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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第15回

著作権は自分で決める 音楽家・まつきあゆむの方法論

2010年02月06日 12時00分更新

文● 四本淑三

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 現在、音楽家が作品を売るための最もローコストでシンプルな方法。それは作家自身がリスナーにオーディオファイルを販売することだ。誰もが思いつくであろう「ネット上の手売り」。だが今まで、日本のアーティストは誰もやらなかった。

「1億年レコード」。地球編と宇宙編の2サイドに分かれたMP3ファイル28曲入り。価格は2000円

 それを実行に移したのがまつきあゆむさん(冒頭写真)だ。彼はMySpace上で頭角を現してきた1983年生まれの若い音楽家。これまでの作品はすべて自宅録音で制作されてきた。ビートルズの影響を受け、リバースエコーや急激なピッチ操作など、デジタル録音ながらアナログテープ時代の録音手法をシミュレートしている点も面白い。

 彼が1月1日に発表したアルバム「一億年レコード※1は、まつきさんが自らリスナーからの入金確認をし、ダウンロード用のURLをメールで送信するという方法で販売している。またアルバムの発売と同時に、リスナーからの寄付金を集め、それを活動資金に充てる目的で「M.A.F」(Matsuki Ayumu Fund)と呼ばれる基金も設立した※2

M.A.F.の資金は現在12万円ほど。マイクの変換ケーブル、Rolandのテープエコー(エフェクター)を購入した履歴が上がっている

 ネット時代、ミュージシャンとしての活動をどうやって成立させるか。その人体実験的な彼の存在と作品は、Twitterを通してたちまち知れ渡った。「自作自演」に加えて「自売」まで始めた彼の目的がどこにあるのか、何より彼はどんな人物なのか? それを確かめるためのインタビューは、まつきあゆむさんの自室で行なった。

 そこはどこにでもあるワンルームマンションの一室だ。机の上には黒いMacBookとProTools用のオーディオインターフェイスがあり、サスペンションホルダーにコンデンサーマイクが吊られている。いわゆる音楽好きの男の子の部屋と大差ない。コーヒーまで淹れていただき、友だちの家に来たような雰囲気で取材は進んだ。

 インタビュアーの口調がタメ口で妙に馴れ馴れしいのは、大いにその雰囲気が影響している。そこは割り引いて読んで欲しい。

※1 一億年レコード : 320kbpsのMP3で全28曲が収められ、JPG形式の歌詞カードが付いた仮想的ダブルアルバムの形式を採っている。販売価格は2000円で、支払いはPayPalか銀行口座への振込みで

※2 M.A.F : サイト上には寄付金の残高と、購入した機材の詳細が公開されている


Twitterは無理せず、余す所なく等身大に僕を映してくれる

―― じゃあ始めましょうか。僕も「一億年レコード」を買って、聴かせてもらいました。

まつき ありがとうございます。今回(メディアに)サンプルは配ってないので、誰でも平等に2000円払って買ってもらっているんです。

―― 普通の言葉で音楽が成り立っていて、大上段に構えてカッコいいことを言ってやろうという意図が見えないのがいいですね。目線の高さが一緒というか。

まつき そうですね。今週読んだ漫画とか、歌っているのはそういうことですから。

―― Twitterを始めたのはいつ頃でした?

まつき 僕は後乗りなんです。去年の10月くらい。

―― 結構最近ですね。どこが面白いと思いました?

まつき いろんなことが同じタイムラインで起きているわけです。すごく尊敬していたアーティストが僕の作品を褒めてくれたりする一方、その横で僕の友達が「unko mogmog」とか言ってる。

―― ははははは! それはありがち。

まつき 僕の思考もそんなもので。すごく感動した後に、一瞬でエロいことを考えたり。だからすごくフィットしている。Twitterは無理せず、余すところなく等身大に僕を映してくれるから。そこが好きですね。

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