Business Software Alliance(BSA)と(社)コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は20日、都内で“BSA/ACCSセミナーin東京~ネットワーク時代のコンピュータソフトウェア著作権”と題したセミナーを開催した。このセミナーは、今回で第4回目。講師はACCS理事・事務局長の久保田裕氏と、(株)東芝の菊地修氏の2人。
冒頭、BSA日本担当事務局長を務める石井利雄氏が、「今後も各社の管理方法を紹介させていただきたいと思っております。ソフトウェア著作権について、一緒に考えていきましょう」と、挨拶した。
日本におけるコンピュータソフトウェアと著作権
前半の講演は久保田氏により、“日本におけるコンピュータソフトウェアと著作権”と題して行なわれた。久保田裕氏 |
今回のセミナーの参加者は、その多くが企業の法務担当者。冒頭で同氏が参加者に著作権法の浸透度を尋ねたところ、著作権法は知っているが、各条文の具体的内容を知らないという参加者がほとんど。これに対して同氏は、ソフトウェアの著作権を学ぶにあたって、“著作権法”は内容まで押さえていて欲しいと訴えた。
バグ修正は“同一性保持権”の侵害か
著作者の意に反する作品の改変は、“同一性保持権”の侵害にあたる。コンピューターのプログラムも著作物である以上、この“同一性保持権”は発生する。しかし、バグ修正に関してはやむを得ないと判断される場合が多い。ただし、パッケージソフトで、誤動作を防ぐため改変を禁止しているものもあるので、その場合は注意が必要である。RAMにデータを記憶させる=複製行為
著作権法第30条で複製が認められている“私的使用”とは、家庭内における親子・兄弟レベルの話であり、企業内での使用はこれに準じない。現在、企業内で使用されているソフトウェアは、サーバーから各クライアント端末にデータを落とすケースが多い。この場合、利用権が大きな問題になってくる。RAMにデータを記憶させることは、複製行為に該当することもある。サーバーにダウンロードする時点や、ネットワークを通じてサーバーから各端末にダウンロードする時点など、その時々で複製行為が発生する。しかし、インストールする時点でいちいち許諾を取るのは、手間がかかり現実的ではない。
著作者との契約時に、企業全体における使用の許諾か、特定のサーバーとその端末での使用許諾など、契約の内容を詰める必要がある。さらに専用のツールなどを使ってライセンス管理を徹底しなければならない。
最後に久保田氏は、最近のソフトウェア著作権に関する問題を扱った新聞記事を、OHPを利用して紹介。さらに、記事を講演で使用するにあたって各新聞社とかわした使用許諾契約書を披露した。
東芝のコンピュータ・ソフトウェア管理
後半の講演は菊地氏により、“東芝のコンピュータ・ソフトウェア管理について”と題して行なわれた。菊地修氏 |
東芝は、ソフトウェアの大口ユーザーであるとともに、自社製のソフトウェアを販売する会社でもある。そのため、同社の知的財産権の確立と、他社の知的財産権を尊重するべく、ソフトウェアの管理体制がしかれた。
ソフトを導入する際のポイントは、管理・責任体制を明確にすること。法律や契約の遵守、経営効率のアップを念頭に、契約交渉・決済・契約の遵守状況・契約の終了などを記録し、逐次監査する。 購入したソフトは、購入単位ごとで契約管理シートを作成し、搭載機器単位についてはインストール管理シートを作成する。管理者は部長クラスが担当。事前にソフトウェア管理に関する教育も随時行なわれる。
東芝のソフトウェア管理システムは業界でも有数のものだが、今後も状況に応じて発展していくようだ。
今回のセミナーには、企業の法務担当者など150名以上が参加した。質疑応答では東芝のソフトウェア管理体制について、部門単位での管理が経営効率に及ぼす影響、管理者の教育や部署移動への対応などに関して質問がされた。次回は九州で開催される予定だ。
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