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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第52回

談合にもまれた「3.9世代携帯」の行方

2009年01月28日 11時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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不可解な1.5GHz帯の周波数割り当て

「CEATEC JAPAN 2008」のNTTドコモのブースで披露されたLTEの伝送実験用実験車両。LTEは4社の中でもNTTドコモが先行していると言われる

 総務省が、「3.9世代移動通信システム」についての周波数割り当ての「指針案」を発表した。3.9世代とは、第3世代の発展した第4世代の一歩手前の技術とされている。総務省は1.5GHz帯と1.7GHz帯を書類審査によって4社に割り当てる計画で、指針には「新規参入業者・既存事業者を問わず、最大4者に割り当てる」(原文ママ)と書かれているが、業界では「既存4社に割り当てることは決まっている」という声が多い。

 1.5GHz帯は35MHzしかなく、「常識的には2~3社」というのが総務省の方針だった。ところがイー・モバイルが、割り当てられる予定だった1.7GHz帯を3.9世代に変更する方針を出したため、合計45MHzを4社(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、イー・モバイル)に割り当てることになったものだ。採用される技術も、LTEで決まりというのが業界の見方で、総務省は意見募集が終われば、春にも免許を受け付ける予定だ。

 LTEは「100Mbps以上出る」というのが売り物だが、その性能は帯域幅に依存する。100Mbps以上というのは帯域を20MHz取った場合の理論的な最高速度で、帯域が10MHzになると、その速度は半分以下に落ちる(モトローラ社の実験結果)。だから総務省も、35MHzでは2~3社という方針だったのだ。それがここに来て4社に増え、各社に10MHzという割り当てになったのは、競争を避けるための談合と疑われてもしょうがない(1495~1510MHzは15MHzあるが、その一部は2014年まで使えないので、実質的には5MHz程度しかない)。

 キャリアは競争がなくなってホッとしただろうが、損をするのは消費者である。20MHzあれば、無線ブロードバンドによって光ファイバー(FTTH)に匹敵する通信速度が可能になる。しかし10MHzずつ4社では、効率の悪いインフラに重複して設備投資がなされ、ユーザーは高くて遅いサービスを使わされることになるだろう。

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