Raspberry Piでオーディオを
手のひらサイズのコンピュータ「Raspberry Pi(ラズベリー・パイ)」。石けん箱のようなパッケージで販売されており、キーボードもなければマウスもない、ディスプレイすらないというスパルタンな仕様だ。石けん大の小箱を開ければそこには基板が1枚きり、当然ながら説明書もない。しかし、その自由度と可能性は圧倒的だ。
最大の特長は、そのコストパフォーマンス。最新の「Raspberry Pi 3」では、ARMv8ベースのクアッドコア/1.2GHz 64bitCPUと1GBのLPDDR2 SDRAMを内包するSoC「Broadcom BCM2837」を採用、少し前のスマートフォンに匹敵する演算性能を備えるが、価格は1枚あたり4、5千円程度。Linuxなど多くのOSが動作するため、ソフトウェア開発の参入障壁は低く、組み込み機器プラットフォームとして産業機器の現場でも広く活用されている。
いわゆるワンボード(シングルボード)コンピュータは、BeagleBoneやArduino、DragonBoardなどいろいろな種類があるが、出荷台数でいえばRaspberry Piがダントツ。初代機が発売された2012年からわずか3年で累計出荷台数は500万台を突破、翌2016年には1000万台に到達した。いまや日本でも「ラズパイ」の愛称で知られるようになり、特にホビー用途では最大のシェアを誇る。
このRaspberry Pi、実はオーディオに向いている。ICの点数はパソコンに比べ少なく、そのぶん電磁ノイズも抑えられるなど静的特性において有利とされる。初代機はシングルコア/700MHzと処理性能にやや難があったが、第2世代機では4基のUSBポートにくわえDSDを含むハイレゾ再生を余裕でこなせる性能を獲得、現行の第3世代機ではオンボードWi-Fiに対応するなど、デジタルオーディオプラットフォームとして必要十分なスペックを手に入れた。出力経路もUSBにくわえ、PCなど他のプラットフォームでは難しい「I2S」も扱える。
オーディオ再生に特化したLinuxディストリビューションの登場は、オーディオ向きであることの証明だ。曲操作用のスマホアプリやプラグインによる拡張といった新機能の開拓に意欲的な「Volumio」、OpenHome対応など洗練された機能を備える「Moode Audio Player」など、世界中のオーディオ好きなLinuxデベロッパにより日々進化を続けている。オーディオはハードウェアばかり注目されがちだが、Raspberry Piを利用したオーディオはLinuxというソフトウェア資産あってこそなのだ。
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