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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第31回

ダビング10を廃止し、消費者中心の放送行政へ

2008年08月26日 09時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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B-CASカードなしのフリーオ登場


 デジタル放送のコピーワンスを破るアダプター、「friio」(フリーオ)の新機種が話題になっている。フリーオにはB-CASカードが付属しておらず、今まではほかのデジタル放送対応機器から流用したB-CASカードを挿入しないと使えなかったのだが、そのカードが不要になったというのだ。

フリーオ社は「受信したデジタル放送の暗号化(MULTI2暗号)を解くと同時に、 MPEG2TSフォーマットのファイルとして、そのままHDDに保存されます」と解説している

B-CASカード

B-CASカード

 フリーオ社のウェブサイトにある最新BETAドライバーとソフトを使うと新機種と同等になる。インターネットでは、ここで制御方式を「ネットワーク」とすると、B-CASカードなしでも普通の(スクランブルのかかっていない)デジタル放送の番組が見られたという複数の報告があった。ただしB-CASの鍵は頻繁に変更されるので、信号が切れて番組が映らなくなる場合もあるようだ。

 その仕組みは推測するしかないが、何らかの方法を使い、B-CASカードに入っている暗号を解く鍵をインターネット経由で送っているものと考えられる(技術的な詳細については私のブログ記事を参照)。これはタイムラグの問題を別にすれば容易で、暗号そのものをクラックする高度な技術は必要ない。以前からLAN内で暗号鍵を共有するユーザーはいたようだが、インターネットで公然とサービスが始まった影響は大きい。



暗号鍵の配布は違法か


 まず問題は、このサービスが違法かどうかである。著作権法(第30条1項2号)では「技術的保護手段(コピープロテクト)に用いられている信号の除去又は改変」を禁じているが、フリーオはコピー制御信号を「除去又は改変」するのではなく、無視してHDDに記録するだけなので、著作権法には違反しない。

 しかし不正競争防止法(第2条10項)では「技術的制限手段の効果を妨げる機能のみを有する装置」の輸入/販売を禁じている。フリーオがコピー制限手段の効果を妨げていることは確かだから、小売店がこれを販売すると損害賠償請求の対象になる可能性はあるが、フリーオを個人が輸入する行為が「不正競争」にあたるかどうかは不明だ。

 それより違法の疑いが強いのは、B-CASのほうだ。以前のコラムでも書いたように、B-CAS社が「審査」によって外資系メーカーの製品などを締め出し、事実上の出荷停止処分も行なったとみられる。いち民間企業にすぎないB-CAS社が法的根拠もなく出荷停止を行なうことは、独占禁止法(第3条)の禁じる「不当な取引制限」にあたるのではないか。

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