新技術の動的グラフィックススイッチングとは?
最後に、TシリーズとWシリーズで新たに搭載された「動的グラフィックススイッチング」技術について説明しよう。
これはグラフィックス処理を内蔵の高性能GPUからチップセット内蔵グラフィックスに切り替えることで、バッテリー持続時間を延長するというもの。
さらに動的グラフィックススイッチングは、OSの再起動が不要なのが最大の特徴だ。Windowsのタスクバーから操作でき、ワンクリックでGPUとチップセット内蔵グラフィックスとを切り替えられる。切り替えにかかる時間はわずか2~3秒で、画像の乱れも色味の差異も無く、ユーザーからは何が切り替わったのかほとんど分からない。だが、切り替えによりグラフィックのパフォーマンスや、バッテリー持続時間に違いが現れる。
現在最終調整中で暫定の数値となるが、専用モード(GPU)と内蔵モード(チップセット)とでは、3D性能に約3~5倍の差が、バッテリー持続時間に約8~18%ほどの差が出るという。例えばT400ではGPU使用時で8時間のバッテリー駆動時間が、チップセット内蔵グラフィックスに切り替えることで9.4時間になるそうだ(9セルバッテリー+ベイバッテリー搭載時)。今後の調整によってはこの値が多少変化する可能性があるが、効果を十分期待していい数値だ。
GPUへの切り替えはやや遅い?
この技術はすでにATIから発表されている「ATI XGPテクノロジ」やエヌビディアの「Hybrid Power」と同等のものだという。だが今回、レノボはATIとインテルと共同開発を行ない、ATIのビデオカードとインテルのチップセットという組み合わせでこの技術を実現した。主にドライバーを作成したのはATIだそうだが、ATIが現在はAMDの一部門であることを考えると、これはちょっと面白い組み合わせである。
この技術がどのように実現されているかをレノボジャパンに尋ねたところ、実はGPUのドライバと、チップセット内蔵グラフィックスのドライバーの両方が同時に起動しているところを、Windows側からは1つのドライバーのみが起動しているように認識させることで、再起動無しの切り替えを実現しているという。
ただし、GPUからチップセット内蔵グラフィックスへの切り替えの場合、両方のドライバーが起動したままなので切り替え時間は2秒ほどで済むが、内蔵グラフィックスからGPUへの切り替えの場合、GPUのドライバーを起動して認識させる必要があるため、切り替えには少しだけ余計に時間がかかるという。実際の用途では頻繁な切り替えは発生しないだろうから、数秒の差は問題にならないだろう。
XPにダウングレードすると使えません
この機能が使えるのはWindows Vistaのみで、XPに対応する予定はないとのこと。XPでは技術的に困難なのがその理由だという。ただし、動的ではないグラフィックスの切り替えならば、XPでもBIOSから行なうことができる。
XPにダウングレードして使う場合は注意が必要だ。