●Socket370タイプのTualatinコア版Celeron-1.4GHzを動作させてみる
Socket370タイプTualatinコア版Celeron-1.4GHz |
前項でも少しふれたが、このCPUを動作させる環境は前回のテスト機器がそのまま使えそうなので、CPUとビデオカードを入れ替えてテストすることにした。ただ、セットアップ直後に興味深い現象を確認している。それは、これまで試したTualatinコア版CPU(PentiumIII-S-1.13GHz及びCeleron-1AGHz)においてマザーボードあるいはゲタに搭載された電源回路は、一貫してCPU本来の規定コア電圧を出力しなかった(いずれも規定電圧より低い値を出力した)。ところが今回のCeleron-1.4GHzでは、一転して規定コア電圧よりも高い値を出力したのである。今回、テストした環境は、前回のレポートでお伝えした通り、コア電圧を操作する改造を施したままである。したがって、もしも「PentiumIII-S-1.13GHz」をテストした時と同じ理屈で電源回路が動作するなら、コア電圧は1.40Vを出力するハズなのだ。ところがBIOS SETUPのPC Health Statusをチェックしてみるとコア電圧は1.60Vを示していた(当然、マザーボードのコア電圧設定機能は操作していない)。
この状況を分析してみると
(1)PentiumIII-S-1.13GHzを装着した前回のテストの場合、マザーボードのコア電圧電源回路は、装着したCPU本来の規定コア電圧値より低い電圧を出力した。
(2)これは、正確にCPUのVIDパラメータを読めないところに原因があると推定した。このときマザーボードのコア電圧電源回路が認識したVIDパラメータはVIDコード(25mV 3:0)で示すと01111である。
(3)続行したオーバークロックテストでは、VIDラインに物理的な改造を施して(VID1ピンとVSSピン間に1kオームの抵抗でブリッジ)マザーボードのコア電圧電源回路に1.40Vを出力させた。この時点のVIDパラメータはVIDコード(25mV 3:0)で示すと01101となる。
(4)今回、(3)の改造を施したままCPUをCeleron-1.4GHzに組み替えて動作させたところマザーボードのコア電圧電源回路が1.60Vを出力した訳だが、その1.60Vを出力するために必要なVIDパラメータを導き出すとVIDコード(25mV 3:0)では01001になる。
(5)ちなみにこのCeleron-1.4GHzの規定コア電圧は1.50Vである。VIDコード(25mV 3:0)で示すと01011だ。ここで(3)で施した改造パラメータ01101との論理積(AND)を(4)で得た1.60VのVIDコード01001と比較するとピッタリ合致する。
つまり、VIDコード01011を持つCPUのVID1ピンを強制的に「0」に操作した結果がそのままマザーボードの電源回路に伝わって1.60Vを出力したものと考えると自然なのだ。
以上の状況から、どうやらマザーボードのコア電圧電源回路は、このCeleron-1.4GHzのVIDコードを正確に認識しているものと確信できた。その証明として(3)で施した改造部分を元に戻した状態では、写真3に示した通りCeleron-1.4GHz本来の規定コア電圧1.50Vの近似値を示したのである。さらに、このCeleron-1.4GHzを非改造の状態に戻したPL-iP3/T(Slot1→Socket370変換ゲタ)に装着してPL-iP3/Tの電源回路が出力するコア電圧を測定したところ、思った通りテスターは1.5Vを示した。
PC Health Statusでコア電圧をチェックしてみると実測値1.52Vを示した |
このように、これまでTualatinコア版CPUのコア電圧が規定通りに出力されなかった現象について思い浮かべてみると、どうしてもCPUのバラツキによって引き起こされていた可能性を強く感じてしまう。しかし、考え方によっては、もともと動作保証された環境でTualatinコア版CPUを使用した訳ではない。したがって今回のテストでCeleron-1.4GHzの規定コア電圧を得られた現象は、とりあえずCPUメーカーからのプレゼントだと思っておこう。さらにこちらのレポートから、もう1社の姿勢がうかがえる。ともあれ「Tualatinコア版CPUのコア電圧が規定通りに出力されない現象」については、改善策が用意され収束方向にあると言っても良さそうだ。
コア電圧電源回路のMOS-FETにヒートシンクを追加してオーバーヒートに対処した |
それでは、規定通りのコア電圧を得られたCeleron-1.4GHzのオーバークロック耐性を調べてみよう。調査方法は従来通り、特定のコア電圧をセットしておきベンチマークテスト代わりにSuperπを走らせる。無難に104万桁の計算を終了できたなら順次FSB設定クロックを高くしていく。もしも、起動困難やSuperπがエラーを告げたなら、計算が終了できた直近の動作クロックをその時のコア電圧値における動作限界とする。そしてコア電圧を0.05V高くセットし再度Superπで円周率を計算をさせ、結果的に規定コア電圧+0.25Vまで繰り返した。言うまでもなく、このテストではメモリのアクセスタイミングを最も遅くして実行した。なお、このテスト環境(マザーボードEP-3SPA3の機能)で操作可能な最高コア電圧は、規定コア電圧+0.35Vである。ところが規定コア電圧より0.25V高い1.75Vのテスト中にどことなく若干ではあるが異臭を感じた。その発生源を調べてみると、どうやらマザーボード上のコア電圧電源回路付近からの異臭と断定できた。具体的には、電源回路の入力側コンデンサと終段出力MOS-FETが触れないほど高温になっている。考えてみれば、1.75Vのコア電圧で1.4GHzオーバーの動作要求は、CPUのデータシートに記載されている22.6Aの定格値を確実に超える電流を供給しなければならない。ところがEP-3SPA3は、FC-PGA PentiumIII-1GHzまでのマザーボードなので供給電流値は20.2A付近がサポート限界と言うことになる。つまり、電源回路がオーバーヒートしても当然な成り行きだ。その後のテストでは、発熱するMOS-FETに小さなヒートシンクをはり付けてファンで電源回路全体を冷却しながら続行した。ただし、電源回路の負担を考慮して1.75V以上のコア電圧操作におけるオーバークロックテストは割愛した。そして最終的にグラフに示した通りのオーバークロック耐性結果を得たが、コア電圧1.65V以上で動作クロックが伸び悩んだ。やはり、電源回路のキャパ不足が関係しているのかも知れない。それとスピード重視で設定したパフォーマンステストで全てのベンチマークが最後まで動作する条件とするならCPUの動作クロックを1.7GHzより高くできなかった(ベンチマーク結果は文末のグラフを参照のこと)。
【表4】Tualatinコア版Celeron-1.4GHzのコア電圧対動作クロック図