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単純なロードバランサは生き残れない

F5にとって仮想化は敵か?

2008年12月02日 04時00分更新

文● 大谷イビサ/ネットワークマガジン編集部

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複数台のサーバに対して、リクエストを振り分けるロードバランサのベンダーとして知られるF5ネットワークス(以下、F5)。ここでは2回に分けて米F5ネットワークス マーケティング上級副社長 ダン・マット氏、同CTOカール D. トリーブス氏の話を元に、仮想化とF5の関係、そして新たに取り組んでいるストレージの仮想化について見ていきたい。

米F5ネットワークス マーケティング上級副社長 ダン・マット氏(左)、同CTOカール D. トリーブズ氏(右)

米F5ネットワークス マーケティング上級副社長 ダン・マット氏(左)、同CTOカール D. トリーブズ氏(右)

サーバ仮想化のはしりは「ロードバランサ」

 1990年代の後半、WAN回線の細さやサーバ能力の貧弱さを補うために生まれたロードバランサ(負荷分散装置)。複数の物理サーバを論理的に1つに束ねるロードバランサは、今流行の仮想化技術を大幅に先取ったものといえるだろう。複数のサーバがユーザーから論理的に1つに見えるわけだから、まごうことなく「サーバ仮想化」である。

 しかし、現在のサーバの仮想化は、ブレードサーバのような集積密度の高いサーバに複数の仮想サーバを載せる技術がメインだ。つまり、複数の物理サーバは仮想サーバとして統合されるため、物理サーバ自体の数は減っていくことになる。当然、物理サーバへのリクエストを振り分けるロードバランサは、今後需要が減ってくるのではないか?という疑問につながってくる。

 だが、この「ロードバランサの出番は今後減ってくるのでは?」という疑問に対して、米F5ネットワークスのCTOであるカール D. トリーブズ氏は「まったく逆である」と明確に否定した。

 「確かに複数の物理サーバにリクエストを順繰りに振り分けるだけの単純なロードバランサでは、仮想化に対応できないだろう。しかし、サーバやストレージなどのインフラ、さらにはユーザー自体が仮想化されることにより、ユーザーとアプリケーションとの結びつきはますます複雑になる。これらを適切に結びつけるためには、最適なアプリケーショントラフィックの管理を行なう我々の製品が、ますます重要になるはずだ」とトリーブズ氏は述べている。

仮想化対応を強化するF5のBIG-IP

 確かにF5の「BIG-IP」はもはや単純なロードバランサではない。TMOS(Traffic Management Operation System)というソフトウェアをベースに、キャッシングやWAN高速化、SSLのアクセラレーション、Web Application Firewallなど幅広い技術を実装した総合的なアプリケーショントラフィック管理装置に成長している。昨年は、大企業やデータセンターなどの需要を見越したシャーシ型のアプリケーショントラフィック管理装置「VIPRION」を市場に投入。最大スループット36Gbps、SSL 20万TPSを誇る高価なハイエンドな製品だが、当初想定した金融・データセンターというユーザーではない、大企業の引き合いを多く受けているという。

シャーシ型のアプリケーショントラフィック管理装置「VIPRION」

シャーシ型のアプリケーショントラフィック管理装置「VIPRION」

 こうした実力を元に、F5では仮想化環境でのパフォーマンス強化やリソース管理の簡素化を進めていく。具体的には「仮想化を導入することで、サーバ管理がかえって複雑になることもある。そのため、たとえばマイクロソフトやヴイエムウェアと協業し、仮想化されたデスクトップ「VDI(Virtual Desktop Infrastructure)」の環境で利用できるテンプレートを用意する。また、仮想環境下でのSSL高速化やコネクションの最適化なども実現する」(米F5ネットワークス マーケティング上級副社長ダン・マット氏)などを進めていくという。

 実際、11月17日にはBIG-IPとVMware Infrastructure 3の環境における動作検証完了を発表している。両者の連携により、CPU負荷が高まった際に自動的にリクエストを振り分ける仮想サーバを変更したり、クライアントへのデスクトップ配信を最適化することが可能になったという。

 次回は同社が最近力を入れているストレージ仮想化製品「ARX」について見ていこう。

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