「第20回東京国際映画祭」(TIFF2007)で賑わう六本木ヒルズのアカデミーヒルズ40を会場に10月25日と26日の2日間、コンテンツクリエイターとビジネスパートナーが出会うコンテンツの見本市「ジャパン・クリエイターズ・フェスティバル 東京コンテンツマーケット 2007」(TCM2007)が開催された。併せて、出展者のコンテンツから優秀作品を選出するコンペティション「TCMアワード」の発表も行なわれた。主催は独立行政法人 中小企業基盤整備機構関東支部、共催は経済産業省中小企業庁、関東経済産業局。
中小のクリエイターと事業者、資本者を結ぶ赤い糸
――TCM2007
TCM2007は、日本の誇るアニメ・映像産業の育成や向上を目指す官民挙げての一大イベント群「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」(コ・フェスタ)のオフィシャルイベントとして、アニメ/ゲーム/CG/映画/キャラクターといったさまざまなジャンルのクリエイターが出展する、オリジナルコンテンツの見本市として開催されている。
出展しているクリエイターは、映像コンテンツを自ら開発し、その権利を保有している中小企業や個人事業者などが、販路の開拓やキャラクターの商品化、作品企画への出資なといった、ビジネス展開の具体的なステップを見出せる場として出展。そこに放送メディアや映画配給会社、ソフトメーカー、出版社などの、コンテンツの放送や配給、配信、流通に関わる事業者、広告代理店や総合商社、金融機関、投資会社といったコンテンツ制作資金の提供者など、ビジネスパートナーが参加することでビジネスマッチングを実現させるのが狙いだ。
この見本市の特徴は、中小企業基盤整備機構が主催していることから、出展者はあくまでも中小企業や個人事業者に特化していることから、出展規模も小さく、派手な演出などはないが、大資本の手垢がついていない、原石の素晴らしさがより輝いて見える展示ばかりで、良質で新鮮なコンテンツを必要としている事業者にとっては、新しいキャラクターやコンテンツに出会えるまたとないチャンスといって差し支えないだろう。また、すでに一定の評価を受けているキャラクターを持つ企業であっても、中小企業であれば参加できるわけで、中には「やわらかアトム」を出展した(株)ファンワークスのようなところも出展している。
TCM2007に出展・応募したコンテンツから優秀作を選出
――TCMアワード
「TCMアワード」は、このTCM2007に出展者が応募したコンテンツの中から、市場性や発展性において優秀な作品を選出するコンペティションで、審査にはTCMコーディネーターとよばれる審査員があたり、「動画部門」、「静止画部門」の両部門賞、「審査員特別賞」、TCMサポーターズ参加企業による独自の視点からの「TCM2007サポーターズ賞」が選出された。結果は以下の通り。
【TCMアワード2007受賞作品】
- [動画部門賞]
- 「放課後MIDNIGHT」/(株)空気モーショングラフィックス
福岡を拠点に映像制作の分野で活動する(株)空気(12月からの新社名)が制作した、この奇妙で馬鹿らしくも愛らしい作品「放課後MIDNIGHT」が動画部門賞を獲得した。人体模型という、本来なら気味が悪く、ホラーの題材になるようなキャラクターの滑稽な動きにおもわずクスっと笑ってしまう、どこかほのぼのとさえしてしまう。当然、最初の取っ付きは悪いが、一目見てしまうと、そこから離れられない来場者ばかりで、思わず見入ってしまう不思議な魅力のある作品だ。技術的にも非常にレベルが高く、今後の活動に注目したい。
- [静止画部門賞]
- 該当作品なし
- [静止画部門奨励賞]
- 「七福神」/kiske3(キスケスリー)
アートディレクター、モリボスヒコ氏が描く七福神を、デザイナーのかのりんヌさん、ミワンコさんが動画として製作したのが今回の受賞作。イラストレーターとしてテレビ業界で15年活動してきたボスヒコ氏は、実にさまざまなキャラクターを描きだす、職人肌のクリエイターだ。
- [静止画部門奨励賞]
- 「動物かんきょう会議キャラクター紹介」/(株)ヌールエ
絵本をフックにインターネット上で展開する“動物たちによる本音と本音がぶつかりあう会議”が「動物かんきょう会議」だ。この会議のキャラクターが今回の静止画部門の対象となった。動物かんきょう会議は1997年に京都で開催された「地球温暖化会議」をきっかけにはじまた活動で、これまで制作された絵本は「Vol.01/森」、「Vol.02/ゴミ」、「Vol.03/クルマ」、「Vol.04/エネルギー」の4冊で、次回の「Vol.05/グルメ」を含め、全7冊が刊行予定だ。日本のほかに韓国、台湾でも出版されており、今後は英語圏への展開も進めたいとしている。
- [静止画部門奨励賞]
- 「エスケープ-5」/(株)エフ・ティー・ビー
立体・平面イラストレーター、造型アーティストの宮川アジュ氏による作品。今回は「エスケープ-5」が受賞対象作品となっているが、ブースでは宮川氏のもうひとつの作品である「戦え絶滅動物」に来場者の興味が集中していた。宮川氏自らが調べ、実に132種類もの絶滅動物をキャラクター化したもの。実物にかなり忠実にしつつ、十分キャラクターとして成り立つ作品に仕上がっている。ガチャガチャも好評だった。
- [審査員特別賞]
- 『SIM「KOWLOON」』/(有)ジェットグラフィクス・(株)ジェットマン
「月刊アスキー」11月号のSecond Life(セカンドライフ)特集で紹介されているSIM(サーバー)「KOWLOON」は、1997年に(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)がリリースしたプレイステーション用ゲームソフト「クーロンズ・ゲート」のサイバーパンクな世界を、当時のクリエイターが再結集して、セカンドライフ内に新たに作り上げたもの。新しいアミューズメント型SIMの今後の展開が楽しみだ。