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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第44回

ライブメディア時代の音楽産業

迷走する音楽ビジネスに活路はあるか【後編】

2011年01月22日 12時00分更新

文● 四本淑三

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 先週に引き続き、新春座談会の模様をお届けしたい。前回の村田さんによる「LOiDレーベル衰亡史」を受け、キャプテンミライ、古川P両氏の作り手側から見た現況と、それに対する三人のアプローチについて聞いてゆく。

 メジャーのCD販売も音楽配信もまったく振るわない中、VOCALOIDとその周辺の「歌い手」のイベントは相変わらず盛況だ。作り手側は同人系のルートで自らのタイトルを売り、収益を上げている。ブームの始まった3年前から見ると、イベントの規模や市場も段違いに大きくなってもいる。ニコニコ動画界隈の「プチ芸能界化」という言葉も聞かれるようになった。

 しかし、マーケティングやプロモーションの戦略がなければ、注目されるのもなかなか難しい。すでにメジャーが機能していない今、ネットが「上」のステージへ向けての登竜門ではなくなったのは確かだろう。(前編はこちら

ミステイクもそのまま見られる時代

―― (iTunesでキャプミラさんの楽曲が)そんなに売れませんでしたか?

キャプミラ 売れてないんです。

村田 それを売れたことにするってねー。

古川 よし、だからこそ売れたことに。

Image from Amazon.co.jp
UmiNeko presents INTERNET INDEPENDENT Vol.2 -GENTLE SOUL FLAVOR-

キャプミラ そう、夢がないんで。

古川 それでひとつ思い出したことが。UmiNekoさんという歌い手さんがレコーディングを生中継したんですけど、生放送しているうちに(UmiNekoさんのCDの)Amazonランキングがすごい上がったんですよ。3万位くらいから一気に40位くらいまで。

UmiNekoさんの生中継 : 2010年12月18日にニコニコ生放送で「INTERNET INDEPENDENT presents UmiNeko」として放送

村田 へえー。

古川 これは一体何が起きているんだろうと。以前インタビューで「メジャーが憧れの場所でなくなっている」って話をしたんですけど、その憧れ感ってもしかしたら戻ってはこないんじゃないかと思うんです。その代わりに生まれたのが、アーティストとお客さんが同じ目線で共感することなんじゃないかなと。UmiNekoさんの場合は、レコーディングの現場を共有することで、ミュージシャンも感動しながら作ってるんだよということが見ている側にも分かるし、参加意識が生まれる。それが売上に返ってくるのは、すごくネットが健全に機能したって言えるのかなと思います。

―― メジャーもストーリーを作ってメディアで展開して共感を得る、というような制作はしてきたと思うんですが、それが自然にやれてしまうということですね。

古川 ミステイクやアウトテイクって普通は見られないわけです。でも、それを見ることであたかもエンジニアやプロデューサーとしてブースにいたかのような感覚が味わえるわけですよね。それってすごい面白いなと。

―― そういう意味でも今は自己プロデュース能力が求められるんでしょうね。普段のツイートの仕方やらなんやらを含めて。

村田 それは疲れちゃいますよね。自然にできる人以外は。レーベルや企業の必要性があるとしたら、その辺のサポートなんだろうなあ、というのが3年やって分かったところです。とにかく曲だけ作っていたい人もいっぱいいますからね。

キャプミラ それにレコーディングの風景を見せるという話も、やってナンボみたいな話になっていくんですよね。

―― だんだんハードルが上がっていくと。

キャプミラ 3つ前例があるとそうなっちゃう。それとネットの世界と実際にモノが売れる世界ではズレがある。バイバイレコード(キャプミラさんの個人レーベル)で自分のソロを出したときは、けっこう盛り上がったんですよ。タイムラインも盛り上がって、再生数もそれなりに伸びた。ニコニコ動画の音楽タグの中では2位をキープしたり、iTunes Storeのトップ20に入っていたんですよね。

「ネットの世界と実際にモノが売れる世界ではズレがある」(キャプミラさん)

村田 これは売れてる! みたいな。

古川 これでやってけるじゃん! みたいな。

キャプミラ そう、話だけ聞くとすごいですよね。「うわー、何百万儲かったの?」みたいな。まあ、全然比例しないですよね。数字は。

(次のページに続きます)

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