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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第158回

データで、子どもたちを守れるか

2021年12月20日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 18歳以下を対象に、政府が10万円を配る準備が進んでいるが、データを使って、子どもたちを守る仕組みづくりも始まっている。

 デジタル庁、内閣府、厚生労働省、文部科学省の副大臣らが参加する「こどもに関する情報・データ連携副大臣プロジェクトチーム」という組織が、検討の場だ。

 10万円の給付をめぐって「本当に支援が必要な人たちはだれか」という議論が巻き起こったが、支援を必要とする子どもや親たちにタイムリーに支援を届けるのは難しい。

 データの活用が、その一助となればいいが、子どもや、その生活状況に関するデータは取り扱いに細心の注意がいる「センシティブ情報」にあたる。

 どの範囲のデータを連携し、どう活用するのか、乗り越えるべき課題の多いイシューだ。

見えにくい問題

 2018年の厚生労働省の調査によれば、日本では17歳以下のこどものうち、7人に1人が貧困状態にあるとされる。

 こうした世帯には、支援の手が届きにくいと言われる。

 政府が子どもの貧困に特化して設置している特設サイトは、次のように書いている。

 「その理由は、貧困である子供やその親に自覚がなく、自ら支援を求めなかったり、貧困の自覚があっても、周囲の目を気にして支援を求めないからです。このため、子供の貧困は『見えにくい』と言われています」

 コロナ禍の長期化で、こうした「見えにくい問題」は深刻さを増していると考えられる。

 労働政策研究・研修機構が2021年6月に実施した調査によれば、約4人に1人が、新型コロナ発生前と比べて世帯の生活の程度が「低下した」と回答している。

プッシュ型の支援

 ここで、政府が検討しているのは「プッシュ型」の支援の強化だ。

 「プッシュ(押す)」「プル(引く)」は、最近目にする機会の増えてきた言葉だ。

 たとえば、インターネットの場合、検索サイトを使って、検索結果として表示されたウェブサイトにアクセスする。こうした行動は、ユーザーが能動的に情報を引っ張ってくるので、プル型にあたる。

 一方で、スマホでメッセージを受信したときに送られてくる通知などは、ユーザーが何もしなくても表示されるため「プッシュ型」にあたる。

 このプッシュとプルは最近、政策用語としても使われるようになった。

 これまでは、住民側の申請を受けて行政機関が給付金を送金するプル型が中心だったが、コロナ禍が深まる中で、住民が申請しなくても要件を満たしていれば給付金を受け取れるプッシュ型の必要性が議論されるようになってきた。

プッシュ型の難しさ

 プッシュ型は、だれに支援を届けるのかについての判断が難しい。

 申請を受けてから支援を決めるプル型の場合、行政側は申請を受けてから、その人が要件を満たしているか判断すればいい。

 反対にプッシュ型の場合は、行政側が持っている情報を基に、だれが支援の対象者にあたるのかを判断することになる。

 そうなると、市町村の各部署や学校などが持っている子どもや世帯に関するデータを連携して、有効活用して……ということになるが、取り扱う情報がセンシティブなだけに、連携の段階で、慎重論が出るのは避けられないだろう。

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