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週替わりギークス 第311回

YouTubeの再生を止めないために画面を自動でタップする機械を作った

2024年06月29日 07時00分更新

文● きゅんくん

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完成した機械

 YouTubeを長時間流していることはあるだろうか?

 YouTubeを長時間操作せずに流していると、「おまえ、ほんとに見てるんか? 動画止めてやろうか?」といった通知が出て動画再生が止まってしまう。

 筆者はあれがどうにも苦手だ。存在を否定されているような気分になる。

 YouTubeが「見てない」と判断するのは、画面操作がしばらくないからである。でも、自動再生で見てたり、リストで見てたりすると画面操作しないことはあるよね。

 うーん、自動で画面操作をたまにするようななにかを作ったらいいのでは??

iPadのタッチパネルを自動で押すようなものを作ればいいのかなあ

 筆者はYouTubeをiPadで見ている。

 iPadはタッチパネルである。タッチパネルを自動で押すようなものを作ればいいのかなあ。

 筆者のiPadはiPad Proなので、Apple Pencilを使うことができる。

 家に「SwitchBot」という、スマートホーム用のスイッチを押すデバイスが余っていたので、まずはそれを使ってみて工作してみることにした。

 SwitchBotは、スイッチを押したり引いたりするために、上下する機構がある。

 ここにApple Pencilをつけたら、ペン先をiPadにつけたりつけなかったりをコントロールできるのではないだろうか。

丈夫なテープで何とかつけてみた

 うーむ、心もとない。

 上下するパーツが小さすぎて(本来は糸をひっかけて使うくらいの小さいパーツである)、粘着テープでは粘着力が足りずにとれてしまう。

 最初の方は何とかうまくいったりもするが、しばらくするとApple Pencilの長さが影響して倒れてしまう。

 SwitchBotはHubというほかのデバイスを使用してアプリと接続することで、1時間に1回スイッチを入れるなどの制御がしやすい。

 SwitchBotでできたらラクだったのだがこれはしょうがない。

SwitchBotはアプリで自動操作できる

1つひとつの自動操作の中身では、スイッチをオンにしたあとオフにしている

 かくなる上は、Apple Pencilを使用せずにiPadを操作する方法を考えるしかない。タブレットのタッチパネルは一般的に投影型静電容量方式だ。

・パネル全体に均一に電気が蓄えられている。
・人間の指が近づくと人間の導電性によって電気が指に移動する。
・その結果静電容量が変化する。
・静電容量の変化を検知すればどこがタップされたかわかる。

 簡単に言うと、そんな感じだ。人間には水分があるので、導電性があるのだ。

 調べてみたところ、投影型静電容量方式のタッチパネルを操作できるモジュールが売っているようだ。

 スイッチサイエンスでリレータッチボード(ドライバー有り)というモジュールを見つけた。これをArduinoにつなげれば、iPadのタッチパネルを操作できそう!

 Arduinoというのは電子工作に便利なマイコンで、パソコンでコードを書き込むことができる。Arduinoにこのモジュールをつなげれば、この簡単にモジュールを制御できるのだ。

 さっそく買いに行くことにした。

 この記事では手戻り(やってみたけど要らなかったことなど)も記載する。しかし、マネしたい方のために、最終的に必要だったアイテムをまずは記載する。

制作に必要なもの

《購入したもの》

・リレータッチボード(ドライバー有り)
・Arduino Uno(なんでもよかったので安い互換品にしちゃいました)
・USB Type A(オス)と TypeB(オス)のケーブル(筆者は1mを購入)
・ジャンパーワイヤー(最終的に必要だったのは3本)
・薄手の両面テープ

《家にあった使ったもの》

・はんだごて
・はんだ
・ワイヤーストリッパー
・UEW(太さはなんでもよし)
・非導電の粘着テープ(熱収縮チューブを使うのがめんどくさくて代わりに使いました)
・パソコン

購入した品

 購入品は全て秋葉原の千石電商で購入。
 合計2840円だった。

今回一番重要なパーツ

リレータッチボードをArduinoにつなげる

 今回購入したリレータッチボードは、自分ではんだ付けをして、Arduinoにつなげる必要がある。

 Arduino側はジャンパーワイヤーをつなぎたかったので、ジャンパーワイヤーのArduinoにつなぐ方と反対側の被膜をワイヤーストリッパーでむいてはんだづけしてみることにした。

手前の3色のケーブルがジャンパーワイヤー

 しかし、ジャンパーワイヤーにはんだが乗らない。

 うーむ、UEWをモジュールにはんだづけして、UEWとジャンパーワイヤーをはんだづけすることにしよう……。

 UEWというのはポリウレタン銅線というもので、ウレタン樹脂の被膜のついたエナメル線だ。ウレタン樹脂を熱でむくとはんだづけできる。

 扱いやすいので、重宝している。

UEWをはんだづけした(左が巻かれているUEW)

雑だが、ジャンパーワイヤーとUEWをはんだづけした

ジャンパーワイヤーをArduino UnoにつなぐとリレータッチボードがArduinoにつながる

・リレータッチボード⇔Arduino Uno
・5V⇔5V
・GND⇔GND
・EN⇔13

 となるように接続した。

 Arduino Unoの13番ピンはデジタル出力ができる。13番をHIGHにしたりLOWにしたりすることで、リレータッチボードをカチカチ制御する(リレーなのでほんとにカチカチと音が鳴る)。

できあがり(熱収縮チューブを使うのが面倒で、はんだづけ箇所を非導電テープで保護している)

リレータッチボードをiPadに貼り付けてみる……が、うまくいかない

 購入した両面テープでリレータッチボードをタッチパネルに貼り付けてみる。

 実はこのとき「うまくいかなかった」と思い、いろいろ試行錯誤をするのだが、この時点でうまくいっていたらしい。おそらく、貼りつけた場所が悪くてYouTubeのUIが反応していなかったようだ。

 YouTubeの映像上をタップすると早送りにしたりするUIがあるのだが、そのタップ箇所の理解ができていなかったらしい。要らない工程ではあるのだが、試行錯誤のやり方として、記載する。

貼り付けたところ(この場所はだめだった)

 このとき動かなかったので「GNDが不安定なのでは?」と疑った。

 電子工作において、というか電子機器においてGNDは重要な役割を持っている。冷蔵庫や洗濯機を設置するときにアースをつなげるでしょ? あのアースがGNDです。

 GNDがArduino Uno側とiPad側で共通化されていない状態だったので、GNDをつなげてみることにした。

 てかiPadのGNDってどこ??

 調べてみたら、外装でもGNDをとれるらしい。

外装とArduino UnoのGNDをつなげてみる……

 うーんなんか違う。

 どうやら、イヤホンジャックからGNDをとれるらしい。

 でも、このiPadにはイヤホンジャックがない。

 そこで、充電のUSB Type-Cとイヤホンジャックが両方つながるアダプターを購入してみた。

USB Type-Cとイヤホンジャックがささるアダプター

 ステレオミニプラグのケーブルを途中でぶった切って、そこからGNDをとることにした。

 しかし、ケーブルの中のどれがGNDだかわからない。

 そういうときは! テスターを使ってプラグ側とぶった切った側を測ってみる。

 テスターには「通電している場合に音が鳴る」という機能があり、プラグ側のGNDと通電すればそこがぶった切った側のGNDだ。

 そこをまたジャンパーワイヤーとはんだづけして、Arduino Unoにつなげられるようにしていく。

ぶった切ったところ

お気に入りのテスター

はんだづけ(イヤホン側の使わないケーブルは通電しないよう粘着テープでまとめた)

 これでもうまくいかない。

 ていうか、イヤホンジャックをArduino Unoにつなげてしまうと、iPad側がイヤホンをつなげていると勘違いして(確かに通電はしてる)iPad本体スピーカーから音が鳴らねえ……!

 音聞きたいから、イヤホンジャック使いたくねえ!

イヤホンしてると思われてる!

貼り付けている場所が悪いだけだった。動いた!!

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