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PS3用振動機能付きコントローラーを発表

【TGS2007 Vol.2】原点であるゲーム機に回帰――東京ゲームショウ2007基調講演

2007年09月20日 21時31分更新

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SCEI 代表取締役社長兼グループCEOの平井一夫氏 SCEI 代表取締役社長兼グループCEOの平井一夫氏

 千葉県幕張メッセにて開幕した「東京ゲームショウ2007」(以下TGS2007)の初日である20日、講演会場では基調講演が行なわれ、(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下SCEI)代表取締役社長兼グループCEOの平井一夫氏により、同社のゲーム機「プレイステーション3」(PS3)や「プレイステーション・ポータブル」(PSP)についてのビジネス概況と、今後の展開についてが語られた。

 今年6月にグループCEOに就任した平井氏は、CEO就任以前は北米でのプレイステーションビジネスを担当していた。そのため米国でのカンファレンスではたびたび講演を行なっていたものの、日本で、しかもグループCEOの立場で多数の聴衆を相手に講演を行なうのは初めてのことである。現時点では最新プラットフォームであるPS3とPSPのいずれもが、任天堂(株)の「Wii」や「ニンテンドーDS」、(欧米では)米マイクロソフト社の「Xbox 360」の後塵を拝する苦しい立場にあるSCEIの代表として、どのような巻き返しの策を披露できるかに注目が集まっていた。

ゲームへの原点回帰を強調

 平井氏の基調講演のテーマは、「ゲームへの原点回帰」にあったと言える。平井氏は冒頭で、「プレイステーション」からプレイステーション2にかけての歴代のプラットフォームの推移などの実績を示したうえで、プレイステーションビジネスをより一層広げるために、「原点を見つめ直し、楽しいゲーム、楽しいコンピュータエンターテインメントの世界を提供し続けることが、最も重要かつ最優先課題である」と述べた。

 これはPS3が登場当初、“単なるゲーム機ではなくコンピューター”というビジョンを強調しすぎた点を踏まえたものであろう。ビジネスの根幹をなしていたゲームに対してより強い取り組みを行なわなくては、ビジョンの実現どころかビジネスの崩壊につながりかねない。他社の先行を許して3番手に甘んじている現状を打破するためには、必然的な方針転換であり、ゲーム業界から求められていた立場に立ち返る、という決意表明と言えるだろう。

 講演ではまず「PSPのビジネス状況とこれからの取り組みについて」が語られた。PSPは今年6月末時点で2600万台、現時点では3000万台を世界で出荷しており、ミリオンセラーのタイトルも登場するなど、プラットフォームとして着実な進展を見せているとした。また20日には薄型・軽量化された「新型PSP」を発売したほか、カメラやGPSユニット、ワンセグチューナーといったオプションを展開するなど、プラットフォームとその活用の幅を広げる取り組みについて報告した。PSPの展開については米欧などの各地域会社の取り組みも重視し、地域のニーズにあったコンテンツ展開を行なうという。例としてはIP電話ソフト「Skype」への対応などが挙げられた。

PSP用オプション機器。左からカメラ「ちょっとショット」「ワンセグチューナー」「GPSレシーバー」 強力なプロセッサーを積んだ携帯機器ならではのPSP用オプション機器。左からカメラ「ちょっとショット」「ワンセグチューナー」「GPSレシーバー」

 そのうえで、PSPを使った新しい展開として平井氏は、PS3上のゲームをネットワークで接続されたPSP上で楽しむ「リモートプレイ」の概念と、そのデモを披露した。内蔵無線LAN機能を使ってPSPとPS3が簡単に接続されたのに続いて、PS3上にあるコンテンツ「まいにちいっしょ」をPSPの画面上で動作させてみせた。ビデオや音声のリモート再生も可能なようだ。

PS3とPSPによる「リモートプレイ」の概念図
PS3とPSPによる「リモートプレイ」の概念図
PS3用のネットワーク対応ソフト「まいにちいっしょ」をPSP上で実行している様子

 リアルタイム性の高いアクションゲームなど、どの程度のコンテンツまではリモートで操作可能になるのか詳細は言及されなかったが、LAN内だけでなくインターネット経由でのリモートプレイも可能なようで、対応ゲームであれば場所に縛られない新しい楽しみ方を提案できるかもしれない。

 また、平井氏はリモートプレイの将来のプランとして、複数台のPSPやPS3同士が接続されるプランを語った。1台のPS3をホストとして複数台のPSPが接続し、ゲームをダウンロードして多人数で楽しむ。同時に、遠く離れたところにいる人もホストに接続して、観客としてゲームプレイを観戦するというアイデアである。同様の仕組みはゲームセンターのゲームやパソコン用ゲームで実装されているものもあり、特にスポーツゲームやレースゲーム、シューティングゲームなどで、楽しみ方の幅を広げるのに役立ちそうだ。

リモートプレイの将来像
リモートプレイの将来像。複数のPSPやPS3が1台のPS3をホストとして接続し、PSPではゲームプレイを、PS3からはゲームの中継を楽しむことができる

PS3立ち上げの遅れを取り戻す4施策とは?

 懸案のPS3については、冒頭に述べた“ゲーム機としての原点回帰”を実現するための取り組みが語られた。まず出荷台数については、今年8月時点でワールドワイドで500万台を上回ったとの数字を示しつつも、「一気呵成の立ち上げというわけにはいかなかった」として、期待された立ち上げができなかったことを率直に述べた。そして、ゲーム機としての回帰、つまりゲームソフトと周辺機器の充実を実現する施策として、4つのポイントを挙げて説明した。

平井氏が示したPS3の全世界での出荷台数推移 平井氏が示したPS3の全世界での出荷台数推移。1年弱で500万台というのは悪い数字ではないが、WiiやXbox 360が1000万台を超えたという数字を見ると、劣勢は否めない

 まず筆頭に挙げられたのは、「パートナー企業(いわゆるサードパーティー)との関係強化」である。特に、まったく新しい複雑なCPUを備えるがゆえに、ゲーム開発にかかるコストや技術力が非常に高く要求されるという懸案については、「パートナー各社様との対話を通じて、開発環境の問題点の洗い出しと改善を速やかに行なう」(平井氏)としている。具体例としては、SCEI内部で開発されたPS3用のゲームエンジン(グラフィックスシステムなど、ゲームを動作させる基盤となるプログラム部分)をパートナーに対して提供開始しているほか、同社が以前に買収したゲーム開発ツール開発会社である英SN Systems社によるツールについても、近いうちに提供されるという。パートナー企業の開発者との対話の場も、全世界で開催するとのことだ。

パートナー企業に対する開発面での支援策
パートナー企業に対する開発面での支援策

 第2の施策は、ある意味第1の施策と相反するようでもあるが、「内部制作の強化」である。任天堂は自社ブランドのタイトルが非常に強く、それらの魅力によってプラットフォーム全体を大きく牽引している。マイクロソフトもまた傘下に多くの開発会社を抱え、本体の売り上げを牽引するキラータイトルを自社プラットフォームに独占的に供給している(日本では功を奏していないが)。その点SCEIは、プラットフォームの顔となるようなキラータイトルが自社傘下に少ない点が弱みと言われ続けていた。

 それを解消する施策として、英Evolution Studios社と英Bigbig Studios社を買収したことが、基調講演の中で発表された。両社とも日本では馴染みの薄い開発会社ではあるが、Evolutionはミリオンセラーを記録したというPS3用レースゲーム「モーターストーム」を開発している。ラリーカーのレースゲーム「WRCシリーズ」の開発会社と言えば、ピンとくる人もいるだろう。両社が具体的にどのようなタイトルを開発するのかについてまでは語られていないが、欧米で強い開発会社を傘下に収めたことは、これらの地域でのプラットフォーム普及に有利に働く面があるだろう。

 第3の施策は「コストダウンの実現」である。CPUである「CELL/B.E.」やBlu-rayディスクドライブなど、最先端の機能を搭載した分、PS3が高価なゲーム機になっている点は明らかだ。これを半導体製造コストの低減などを通じて、より安価にしていくという。ただし、今回の講演ではPS3本体の値下げについては言及されなかった。「下げたいけれど、現時点では下げられない」という苦しい事情の現われと言えようか。

 第4の施策は「VOC」(顧客の声)とされている。顧客の要望に応えた商品を提供するということで、平井氏はその現われとして、PS2の標準コントローラーと同じ振動機能を備えた、新しいPS3専用ワイヤレスコントローラー「DUALSHOCK3」を発表した。

振動機能を内蔵したワイヤレスコントローラー「DUALSHOCK3」
振動機能を内蔵したワイヤレスコントローラー「DUALSHOCK3」。日本で11月に先行販売され、米欧は来春。価格は未発表

 既存のPS3専用コントローラー(SIXAXIS)と同じく、内部に加速度センサーなど同等の機能を備えたうえで、振動機能を内蔵している。外観やボタン配置は変わっていない。振動機能がPS3用コントローラーで搭載されなかった点を惜しむ声は少なくなかったようで、平井氏も新しいコントローラーを試してみた際に「ちょっと懐かしい」印象を受けたという。TGS2007会場で出展されている10タイトルのゲームがこれに対応するほか、既存のゲームもインターネット経由でのアップデートにより、振動機能に対応するものがあるという。

会場に展示されていたDUALSHOCK3。見た目は既存のコントローラーとまったく変わらない

注目の「Home」は来春に延期

 平井氏の講演の締めくくりは、PS3とネットワーク関連の話題に費やされた。PS3のネットワークサービスはすでに270万件のアカウントがあり、サービス内容もさらに充実させていくという。その筆頭に挙げられたのが、12月13日に発売予定の「グランツーリスモ 5 プロローグ」で、ディスク版だけでなくネットワーク配信版も同時に発売されるという。キラータイトルと呼べるタイトルをネットワーク配信版で同時発売するというのは、家庭用ゲーム機の業界では初である。

「グランツーリスモ 5 プロローグ」はディスクだけでなくネットワーク配信版も同時に発売されるという
「グランツーリスモ 5 プロローグ」はディスクだけでなくネットワーク配信版も同時に発売されるという

 一方、“PS3版Second Life”とも呼ばれる3D仮想世界サービス「PLAYSTATION Home」(以下Home)については、年内の開始予定を遅らせて、サービス開始時期を2008年春に変更することが発表された。HomeについてはSecond Lifeのような3D仮想世界に、プレイステーションプラットフォームのゲームを軸としたコミュニティー要素を加えたという概略程度しか公表されていない。今回の講演でも具体的な内容については言及されなかったが、ただ1点、「dress」と呼ばれるファッションに関連した何かを行なうということだけが公表された。

 そのほかにも、現在はPS3経由でしか利用できないゲーム配信サービス「PLAYSTATION Store」が、20日からパソコンでも利用できるようになったという発表も行なわれた。これにより、PSP向けのゲーム配信をパソコンとPSPだけで利用できるようになる。

今まではPS3経由でしか購入できなかったPSP用ゲーム配信「ゲーム アーカイブス」も、パソコンとPSPで利用できるようになった 今まではPS3経由でしか購入できなかったPSP用ゲーム配信「ゲーム アーカイブス」も、パソコンとPSPで利用できるようになった

 これらPS3のゲーム機としての振興策の数々を披露した後で、平井氏はPS3のもうひとつの側面である“極めて強力なコンピューター”の面についても触れた。PS3から参加できる、米スタンフォード大学運営の分散コンピューティングプロジェクト「Folding@Home」について触れ、Folding@Homeに参加しているコンピューター全体の演算能力が1ペタFLOPSを超え、その8割がPS3によるものだという。ところが台数ベースで見た場合、PCがPS3の6倍もの数を占めているそうで、6分の1の数に過ぎないPS3が「圧倒的」(平井氏)な能力を備えている証明となっている。

 平井氏はPS3の優れた演算能力やBDドライブといった先進的な機能は、新しいエンターテインメントを実現するものと定義。その実現に向けてパートナー企業への協力を求めるとともに、SCEI自身もビジネスの原点を見つめ直すことを繰り返して述べた。

 今回の講演は、CEO就任後の平井氏がたびたび述べていた点をまとめた内容が主題で、新鮮味や市場での大逆転に直ちにつながるような話題はなかった。しかし、“ゲーム機の原点に返る”という今回の講演のテーマは、消費者、ゲーム業界のいずれにとっても歓迎できることであろう。あとはそれを実現できるだけのゲームを提供できるかにかかっている。

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