのシンクロナイズが行える。そして従来機である「SL-A300」から、「ザウルスショット」と「ザウルスドライブ」の機能も引き継がれている。

ザウルスショット
画面11 「ザウルスショット」。F10を押すとプリンタの選択ダイアログボックスが呼び出される。すでに「Zaurus」が選択されているので、そのまま「OK」を押せばよい。

 ザウルスショットはパソコン側で表示された画面をキャプチャし、自動的にSL-C700に転送するという機能。従来から進化したのが、画面イメージだけでなく印刷イメージとして取り込むことも可能になったこと。これにより、例えばワープロソフトや表計算ソフトで作成した資料を、A4のイメージとしてザウルス側で取り込むことができる。またテキストとしてキャプチャすることも可能で、この場合はテキストデータがザウルス側に転送される。パソコン上で表示されている文字列を、ザウルス上の別のアプリケーションで再利用したいといったときに利用できるだろう。

 パソコンにザウルス用のソフトウェアをインストールすると、初期設定ではWindowsの起動と同時にザウルスショットが立ち上がる。あとは画面や印刷イメージ、テキストを取り込みたいウィンドウをアクティブにした状態で、タスクトレイから「印刷イメージ取り込み(ドキュメント全体)」といったメニューを選ぶか、あるいはF10キーなどのショートカットキーを押す。印刷イメージの取り込みならプリンタダイアログが表示されるので「OK」をクリックすると、取り込みからSL-C700の転送まで自動的に行われる。なおザウルスショットでは、画面キャプチャならファイル形式(JPEG/BMP)や圧縮率を、印刷イメージなら解像度を選択して画質を設定する。実際に印刷イメージとしてWebサイトを取り込んでみると、小さな文字でもハッキリと見えるクオリティが得られた。解像度は72dpiだったが、Webサイトやプレゼンテーションソフトのシートを取り込むのであれば、この解像度でも十分実用になる。

シリアル接続 TCP/IP接続
「シリアル接続」。専用のクライアントアプリケーションを使い、ファイルのコピー&ペーストもできないが、面倒なネットワークの設定が不要。「TCP/IP接続」。Windowsのエクスプローラによってファイル操作が可能。だが、うまく動かない場合などには設定に多少の知識が必要となる。
画面12、13 ザウルスドライブの利用画面。左がシリアル接続、右はTCP/IP接続。

 ザウルスドライブは、SL-C700をドライブの1つとしてパソコンから操作することができるというもの。これを使うことで、パソコンとザウルスの間でのデータのやり取りを非常に簡単に行える。TCP/IPでの接続時には、Linuxなどでファイル共有のために利用される「Samba」というソフトウェアが使われており、これであればザウルスドライブのフル機能を利用できる。これに対してUSB-シリアル通信では、フォルダ単位での移動が行えないなどの制限が存在する。

 ケーブルさえ接続すればパソコンとザウルスの間でファイルをやり取りできるザウルスドライブはかなり便利で、これに一度慣れてしまうとCF経由でのデータのやり取りが面倒に感じてしまう。


 スケジュールおよびアドレスの管理、HancomMobileWord/Sheetを使っての外出先でのドキュメント閲覧・作成、メールとNetFrontでのインターネットへの接続、さらにはザウルスショットを使ったデータビューアとしてなど、さまざまな使い方ができ、さらにいずれも使い勝手がいいのがSL-C700だ。携帯性も抜群で、PDAとしての完成度は非常に高い。価格も実売で6万円を切るあたりと手頃感もあり、今一番おすすめのPDAだ。

ザウルスの開発環境

 開発元、あるいはサードパーティによって作成されたソフトウェアはもちろんだが、特にPDAの世界ではユーザーの手によって開発され、フリーソフトやシェアウェアとして発表されるソフトウェアが販売台数を左右することさえある。こうした面から、充実した開発環境を提供できるかどうかは非常に重要だと言える。また端末として企業などで一括導入する際に、専用のアプリケーションが容易に開発できるかどうかは、そのまま導入コストにも繋がるため大きなファクターとなりうる。

 ザウルスの開発環境を見ると、Linux上で開発が行える「Qtopia」と、従来のMIシリーズのザウルス用開発環境で新たにSLシリーズに対応した「ル・クローン Mobile Developer」が利用でき、ソフトウェアメーカーやインテグレータ、あるいはユーザーが自由に開発できる環境は整っている。またPersonalJavaにも対応し、実行環境としてInsignia Solutions社の「Jeode」を搭載している。これにより、Javaを言語として使いザウルス上で動作するソフトウェアを開発することも可能だ。

 これらのツール類の情報やライブラリのリファレンスなどは、「ザウルス宝箱Pro(http://more.sbc.co.jp/)」というホームページで公開されている。シャープも情報公開に積極的で、こうした開発に関するドキュメントの整備が行われているのは、開発者にとって大きな助けとなるだろう。
ザウルス SL-C700の主なスペック
製品名 ザウルス SL-C700
OS Embedix Linux
CPU Intel Xscale PXA250-400MHz
本体メモリ フラッシュメモリ 64MB(ユーザーエリア 約30MB)
SDRAM 32MB(ワークエリア)
モニタ 3.7型システム液晶(感圧式タッチパネル)
解像度 640×480ドット/6万5536色(30万7200画素)
接続端子 ステレオヘッドホン端子(3.5cm径)、IrDA(115kpbs)
カードスロット SDカードスロット×1、CFカードスロット×1
使用文字 JIS第1水準漢字 2965、JIS第2水準漢字 3390、非漢字 765
電源 DC3.7V、リチウムイオン充電地(取り外し/交換可能)
使用時間(目安) 連続表示 約4時間50分
消費電力 3.8W
サイズ(W×D×H) 約120mm×約83mm×約18.6mm
重量 約225g(タッチペン、保護カード、I/Oポートカバー、充電地含む)

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