デジタル人民元の導入を目指す中国が、本格的な実証実験を始めた。
中国の中央銀行にあたる中国人民銀行が2020年10月12日にデジタル通貨のテスト運用を始めたのは、深セン市だ。
13日付のサウス・チャイナ・モーニング・ポストによれば、抽選で当選した5万人に、日本円換算で約3000円のデジタル人民元を配布し、18日まで買い物や食事などの決済に使ってもらう。
実証実験の対象者を一般市民にまで広げることで、デジタル通貨の利用を促す狙いがあるという。
日本などでは、「世界初」の中央銀行発行のデジタル通貨を目指す中国への警戒感を強調した報道が見られる。
一方で香港メディアをチェックすると、「中央銀行デジタル通貨」(CBDC, Central Bank Digital Currency)をめぐる、日本や米国、欧州を含む各国との競争状態にあると受け止められているようだ。
●191万人が登録
世界各地のメディアでデジタル人民元(Digital Yuan)の呼び名が定着しているが、公式には、デジタル通貨電子決済(Digital Currency Electronic Payment, DCEP)という呼び名があるそうだ。
同紙の報道によれば、深セン市民191万人がデジタル人民元の利用に必要な登録を済ませ、そのうち5万人に対して約3000円相当のデジタル人民元が贈られたという。
政府の政策というよりも、日本のキャッシュレス決済事業者のプロモーション手法を思わせるが、報道から、この手法は普及の面で高い効果があったことがうかがえる。
191万人は、深セン市民の人口の約15%にあたる。今回の実証実験で一気に登録ユーザーが広がり、本格導入への準備が進んだと見ることもできる。
配布された約3000円は、個人間で送金したり、銀行口座に入金したりすることはできず、約3400軒の商店や飲食店で決済ができる仕組みだ。
CBDCの実証実験だけでなく、新型コロナウイルス感染症で冷え込む消費に対する刺激策の面もありそうだ。
この連載の記事
- 第275回 仮想通貨が通貨危機の引き金に!?
- 第274回 公取委、アマゾンとグーグルに睨み 巨大IT規制の動き、日米欧で相次ぐ
- 第273回 ビットコインが急騰した3つの理由
- 第272回 サイバー犯罪集団LockBit、手口はビジネスさながら “ランサムウェア・アズ・ア・サービス(RaaS)”で企業を脅迫
- 第271回 楽天、5年連続赤字でもストップ高のワケ
- 第270回 KDDI、ローソンからのドローン配送に意欲
- 第269回 能登半島地震で浮かんだ、デジタル行政の弱点
- 第268回 ポケモン激似? 「パルワールド」は本格的な係争になるか
- 第267回 巨大IT規制へ 政府、日本版デジタル市場法を準備か
- 第266回 ビットコインETF承認で何が変わる? ポイントは投資家保護
- この連載の一覧へ