個人、企業を問わず誰でも作れる! さまざまなユーザーが広げる分散型SNS
2017年4月、ひとつのソフトの話題がインターネットを席巻した。その名も「マストドン」(Mastodon)だ。ドイツのプログラマー、オイゲン・ロッコ氏によって2016年10月に作られたもので、4月1日時点で3万に満たなかったアカウントが、メディアなどで紹介されるやいなや4月16日には約30万まで増加、5月末には67万アカウントを超えるという、驚異的な広がりを見せている。
マストドンは、一見すると「Twitter」のようなSNS(ソーシャルネットワークサービス)と同じように見える。しかし、これまでのSNSとはコミュニティの作り方に大きな違いがあり、ユーザーを引き付けている。まずはTwitterと比較しつつ、マストドンの特徴に触れていこう。
インスタンスによって実現された「脱中央集権型」SNS
マストドンは、Twitterのような短文を投稿するSNSです。Twitterでは「つぶやく」(ツイート)ことで140文字を投稿できるが、マストドンでは「さけぶ」(トゥート)ことで500文字の投稿が行なえる。
最大の違いは、クラウドコンピューティングなどを利用したひとつの大きなサーバーで全ユーザーを管理する「中央集権型」サービスを脱し、ユーザーの誰もがサーバーを運用できるようにしたオープンソースのSNSであること。いわば分散型といえる形態で、運営側によるコミュニティへの影響やサイバー攻撃リスクを排するとともに、感性の近い利用者同士での活発な意見交換を行ないやすくしている。このサーバーを、マストドンでは「インスタンス」と呼ぶ。
海外はもちろんのこと、すでに日本国内でも膨大な数のインスタンスが立てられている。「ぬるかる」さんの手でマストドン初の日本インスタンスとして作られた「mstdn.jp」をはじめ、pixivが運営する「Pawoo.net」、niconicoが運営する「friends.nico」、さらに技術的な話題、趣味や特定ゲーム向け、特定地域のインスタンスなど、その種類はさまざまだ。インスタンスひとつひとつが小さなSNSといってもいいだろう。こういったインスタンスの構造は、見方によってはかつてのパソコン通信の草の根BBSに近い仕組みともいえそうだ。
インスタンス同士をゆるくつなげる仕組み
マストドンではインスタンス同士が独立しているものの、トゥートのやり取りを行なうために、複数のインスタンスごとにアカウントを作る必要はない。異なるインスタンス同士がつながりを持てる機能が搭載されており、他のインスタンスのユーザーをフォローすることが可能となっている。この仕組みをリモートフォローと呼ぶ。