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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第98回

東京ねらう“オリンピック・デストロイヤー”

2020年10月26日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 ロシア軍の情報機関が、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックをねらった大規模なサイバー攻撃を計画していた。

 イギリス政府の国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)が現地時間の2020年10月19日、ロシア軍の情報機関が、東急五輪の関係機関や関係者に対するサイバー攻撃を仕掛けていたと発表した。

 ロシア軍は、2018年に韓国の平昌で開かれた冬季五輪も標的にしていたという。

 イギリスのメディアは、ドーピング問題でロシアが国として五輪に参加できなくなったことが、サイバー攻撃のきっかけになったとの見方を報じている。

 大規模なサイバー攻撃の動機は、単なる腹いせだったのだろうか。

●五輪開会式中に障害発生

 2018年2月9日、華やかな冬季五輪の開会式が開かれている舞台裏で、事件が進行していた。

 大会の公式サイトで、観客がチケットを印刷できなくなったり、メインのプレスセンターでネットに接続できなくなったりといった事象が相次いだ。

 テクノロジーを駆使した演出が施された開会式には影響がなかったが、五輪の運営に関わるネットワークで、小規模の障害が続発した。

 2年後に東京五輪を控えていた、日本の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)も、平昌で起きた事象を注視していたようだ。

 平昌五輪に関連したサイバー攻撃とシステム障害について資料をまとめ、公表している。

 この資料は、準備期間中に約6億件、大会中に約550万件のサイバー攻撃が発生したが、「運営に重大な影響を与えるようなサイバー攻撃は発生せず」とした。

●アメリカはロシア軍関係者6人を訴追

 ロシア軍のサイバー攻撃に対しては、アメリカとイギリスの両政府が連携して対応した。

 イギリスが東京五輪をねらったサイバー攻撃について発表した2020年10月19日、アメリカの司法省はほぼ同時に、ロシアのハッカー6人を起訴したと発表している。

 米司法省の発表によれば、6人はいずれもロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の74455部隊の所属とされる。

 6人は、平昌冬季五輪だけでなく、フランスの大統領選挙や、ウクライナの電力インフラ、ジョージアなどを標的としたサイバー攻撃にも関与していたとしている。

 平昌冬季五輪では、6人は「オリンピック・デストロイヤー」と呼ばれるマルウェアを使用し、開会式などを攻撃したとされる。

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