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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 ― 第11回

ソロデビュー20周年記念・平沢進ロングインタビュー【後編】

平沢進が語る、音楽の新しいスタンダード

2009年12月26日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ミュージシャン・平沢進氏。後編ではネットと音楽をテーマに、下降線をたどる「音楽業界」という旧来の産業構造からの跳躍について語ってもらう

 平沢さんがプロミュージシャンとして最初にインターネットへ軸足を移して10年。無料配信やインタラクティブライブ、今回の「還弦主義」など、続々とネットを通じたパフォーマンスを展開してきた。その結果、この音楽不況下にあって売上を伸ばし続けているというから驚きだ。その秘密は何か? というのが今回のテーマ。

 「新しいスタンダードを作った方が早い

 という前回の平沢さんの発言は、明快かつ示唆に富んでいる。いま「旧(ふる)いスタンダード」のシステムが壊れつつあり、それらを延命させるために様々な規制が講じられつつある。

 だが、本来音楽は、そうしたものとは無関係にあって、そうしたものと戦う必要もない。10年前にそこから抜け出す最初の一歩を踏み出した人は、それを「体感」として語ってくれた。むしろシステムに乗った途端に失われるものについても。

 では、インタビューの続きをお楽しみください。


ビジネスモデルと呼べるようなものはない

―― もう10年ですよ。平沢さんだけがネットで成功しているのはなぜなんでしょう?

平沢 さあ、どうしてでしょう?

平沢氏が成功した理由は「どうしてでしょう?」ととぼけてみせる

―― では今日の本題です。いま国内でも海外でも、動画サイトを通じて新しい音楽シーンが形成されつつあります。いろんな才能がいて、それぞれファンを抱えている。ひょっとしたらこの流れが次の音楽シーンを支えるのかも知れない。ただ、多くは「気が付いたらビューが取れていてビックリ」というようなアマチュアです。趣味を超えてやるべきかどうか迷うという話も、身近なところで聞いています。

平沢 何を迷うんですかね。現在までに獲得したバリューと活動スタイルは、すでにミュージシャンの貴重なリソースなのだから、それを活かせる方法を追求すればいい。ネットの音楽シーンは現在形成されつつあるわけだから、先人もいなければお手本もないんですよ。それにミュージシャンごとにまったく背景が違うとも思う。だから、やりたいと思ったこと、やれると思ったことをどんどんやっていくことです。

 それとも、既存の何かからお声がかかるのを待っているということ?

オフィシャルサイト「NO ROOM」。サイトが楽曲配信、パッケージ販売、ライブ告知、イベント告知などすべてのセルフプロモーションを担っている

―― そういうこともあるかも知れません。

平沢 私にはその感覚はなかったですよ。むしろ、既存の構造から抜け出さなければ明日はないと思った。だからネットを中心にした活動に切り替えたんです。そこには先人もお手本もなかった。

―― じゃあ、仮に「平沢進のビジネスモデル」があったとすれば何だと思います?

平沢 音楽は資本主義と相容れない性質を持っているから、音楽として生きつづけられるんでしょ? だから誰もがある種のビジネスモデルを踏襲すれば成功するというもんじゃないですよ。音楽のそういう性質をきちんと見続けて維持しつづけること。あえてビジネスモデルというならそこから発想しなければ駄目でしょう。パラドックスでしょ?

 ちなみに私はもう業界のビジネスモデルは踏襲していないですよ。プロモーションもしないし、取材も断ることが多い。

―― なのにこんな取材を受けていただいてホントに……。

平沢 意味ある取材は受けますよ。でもほとんど意味がない。ミュージシャンが既存のメディアに頼らなければ情報を発信できない時代はとっくに終わっているでしょう? ミュージシャンというタダ同然の資源をめぐる利権構造はもう成り立たないという事実が見えない連中が、いまだに「掲載してやる」という立場を捨てられないのは滑稽ですね。

―― そういう認識をお持ちなのは重々承知しているにも関わらず、メディア面を下げて来ざるを得ない状況が本当に心苦しく……。

平沢 だから意味ある取材は受けるって言ってるでしょ。

―― ……わっ。ありがとうございます!

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