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ゲイツ氏最後のCES基調講演

【CES 2008 Vol.4】“笑いと未来”を見せたビル・ゲイツ氏基調講演レポート

2008年01月07日 21時07分更新

文● 編集部 小西利明

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 今年も「2008 International CES」(以下CES 2008)は、前夜祭的な恒例イベントとなった米マイクロソフト社会長のビル・ゲイツ(Bill Gates)氏による基調講演で幕を開けた。ゲイツ氏は2008年7月に同社の経営から退くことを表明しており、8年連続、通算で10回目となるゲイツ氏の基調講演も今回が最後となる。


 「Next Digital Decade」(次のデジタルの10年)と題して行なわれた最後の講演では、ゲイツ氏らにより次世代のデジタル機器によるユーザー体験のデモが多数披露され、デジタル技術の近い未来の姿を垣間見せた。

マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏

最後の講演を行なう、マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏


講演の始まりは恒例のビル・ゲイツ爆笑ビデオから

 ステージに登壇したゲイツ氏は、自身が初めてCESの基調講演を行なった1994年を振り返り、その後インターネットの急激な普及やWindows 95の登場などを経て始まった「最初のデジタルの10年」は、「素晴らしい成功であった」と述べた。パソコンはもとより、携帯電話やスマートフォン、デジタルミュージック、テレビのインターネット化など、多くの技術やソリューションが具現化されたからだ。

 そしてゲイツ氏は、デジタル技術は「まだ始まりにすぎない。まだまだ発展する」として、その将来像について語ろうとしたが、その前に披露されたのが、CES基調講演の名物である、ゲイツ氏自身や同社幹部が出演して制作される爆笑ビデオであった。

 最後の講演を飾る爆笑ビデオは、「ビル・ゲイツ 最後の4日間」とでも言う内容で、マイクロソフトを去る日までの数日間、ゲイツ氏が次の仕事(あるいは次の楽しみ?)を求めて滑稽な騒動を巻き起こす様を描いたものだ。

ゲイツ氏爆笑ビデオから

ゲイツ氏の功績を称えるマイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏だが……

ゲイツ氏爆笑ビデオから

当のゲイツ氏は次の仕事?を求めて大暴走を繰り広げる

ゲイツ氏爆笑ビデオから

ゲイツ氏の電話に悩まされるのは、写真のボノのような超一流の人物ばかり

基調講演で披露された爆笑ビデオから

 同社幹部がゲイツ氏の業績を称える一方で、当のゲイツ氏はジムワークで体を鍛えたり(ひ弱なナードらしく軟弱というオチがつく)、ヘタなラップを歌うわギタリストや俳優(なんとX-MENのウルヴァリンやMatrixのネオに扮する!)に挑戦するわと大暴れ。果ては現在進行中のアメリカ大統領選挙の候補者らに電話をかけて、「ビルだけど、副大統領候補はいらない?」といった、ある意味では笑えない冗談を見せるなど、大暴走を演じてみせる。

 しかも、劇中でゲイツ氏が電話をかけて「どうよ?」とたずねる相手は、ロックバンド「U2」のボノ氏や、映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏、さらには米民主党の大統領候補であるヒラリー・クリントン氏やバラク・オバマ氏など、その道の超一流や話題の人物ばかりなものだから、講演会場は爆笑の渦に包まれた。

 世界一の金持ちにして世界最大のソフトウェア企業の会長が、自らをここまでネタにして聴衆を楽しませるというのは、世界のどこにも類を見ないだろう。ちなみに爆笑ビデオを含む基調講演の全体は、次ページ関連サイト欄にある、同社のVirtual Pressroomにて動画で公開されている。


ハードとソフトの進化がもたらす新しい体験

近年実現された、さまざまな形状・デザインを備えたパソコンたち

近年実現された、さまざまな形状・デザインを備えたパソコンの一部。次の10年はさらに進化したユーザーインターフェースを備えていく

 ショートビデオで笑いをとったあと、ゲイツ氏は既存の、あるいは近い将来のデジタル機器やサービスがもたらす、新しいユーザー体験について語った。その要点は、映像や機能といった品質面はさらに向上する一方で、ユーザーはそれらをより簡単に使えるようになるという点にある。特にゲイツ氏は、過去の10年のユーザーインターフェースであったマウスとキーボードに代わる「ナチュラルなユーザーインターフェース」として、タッチスクリーン音声認識画像認識を例に挙げて、「よりシンプルな形で情報を扱えるようになる」と述べた。

タッチスクリーン搭載のテーブルパソコン「Surface」

次の10年を実現する「ナチュラルなユーザーインターフェース」の例。タッチスクリーン搭載のテーブルパソコン「Surface」

タッチスクリーン操作と位置情報機能を持ち携帯機器

名称は不明だが、タッチスクリーン操作と位置情報機能を持ち携帯機器

 ゲイツ氏はいくつかのデモを通じて、それら次の10年のインターフェースによるユーザー体験の例を示して見せた。まず披露されたのが、2007年5月に発表された、タッチスクリーン搭載のテーブル型パソコン「Microsoft Surface」のデモだ。ゲイツ氏は自分用のスノーボードのデザインを決めるというシチュエーションでデモを披露。

 スクリーン上に表示されるスノーボードやイラストを、手で触れて選択したり位置やサイズを決めるなど、直感的かつ簡単な操作で商品のデザインを決定していく様子が示された。最後にはSurfaceの上に携帯電話機を置いて、Surfaceと携帯電話機を無線で接続。完成したデザインを携帯電話機で送信するといったことも可能であるという。

ゲイツ氏によるSurfaceのデモ

ゲイツ氏自ら、Surfaceのデモを披露している様子

ゲイツ氏によるSurfaceのデモ

真上から見た状態。スクリーン上のイラストを手で選択して、貼りたい位置まで持っていく

 また、マイクロソフトが2007年に買収した米Tellme Networks社の音声認識技術「Tellme」を利用したデモも披露された。音声認識技術を組み込んだ携帯電話機を使い、音声での命令だけでラスベガスの劇場を検索、検索結果から映画のチケットを購入したり、購入情報をほかのユーザーに送信する操作までを音声でやって見せた。

Tellmeの音声認識技術のデモ

音声で「Las Vegas」と入力しているところ

Tellmeの音声認識技術のデモ

検索された結果の一覧。ここからチケットの注文まで音声で行なえる

ゲイツ氏が持っているのは、画像認識技術を備えた携帯機器のデモ機

ゲイツ氏が持っているのは、画像認識技術を備えた携帯機器のデモ機

 音声認識技術に続いて披露されたのが、画像認識技術を使った新しいサービスのデモだ。ゲイツ氏が手に持った携帯機器を、登壇していた同社エンターテイメント&デバイス部門担当プレジデントのロビー・バック(Robert J.Bach)氏に向けると、内蔵カメラが画面に映った人物をバック氏と認識。バック氏に関する情報(役職のほか、ゲイツ氏が“20ドル貸している”など)が表示されるといった寸法だ。

携帯機器のカメラをバック氏に向けると……

ゲイツ氏が手にした携帯機器のカメラをバック氏に向けると……

画像認識が行なわれてバック氏と判明

画像認識が行なわれてバック氏と判明。バック氏に関しての情報(Owes me $20)表示のほか、連絡も行なえるようだ

 また、基調講演が行なわれているホテル「The Venetian」(の写真)を認識させると、それが何であるか、現在位置とそこまでの距離、そこにいるゲイツ氏に関連する人物の情報(バルマーCEOがスロットで遊んでいる、など)が表示された。さらに、周囲の劇場の看板を認識させると、それが何の映画かを認識して、チケット購入まで行なえるといった場面も披露された。

実物の代わりにホテルの写真を認識させている

同じく画像認識を利用したデモ。実物の代わりにホテルの写真を認識させてると、ホテルの名前、ホテルに関連する情報が表示される

認識した情報を元に、さらにアクションを起こすことも

認識した情報を元に、さらにアクション(例えば映画のチケット注文)を起こすなど、簡単な操作を元に多彩な体験を得られる

 あくまでデモとはいえ、高度な画像処理技術にネットワークとデータベースを組み合わせれば、これを実用化することは十分可能であろう。新しい技術とユーザーインターフェースの組み合わせが実現する魅力的な未来の一端が垣間見えたデモであった。

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