上場してからも安心して使える――「弥生 08」シリーズは内部統制機能を強化
弥生は、10月31日、同本社で会見し、主力の業務パッケージソフトの新版「弥生 08」シリーズを発表した。会計、販売、給与などの12製品を12月7日に一斉発売する。
新シリーズ一斉投入で年商100億目指す
「2007年度の売上高は、93億7800万円。我々の目標としてはもう少し上だったので、反省しているところ」。弥生の代表取締役社長である飼沼 健氏は2007年度の業績をこう振り返る。売上は対前年度比で約7%増となったものの、ここ4年間、順調に伸ばしてきた市場シェアは本数、金額ともにわずかながらも落とす結果となった。
「理由はハッキリしている」と飼沼氏は言う。例年12月に発売している主力製品の新版のうち、一部の発売が春先にまでずれ込んだからだ。「その反省を踏まえ、今回はすべての製品を一斉発売することにした」(飼沼氏)。
12月7日に発売するのは、「弥生会計 08」「弥生販売 08」「弥生顧客 08」「弥生給与 08」などの「弥生 08」シリーズ。製品によってスタンドアロンの「スタンダード」版/「プロフェッショナル」版、クライアント/サーバ型の「ネットワーク」版がラインナップされる。
新版の強化ポイントは、弥生会計のネットワーク版を中心に、内部統制に効果的な機能を盛り込んだことだ。同社執行執行役員プロダクトマーケティング担当の竹之内 学氏は、「経営の考え方として、内部統制の構築が一般的になりつつある。企業としての仕組みづくりが中小の事業所でも広がってきている」とその背景を説明する。
内部統制機能のメインは、仕訳単位の承認機能。決算書やキャッシュフロー計算書などの決算関連の書類を、期間中の仕訳のすべてが承認済みでなければ作成できないようにした。加えて、ユーザーID/アクセス権限管理、作業ログ機能、仕訳データ変更履歴、入力期間制限などの機能も強化。「上場してからも使える拡張性を持ち、スケーラビリティがある製品になった」(竹之内氏)。
このほか、弥生会計の全ラインナップで、SBIテクノロジーの銀行口座管理ソフト「MoneyLook for 弥生」との連動を実現。受注伝票をもとに発注伝票を自動で一括作成する機能(弥生販売ネットワーク)、ジャストシステムの「ラベルマイティ」との連携機能(弥生顧客)などの新機能を搭載している。
価格は、弥生会計のスタンダード版が4万2000円、プロフェッショナル版が8万4000円から。ネットワーク版は37万8000円/2ユーザーから。
新版の出荷見込み数は、発売から1年間で13万本3000本。2008年度の売上目標は、同社にとって初となる100億円だという。
ライブドア傘下では上場難しい――弥生がグループを離れたワケ
今年9月末にライブドアグループを離れた弥生。新たな株主に躍り出たのは、投資ファンドのMBKパートナーズだ。会見に同席したMBKパートナーズ日本代表の静永賢介氏は、弥生について「高いブランド力、マーケットシェア、ステータスがある。一番の魅力は、最大の資産である顧客基盤。小規模事業所をこれだけ顧客として囲っている企業はほかにないのではないか」と評した。
弥生がライブドアグループから出た理由について、飼沼氏は、「当初は上場を考えていたものの、ライブドア事件後、同社の子会社である限りは上場は不可能だと判明した」と説明。「経営の自由度を高め、選択肢が増えたという意味でポジティブに考えている。ここ数年かけて地に足をつけて地力をつけたい」と述べ、当面はMBKパートナーズの下で事業基盤の安定を図る意向を示した。
また、静永氏も「少なくとも5~6年のスパンで、腰を据えて投資したいと考えている」との方針を説明。「将来の選択肢としては上場、(企業価値を高めた上での)他社への譲渡などが考えられるが、現時点では未定」としている。