デジタル放送推進協会(Dpa)は19日、デジタル放送の録画に関する新しい運用ルールである「ダビング10」を、6月2日の午前4時から適用することを発表した。
ダビング10は、HDD/DVDレコーダーなどで録画した地上デジタル放送のテレビ番組を、DVDやメモリーカードなどに「コピー9回+ムーブ※1回」できるというルールだ。
現行のムーブ1回のみという「コピーワンス」に比べればずいぶんと規制が緩和された印象を受けるが、一部の録画ファンからは「ユーザーの利益を損ねる」という声が上がっている。一体、ダビング10の何が問題なのか、われわれ消費者にはどんな影響があるのか、放送とAV機器に詳しい小寺信良氏に話を聞いた。
※ムーブ 録画したコンテンツをコピー元からコピー先に移動するという処理。コピー元にはコンテンツが残らない。
HD DVDに焼いた番組はBlu-rayに移せない
── ダビング10は、何が問題視されているのでしょうか?
小寺 まず、メディア移行の問題が大きいです。
タイムリーな例で言えば、ダビング10の運用開始がアナウンスされたのと同じ19日に、東芝がHD DVD事業の終息を発表しましたよね(関連記事)。HD DVDの終わりによって、ユーザーがHD DVD-Rに録画したテレビ番組をどうやって別のメディアに移せばいいのかという問題がまさに現実のものになったわけです。
ダビング10が始まっても、要するに「コピーワンスが10回」できるだけで、DVDや次世代DVDに書き出した番組は、別のメディアに移し替えられない。東芝のHD DVD/HDDレコーダーがたとえダビング10に対応できて、地デジの番組を10枚のHD DVDにコピーしたとしても、そのコンテンツはBlu-rayのメディアに移せないんです。
── 録画ファンにとっては、重大な問題ですね。
小寺 しかも世界中を見てみても、無料放送にコピー制限をかけているのは日本だけなんです。極端な話、仮に日本以外の国でHD DVDレコーダが売られていたとしても、日本以外の国の人はそう困らない。だって、Blu-rayにコピーできますから。