撮影画像を見ると、ノイズも少なく階調表現は良好だが、パンフォーカスレンズらしく細部は甘い。発色はそれほど不自然ではないものの、小さなレンズのため周辺部が暗くなる点は少々不満が残る。なお、記録画素数は最大1600×1200ドットが撮影できるものの、カタログにも“画像をA4サイズに引き伸ばして印刷する時など、ドットが粗くならず……”とあるように、あくまで印刷向け補間画像だ。PC上で見るのが主な用途であれば、1280×960ドットで撮影した方がいいだろう。
撮影サンプル1。元画像は1200×1600ドット(640×480ドットにリサイズしている)。パンフォーカスならではの細部描写の甘さも気になるが、グラデーション部分に補間処理に起因するノイズが見受けられる。右は中央付近を640×480ドットにトリミングしたもの。 |
撮影サンプル2。元画像は960×1280ドット。マクロ撮影機能を搭載しておらず、撮影可能距離は約1m~∞なので、花などのアップを撮るような用途には向いていない。 |
撮影サンプル3。元画像は1600×1280ドット。やはりEXILIMは普段から持ち歩いてスナップ撮影するのに向いている。補間によるノイズがとくに暗部で目立つ絵となった。 |
撮影サンプル4。元画像は960×1280ドット。1280×960ドットの記録画素数では補間処理を行っていないため、ノイズは目立たないもののエッジのジャギーが少々気になる。 |
携帯に便利な超小型デジタルカメラといっても、30万画素クラスのいわゆるトイデジカメではメモ用途程度にしか使えないし、その場で画像を確認したり人に見せたりと液晶モニタの必要性は高い。その点で、EXILIMはちょうどいい性能とサイズを備えていると言える。3万円弱という実売価格を考えると、同程度の画素数でもオートフォーカスレンズを搭載するキヤノン「PowerShot A100」のほうが画質は確かにいい。しかし、EXILIMのコンパクトさや洒落たデザインは所有欲をそそるものがある。
また、超コンパクトカメラとしては、ソニーの「Cyber-shot U DSC-U10」もEXILIMとかなり競合する製品だ。EXILIMがパンフォーカスなのに対してDSC-U10はオートフォーカスで、しっかりとピントが合った絵という点ではDSC-U10のほうが優れている。パンフォーカス/単焦点というシンプルなレンズ構成だからこそEXILIMはここまで薄型になっているのであり、あまりオートフォーカス機と比べるのも酷だろう。しかし、DSC-U10の1インチ反射型液晶モニタに比べてEXILIMの1.6インチ液晶モニタは格段に見やすく“撮った絵を人に見せる”というデジタルカメラならでは用途ではEXILIMのほうが上を行っている。EXILIMは、いつでも持ち歩いて撮影し、画像を再生して楽しむという、「QV-10」のカシオ計算機ならではのデジタルカメラの基本姿勢をしっかり抑えている製品だ。
参考掲載:Cyber-shot DSC-U10の撮影サンプル画像
Cyber-shot DSC-U10の撮影サンプル1。最短撮影距離である10cmからピントが合い、マクロに切り換える必要もないので花のクローズアップも手軽に撮れる。元画像は1280×960ドット(左は640×480ドットにリサイズ、右は中央付近を640×480ドットにトリミングしたもの)。 |
撮影サンプル2。階調表現もしっかりとしており、薄暗い室内に差し込む光の加減もきれいに表現されている。元画像は1280×960ドット。 |
撮影サンプル3。撮りたい被写体にピントを合わせて背景をぼかした表現ができるのもオートフォーカス機ならではだ。元画像は1280×960ドット。 |
撮影サンプル4。夜景モードでは必ずフラッシュが発光して人物などを照らすようになっているが、ビルや街の灯りも写り込むようにスローシャッターとなる。元画像は1280×960ドット。 |
EXILIM EX-S1の主なスペック | |
製品名 | EXILIM EX-S1 |
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撮像素子 | 1/2.7インチ有効124万(総134万)画素CCD |
レンズ | f=5.6mm(35mmフィルムカメラ換算:約37mm相当)、固定焦点 |
記録媒体 | SDメモリカード(またはMMC)/内蔵フラッシュメモリ(12MB) |
記録画素数 | 1600×1200(補間)/1280×960/640×480ドット |
液晶モニタ | 1.6インチTFT(8万4000画素/354×240ドット) |
インターフェイス | USB(クレードル、DC入力兼用) |
電源 | 専用リチウムイオン充電池 |
本体サイズ | 88(W)×11.3(D)×55(H)mm |
重量 | 約85g(本体のみ) |
競合製品レビュー
ソニーマーケティング「Cyber-shot U DSC-U10」レビュー | キヤノン「PowerShot A100」レビュー | |
ミノルタ「DiMAGE X」レビュー | 東芝「sora T10(PDR-T10)」レビュー | |
ソニー「Cyber-shot P31」レビュー | 富士フイルムアクシア「eyeplate」レビュー | |