ASCII倶楽部

このページの本文へ

週替わりギークス 第282回

メンヘラのことしか話せない私がスタートアップのイベントに登壇した話

2023年07月29日 07時00分更新

文● 高桑蘭佳(らんらん) 編集● ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 メンヘラテクノロジーの高桑蘭佳です。今回は6月に京都で開催された「IVS2023 KYOTO」のトークセッションに参加させてもらったので、その記録と振り返りを書こうと思います。

 IVSとは公式サイトによると、「2007年に開始された日本最大級のスタートアップ企業経営幹部が集まるカンファレンス&コミュニティ」。私個人的には2年前に参加したときの圧倒的・陽の雰囲気に気圧された記憶がつよく、いち参加者としてでなくトークセッションに出るなんて……と思いながらも、会場内には複数のエリアとステージがあり、昨年社会起業家支援プログラム「COM-PJ」 でお世話になったtalikiさんがプロデュースする「SOCIAL INNOVATION AREA」での登壇であったため、心もとなさが緩和されました。

 1日目最初のセッションで「メンタルヘルスに本質的に向き合うビジネスとテクノロジーの最先端」というテーマのセッションに登壇させてもらいました。

 お声がけいただいた当初はテーマについてはあまり深く考えていなかったのですが、他の登壇される方々が決まってから、「あっ、やばい…みんなガチメンタルヘルスだ!メンヘラの話しかできない!どうしよう!」と、当日まで再び不安な日々を過ごしました。

 しかし、いざトークセッションが始まってみると、モデレーターの田澤先生が話しやすく進行してくださり、一緒に登壇した刀禰さん、千頭さんのお話もとても勉強になることばかりで、私自身は平穏かつ有意義な時間を過ごすことができました。

登壇者紹介

メンタルヘルステクノロジーズ 代表取締役 刀禰 真之介さん

デロイト・トーマツ・コンサルティング (現:アビームコンサルティング)、UFJつばさ証券 (現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、エンジェルジャパン・アセットマネジメント、環境エネルギー投資を経て、2011年にMiew (現:当社)を設立し、代表取締役社長就任 (現任)。2014年にMiew system service (現:Avenir) 代表取締役社長就任 (現任)。2022年株式会社ヘルスケアDX 代表取締役社長就任 (現任)、株式会社明照会労働衛生コンサルタント事務所 取締役就任 (現任)

emol代表取締役CEO 千頭 沙織さん

2013年に美大を卒業後、2014年にクリエイティブ会社、株式会社エアゼを創 業、webやアプリの企画・デザイン・開発の業務に携わるその後、自身の実体 験から悩みを抱えている人の拠り所になるサービスを作りたいと思い、2018年 にAIとチャットで会話をしながらメンタルケアをするアプリ『emol』をリリー ス。2019年にemol株式会社を創業しメンタルヘルスの課題にアプローチした事業を行う。現在は精神疾患の治療用アプリの研究開発をに注力している。

モデレーター:田澤雄基さん

2014年慶應義塾大学医学部卒。医学部生時代に医療IT系ベンチャーを起業し、後に売却。卒後は研修医を経て慶應義塾大学医学部精神・神経科に入局。人工知能やIoTを活用した精神疾患の定量的診断研究およびその事業化を行っている。大学外では豊洲および市ヶ谷で夜18-22時に診療するMIZENクリニックを開業し、働く人のための夜間診療および産業医活動を行っている。

 特に事業機会とマネタイズに関する話題が個人的に勉強になったので、今回の記事ではそのテーマを中心に共有できればと思います。

メンタルヘルス領域の事業機会とマネタイズポイント

 トークセッション冒頭、おのおのが事業に取り組み始めた背景や原体験を共有するなか、もともと投資ファンドで働かれていた刀禰さんから「ヘルスケア系のサービスやる方々って結構いいことをやるんですが、ちゃんと正しいことをやるんですけど……大体マネタイズに苦労する」という話題が上がりました。その理由について、以下のように説明してくれました。

 刀禰さん「なぜかというと、もともとマネーフローが流れてないところに新しくマネーフローを作ろうとして苦戦してるわけです。僕からいうとそれは非常に難しいことにチャレンジしてるというふうにしか見えなくて。なので、僕らの事例でいうと、産業医に対してお金を払うビジネスモデルがあったので、そのビジネスモデルを他と差別化させて入っていったというのがポイントになってくる。皆さんも、もしヘルスケアやメンタルヘルス等のビジネスをやっていきたいのであれば、マネーフローがあるところを差別化要因として作っていくっていうのがやっぱり王道なんじゃないかな?って思います。」

 この後、初期はC(コンシューマー=消費者)向けのアプリを中心に展開してきた千頭さんからも以下のようなお話が聞けました。

 千頭さん「弊社がemolのアプリを作ってリリースしたのが5年以上前なんですね。コロナよりさらに1年半ぐらい前で、そのときはメンタルに対する意識があまりないというか、『メンタルヘルスってお金にならないでしょ?』と、投資家の方からも思われていた。資金調達に回るのはめちゃめちゃ大変で、市場が小さいし相手にされなかった。実際にマネタイズはめちゃめちゃ大変でお金にならないですよね。もうコンシューマー向けで売り上げ立てる気はまったくないって感じなんですよね」

 そんな経緯を経て、emolさんは現在、精神疾患者を対象に認知行動療法を施す治療用アプリの研究開発をして、保険適用を目指しているそうです。2人のお話を踏まえて、田澤先生からも以下のようなコメントがありました。

 田澤先生「マネタイズのポイントを考えるときに、産業医の配置のように法令義務がある部分を狙うのか、あるいは義務がなくても健康経営や治療アプリのように行政の後押しやトレンドに乗ってマネタイズができそうなのか、という点が重要なのかと思います」

 さらに田澤先生から刀禰さんに「注目している事例があればお伺いしたい」という質問に対しては、以下のような海外事情も。

カテゴリートップへ

この連載の記事

週間ランキングTOP5

ASCII倶楽部会員によく見られてる記事はコレだ!

ASCII倶楽部の新着記事

会員専用動画の紹介も!