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キヤノン開発者インタビュー

EOS 5D Mark II:画作りと動画搭載について聞く

2008年12月24日 14時04分更新

文● 吉田陽一・西川仁朗/トレンド編集部、撮影●パシャ

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高画素化しつつもEOS 5Dを上回る能力

それでは具体的に本機の各機能についてお伺いします。

──今回、EOS 5D Mark IIは撮像素子の画素数が2110万画素となっています。一般に画素数が多いほど高感度撮影時にノイズが増えると言われますが……。

竹内 条件にもよりますが、画素数が高くなると一画素あたりの集光能力が下がります。つまり1画素あたりの受光面積が減少して不利なのですが、CMOSセンサーの感度アップしています。また、CMOSセンサーのオンチップ・ノイズリダクションと、DIGIC4のノイズリダクションの合わせ技で耐ノイズ特性を向上させています。画素数を増大させつつも画質維持と感度アップを実現する、という欲張りなことをやっています。

──今回DIGICIIIからDIGIC4にバージョンアップしていますが、これによって改良・変更された点は?

竹内 前機種EOS 5Dが好評で、プレッシャーを感じておりました。

 画素数が向上する中でもダイナミックレンジは従来機種の性能を維持する、S/N性能も落としていけない。DIGIC4ではノイズ処理能力が飛躍的に向上しています。CMOSセンサーの感度アップなども見越し、画素数が倍近くなっても、画質を落さず二段分感度を拡張しています。

──EOS 5Dに比べ画作りや色作りに関して工夫されたことは?

竹内 (色作りは)あまり変えていません。そもそも初代EOS 5Dの時にピクチャースタイルを初めて導入いたしました。使う機種が変わっても安心して使えるように考えたのです。つまりいままでクラスごとに違っていた色作り、例えばEOS 5D以前のEOS 1D系は彩度を控えめにしていました。これは後処理がしやすいということがコンセプトだったのですが、中級機EOS 10Dはニュートラル、入門機EOS Kissは彩度高めとバラバラだったわけです。それを統一したのがピクチャースタイルでした。ピクチャースタイルを使えば、それらの画作りを切り替えることで、どの機種で撮ってもクラスに関係なく意図する色味を出せる、というのが目的だったわけです。

 余談ですがピクチャースタイルの「スタンダード」の色作りはkiss系がベースになっています。後処理をせず、いわゆる「撮って出し」する方を狙っています。後処理する方には、1D系の色作りをベースにした「ニュートラル」をご提供しています。「忠実」は別のバリエーションとして商品撮影などをされる方向けです。色温度約5200Kの光源での安定した色の再現が可能です。

──苦労された点はありますか。

カメラ開発センター所属でファーム担当の佐々木 太氏

カメラ開発センター所属でファーム担当の佐々木 太氏

佐々木 DIGIC4で性能が上がった分、ソフトの負担が増えたことですね。今までもレンズの能力を生かしきる、ということでいろいろやっているのですが、ノイズ処理から光量補正、色補正、顔検知まで全部同時に動かさなければならない。そのため機能やデバイスが増えたため負担も増えています。さらに電池の消耗を押さえなければならないわけですし。

──バッテリーのお話がでましたが、今回EOS 5D Mark IIではバッテリーが変わっていますね……。

中野 DIGIC4だけではありませんが、そのほかの性能も向上し、電力の使用量が増えました。また、今回、より良い電池ができた、ということで変更いたしました。

──今後はこのEOS 5D Mark IIに搭載された電池が標準になっていくのでしょうか。フォトストレージなどの周辺機器と電池が統一されていた方がユーザーの利便性が高いと思います。

中野 現状でははっきり言えませんが、状況については理解しています。お客さまからはなぜ変えたのか、というご意見をいただいています。機能アップを実現する必要もあり、今回はこのEOS 5D Mark II登場のタイミングで変更しました。

カメラ開発センター所属で電気ハード担当の田中 友章氏

カメラ開発センター所属で電気ハード担当の田中 友章氏

田中 バッテリーを新しくしたことで、従来は残量表示がセグメントのみの表示だったのが、1%単位の数字で表示されるようになりました。6個までバッテリを登録できるようになっていますので、使用履歴も把握できます。

──電源以外の電装系で工夫・改良された点はいかがでしょうか。

田中 セールスポイントはTFT液晶ディスプレーが2.5型から3型になり、ドット数も23万ドットから92万ドットになりました。パネル表面に反射防止コーティングをしてクリアで見やすいようにしてあります。さらに外光を検知するセンサーが付いていまして、外光によって明るさを自動で変化させる仕組みも入れました。

中野 上面の液晶表示も視認性を上げるために大型化しました。

──外装やデザインで工夫された点は?

中野 動画の操作性ですね。あくまでのスチルカメラとしての操作性が基本であり、そのうえで必要に応じて動画撮影もできるようにしようという方針のもと、動画撮影のための操作部材は設けないデザインにしました。また、贅肉を削るというシャープなデザインが特徴でもあります。5Dとほぼ同等の大きさにもかかわらず、視野率や液晶ディスプレーは大きくしたわけです。機能に比べてコンパクトにまとめられた、と考えています。

(次ページへ続く)

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