日本エイ・エム・ディ(株)(AMD)は18日、省電力機能を強化したノートパソコン向けの新CPU“Griffin”(グリフィン)と、グラフィックス機能(GPU)内蔵チップセット“RS780”を中核とするノート向けプラットフォーム“Puma”(ピューマ)を、2008年中頃に投入すると発表した。
ノート向けの新設計CPU“Griffin”
Griffinは現在のノート向けデュアルコアCPU“Turion 64 X2”の後継となるノート向けCPUで、パフォーマンスの向上とバッテリー駆動時間の延長を重点に置いた新設計のCPUであるという。AMDの既存のノート向けCPUは、デスクトップCPUの設計を元にノート向けの電力管理機能などを追加したものが主であった。これに対してGriffinでは、ノート向けに最適化された設計を採用したという。
AMD64アーキテクチャーのデュアルコアCPUは、2つの独立したCPUコアと、メモリーコントローラーやI/Oコントローラー(HyperTransportブリッジ)を含む“ノースブリッジ”部を、ひとつのダイ上に備えている。Griffinでは2つのコアとノースブリッジ部が、それぞれ独立した電力ブロック(パワープレーン)に分かれており、それぞれ別々に動作周波数や電圧を変更できるという。これにより、各コアの動作状況に応じたきめ細かい電力制御が可能になり、CPUの低消費電力化に貢献すると考えられる。
製造プロセスは65nm SOIを使用する。トランジスタ数やキャッシュ容量等の詳細は公表されていないが、各コアが内蔵する2次キャッシュメモリーは増量されるという。今年後半に投入されるデスクトップ向けの新CPU“Phenom”が備える共有型3次キャッシュは備えない模様だ。各CPUコアの動作周波数は、最高周波数を基準に、8分の1ずつ、8段階に下げられる。
また、ノースブリッジ部もノート向けに一から設計したというものを使用。DDR2メモリーの電力効率の改善や、HyperTransport 3への対応が図られる。さらに、HyperTransport 3インターフェースの消費電力を低減すべく、最高のx16から停止状態(0)まで、バンド幅を動作状況に応じて動的に変更する機能も備える。
DirectX 10対応のGPU内蔵チップセット“RS780M”
“Puma”とは、CPUのGriffinを含むAMDのノート向けプラットフォームのコード名である。そのPumaを構成するチップセットが、GPU内蔵のチップセット“RS780”シリーズである。GPUコアやPCI Expressインターフェースを備える“RS780M”と、6ポートのシリアルATAコントローラー、14ポートのUSB、PCIインターフェースなどを備える“SB700”で構成される。
RS780Mの大きな特徴は、DirectX 10に対応するGPUを内蔵する点にある。このGPUについて詳細は説明されなかったが、14日に発表されたDirectX 10世代のGPU“Radeon HD 2000”(関連記事)が備えるビデオ再生アクセラレーション機構“UVD”を備え、Blu-rayディスクやHD DVDの再生アクセラレーションを可能とする。またチップセットに接続する小容量のビデオメモリー“ローカルフレームバッファ”のサポートや、映像出力機能としてDVIやHDMIに加えて、映像と音声を1本のケーブルで送れてコンテンツ保護技術も備える“Display Port”をサポートするなどの特徴を備える。そのほかに、高速化される第2世代(Gen2)のPCI Expressにも対応する。
興味深い機能として、“PowerXPress”と称するGPU切り替え機能を備えている。3Dグラフィックス性能とモバイルユース時の低消費電力の両立を意図して、GPU内蔵チップセットに加えて独立したGPUも内蔵するノートパソコンがある(ソニー(株)のVAIO type Sなど)。PowerXPressはこうしたノートパソコンを意識した機能だ。例えば、電源コンセントにつないで使用している場合は、独立GPU側で動作する。しかしバッテリー駆動に切り替わると、独立GPU側をオフにして、RS780Mの内蔵GPUに切り替える。既存の切り替え機能を持つノートは、GPUの切り替えにOSの再起動が必要だったが、PowerXPressでは再起動なしに切り替えることが可能という。切り替えに要する時間、対応するGPUについての詳細は未公開であるが、ごく短時間で切り替えは可能という。
パソコン内蔵型フラッシュメモリー“HyperFlash”
Pumaでは“HyperFlash”と呼ばれるノートパソコン内蔵型のフラッシュメモリーをサポートする。チップセットのSB700と、AMD独自のインターフェースでNAND型フラッシュメモリーを接続し、Windows Vistaが備えるフラッシュメモリーを使ったパフォーマンス向上/消費電力低減機能である“ReadyBoost”“ReadyDrive”を実現する。インテル(株)の“インテル ターボ・メモリー”と同種の機能と言える。
HyperFlashについても、詳細はまだ明かされていない点が多い。ターボ・メモリーがインテルが供給するNANDフラッシュメモリー(と搭載モジュール)に事実上限定された機能であるのに対して、HyperFlashではAMDで特定の供給形態を定めるのではなく、パソコンメーカー側の選択の自由を重視している。どのメモリーメーカーのフラッシュメモリーに対応するかについても、現時点では未公開である。AMDのフラッシュメモリー部門を分離して成立した経緯を持つ米スパンション社は、“MirrorBit”と称する独自技術を使ったNOR型フラッシュメモリーを供給しているが、HyperFlashはこれには対応しないもようだ。