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【LinuxWorld Expo/Tokyo 2002レポート】(その2) Vine LinuxとDebian GNU/Linuxの開発動向

2002年05月30日 20時35分更新

文● 編集部

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日本Linux協会は、「LinuxWorld Expo/Tokyo 2002」で「日本Linux協会特別セミナー」を実施した。

セミナーでは、Project Vine代表である鈴木大輔氏とDebian JP Project会長の鵜飼文敏氏が、それぞれVine LinuxとDebian GNU Linuxの開発動向を紹介した。

Vine Linux Updates

最初に講演した鈴木氏は、先月発表された『Vine Linux 2.5』についての説明と、次期バージョンの計画を紹介した。

Project Vine代表 鈴木大輔氏Project Vine代表 鈴木大輔氏

Vine Linuxは、主に個人や学校、中小企業などのワークステーション用途を想定して開発されているディストリビューション。そのため、「すぐに使える、使いやすい、コンパクト」なシステムをコンセプトに開発されている。ベースとしているのはRed Hat Linuxだが、独自のカスタマイズが施されているため互換性はそれほど高くない。『Vine Linux 2.5』は、カーネル2.4.18、GNOME 1.4などを採用しており、鈴木氏によれば「カーネルはVine Linuxにしては先進的すぎるくらい」だという。今回新しいカーネルを採用したのは、ハードウェアの進歩が著しく、古いカーネルではサポートしきれないと判断したためだ。また、統合デスクトップ環境として採用したGNOMEや、WebブラウザのMozillaも、「本来はVine Linuxらしくはない」としながらも、ほかのディストリビューションと比べると軽快に動作するとのことだ。

サーバ系のパッケージについては、基本的にワークステーション用途を想定しているため、必要最小限のものだけを取り込んでいるという。また、ネットニュースなど一般にはあまり使われていないと思われるパッケージは、今回のバージョンでは外されている。また、サーバパッケージを新しくしたため、管理ツールもこれまでのLinuxconfからWebminへと移行している。

開発プロジェクトとしては、セキュリティアップデートなどが遅れる傾向にあったのを解消するため、開発チームとは別にセキュリティチームを設け、30~40人程度のメンバーが作業に当たるようになったという。また、これまでVine Seed、Vine Plusなどに分けていたパッケージにもメンテナンスされていないものが含まれていたが、今後はメンテナンスの程度で新たなレベルわけを行なうことを検討しているという。また、メンテナンスされていないパッケージを減らすため、「半メンテナ制度」を設け、できる限りパッケージをメンテナンスするようなシステムにするそうだ。

次期バージョン『Vine Linux 3.0』については、『Vine Linux 2.5』でひととおりのリフレッシュが完了しているので、今度は目に見えるところでVineらしさを出していくことになるそうだ。アップデートについては、apt-get dist-upgradeでアップデートできるようにしたいと語った。

debianプロジェクトUpdates

鵜飼氏は、次期バージョン『Debian GNU/Linux 3.0(Woody)』の現状やリリース予定などについて語った。

Debian JP Project会長 鵜飼文敏氏Debian JP Project会長 鵜飼文敏氏

Debian GNU/Linuxは、『Debian Free Software Guideline』に基づき、フリーなソフトウェアのみを収録したディストリビューションだ。現在の安定版である『Debian GNU/Linx 2.2』系列は、2000年8月にリリースされて以降細かいバージョンアップを重ね、現在は『Debian GNU/Linux 2.2r6』が公開されている。鵜飼氏は、開発者がすべてボランティアなため、フリーなライセンスでないと開発を継続することが困難であると説明する。

次期バージョンであるWoodyのおもな変更点は、gcc 2.95とgcc 3.0系を両方パッケージに入れていること、インストーラを変更したこと、システム管理ツール『debconf』を採用したこと、『apt』のバージョンアップなど多岐にわたる。対応アーキテクチャも、IA-64やS/390などに対応するほか、SuperHなどへのポーティングも現在行なわれているという。

リリーススケジュールは今のところ未定だ。Woodyのパッケージは5月5日にフリーズしており、正式なリリースは海外のイベントなどで発表されるのではないかとのことだ。

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