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空飛ぶクルマの離着陸場の設置計画を支援するWebアプリがグランプリ

「PLATEAU AWARD 2025 最終審査会・表彰式」レポート

特集
Project PLATEAU by MLIT

提供: PLATEAU/国土交通省

この記事は、国土交通省が進める「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」についてのウェブサイト「Project PLATEAU by MLIT」に掲載されている記事の転載です。

「PLATEAU AWARD 2025」が、2026年2月14日に東京・品川のTUNNEL TOKYOで開催された。PLATEAU活用の最前線を示す10作品が集結した。

 その年のProject PLATEAUで実施したイベントの集大成として行われるPLATEAU AWARD。2025年度も、6月からハンズオンやアイデアソン、ハッカソン等が各地で開催されており、多くの参加者にとってAWARDがひとつのゴールとなっている。4回目の開催となる今回は、学生やエンジニア、クリエイター等による応募総数約50作品の中から一次審査を通過したファイナリスト10チームが最終審査会に臨んだ。各チームの持ち時間は発表5分、質疑応答3分。審査のポイントは次のとおりだ。
・3D都市モデルの活用
・アイデア
・UI/UX/デザイン
・技術力
・実用性

 審査委員長の齋藤精一氏(パノラマティクス 主宰)をはじめ、川田十夢氏(開発者 / AR三兄弟 長男)、千代田まどか:ちょまど氏(マイクロソフト エンジニア)、小林巌生氏(Code for YOKOHAMA 共同代表)、野見山真人氏(Takram デザインエンジニア)、十川優香氏(国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課)の6名が審査に当たった。

左から、齋藤精一氏、川田十夢氏、ちょまど氏

左から、小林巌生氏、野見山真人氏、十川優香氏

 審査の結果、グランプリ、PLATEAU YOUTH賞、イノベーション賞、審査員特別賞、エモーション賞、ビジネス活用賞、UI/UXデザイン賞、パブリック賞が選出された。グランプリには賞金100万円が贈られた。また、最終審査会に登壇した10チームには、それぞれ「ファイナリスト認定証」が贈られた。

 全体の進行は伴野智樹氏(一般社団法人MA 理事)と加茂春菜氏(株式会社ホロラボ Playful Fields Group Lead)が務めた。

左から、伴野智樹氏、加茂春菜氏

グランプリは空飛ぶクルマの課題解決を目指す「VP Studio」

 グランプリを受賞したのは、空飛ぶクルマ(eVTOL)の離着陸場(Vertiport)の設置計画を支援するWebアプリ「VP Studio」だ。

グランプリを受賞したSORAMO 高木氏(右)

 空飛ぶクルマの実運用にはその離着陸場が必要となる。しかし、Vertiportは日本にはまだ4箇所しかないのが現状だと、SORAMO 高木氏は指摘する。Vertiportの設置には、適した土地・建物の検索から安全評価、経路設計、騒音シミュレーションといった様々な工程があり、全体像の把握や関係者間の共有が難しいという課題がある。

 同氏は、GISとシミュレーション、そして生成AIを組み合わせ、従来は個別の専門ツールで行っていたこれらの工程を統合することによって、この課題を解決できないかと「VP Studio」を開発した。

「VP Studio」が搭載する機能は、生成AIを使った適地検索(屋上、土地)、安全シミュレーション、障害物を回避した経路の自動生成、フライト数に応じた騒音のシミュレーション、そして、これらの結果を統合し目的に合わせたレポート生成。自治体へのヒアリングも行い、実運用に向け開発を進めているという。

PLATEAUを活用してVertiport設置に向けた課題解決を図る

シミュレーション結果を統合した評価レポートも生成

評価レポートは多様なステークホルダ間で活用

 今後の展望として、「VP Studio」の基盤となっている「GIS × シミュレーション × 生成AI」のフレームワークを生かし、防災や物流、観光など他領域での活用も視野に入れているという。

「VP Studio」は、審査会で満場一致でグランプリ受賞となったという。審査委員長の齋藤氏は、受賞理由として「空飛ぶクルマの実装には、実際、まだ多くの課題がありますが、これからインフラ作りを含めて、しっかりとやっていかなければなりません。その中で、Vertiportの問題は当然、考えなければいけないことです。VP Studioはそのためのツールとして必要な機能が用意されている、サービスの形が見えているというところを評価して、選ばせていただきました」と述べた。

 SORAMO 高木氏は、「本格的にPLATEAUデータを使い出したのは今年からでした。苦戦はしましたが、もくもく会やハッカソンなどに参加することで、手厚いサポートをいただきました。そこでの助けもあってこその受賞だと思います。将来的に2兆円規模にもなる空飛ぶクルマ市場において、市場拡大の一助になればと考えています」と受賞の喜びを語った。

建物模型制作のための「Paper CAD」が PLATEAU YOUTH賞

PLATEAU YOUTH賞を受賞した宮崎航大氏

「Paper CAD」は、建物模型制作のためのツール。PLATEAUの3D都市モデルから建築物モデルをインポートし、建物模型制作用の展開図(2D)へと自動変換するものだ。

 発表者の宮崎航大氏はジオラマをつくるのが趣味で、街並みの模型をつくりながら、「ここにどのような人たちが暮らし、どんなふうに街が形作られてきたのか」と、その街のストーリーを想像するのが好きなのだという。

宮崎氏の所属する部活動のチームによる渋谷のジオラマ

 宮崎氏は模型作りの中でも建物模型をつくるのが好きで、紙を使って様々な建物をつくってきた。その作り方は、実際の建物を現地に見に行ったり、Google Erathなどで建物を調べたりしてから、展開図に落とし込み、紙に印刷して塗装や切断をして組み立てて制作するのだという。

模型作りのフロー。この中で「2.展開図に落とす」工程を「Paper CAD」が支援

 これらのフローにおいて全体の7割ほどの時間を占め、宮崎氏が「とにかくつらい!」と言うのが、立体構造物の建物を平面の展開図に落とし込む工程。「Paper CAD」はこの工程の作業負荷を大幅に軽減するもので、これにより模型制作のハードルを下げ、初心者でも経験者でも短時間で高精度な街並みの模型を制作できるようにするという。

PLATEAUから建物の3Dモデルをインポートし、展開図を自動で作成する

「Paper CAD」では3Dモデルの面や辺、頂点などの形状を解析してそれらの位置関係を分析。その後、模型にできないような細かすぎる形状は簡略化するなどし、面の向きを元にして2Dに展開するという。細かすぎるパーツをいかに簡略化するかなど、宮崎氏自身の模型制作の経験とノウハウが詰め込まれている。

3Dモデルの形状を解析し細かすぎる部分は簡略化を行って、最適な2D展開図を作成

 審査委員長の齋藤氏は、「賞の名称はPLATEAU YOUTH賞ですが、審査結果としては“準グランプリ”に値する評価でした。ご自身の模型製作の趣味と熱意が高じ、その経験を生かしてツール化されたことが本当に素晴らしい。開発者個人の夢や想いからスタートしたものが、世の中に大きく広がっていく――そうした作品だと思います」と選定理由を説明した。

 宮崎氏は、「模型をつくるために使っていたPLATEAUと、それとは別にいままでやってきたプログラミングがここでつながり、その集大成として賞をいただけたことが大変うれしいです。今後は、模型も制作しながら、PLATEAUにも貢献していけたらと思っています」と語った。

PLATEAUのデータを軽く、カラフルに扱うゲームエンジン「Voxelized Game Engine」がイノベーション賞

イノベーション賞を受賞した武井陽靜氏(右)

「Voxelized Game Engine」は、Webブラウザ上で動作する、軽量でカラフルなゲームエンジンだ。武井陽靜氏は、「データが重い」や「リッチなテクスチャが一部の都市でしかカバーされていない」といったPLATEAUの3D都市モデルデータを活用したコンテンツ制作環境に潜在する課題に着目した。

 そこで武井氏は、東京都23区の都市データをVoxel(ボクセル)形式にレンダリングして配置し、3D都市モデルデータ活用のためのライブラリとして実装した。

 Voxelとは、小さな立方体(サイコロ状の塊)としてデータを表現する形式。ブロックを組み合わせたり積み上げたりする感覚で扱うことができるため、効率的な空間計算処理が可能となる。また、3Dモデルを画像データに変換することで1区画=1画像ファイルとして部分配信するほか、ブラウザのキャッシュを活用することで高速化しているという。

3DモデルをVoxelデータ構造に変換し演算を最適化

画像データとして部分ごとに配信するほかブラウザキャッシュ活用で高速起動

 現状LOD2化されていない地域のテクスチャの課題は航空写真を活用することで対応する。

航空写真の活用で全国に対応

 Webへの融和性に特化すべく、武井氏はこれらを、Web標準の技術をベースにフルスクラッチで開発している。ユースケースとしては、都市計画シミュレーション、建築プロトタイピング、教育コンテンツ、バーチャル体験などを想定する。

 審査員の川田氏は、「“街をマインクラフト化する”というニュアンスの作品と言えるでしょうか。“レベルが違うスゴさ”を感じさせる作品でした。今後どういう用途につなげていくのかが検討課題になると思いますが、個人的には“視覚”に特化した使い方が向いていると思います」とコメントした。

 武井氏は、「プレゼンではPLATEAUのデータの課題をいくつか指摘しましたが、すばらしいプロジェクトだと思います。これからもみんなで活用していけたらと思います」と述べた。

審査員特別賞は、好きな建物を自分だけのオリジナルの花瓶にできる「City Vase」

審査員特別賞を受賞した下野明佳里氏(右)

「City Vase」は、3D都市モデルを使って好きな建物を選びオリジナルの花瓶をデザインし、3Dプリントで出力できるWebアプリだ。まちづくり、特に新しいテクノロジーの導入をするような都市計画では、市民の連携が重要な要素となる。それには、「自分の街を好きになる体験」が不可欠だと、下野明佳里氏は指摘する。

 PLATEAUの3D都市モデルは都市計画や防災といった公的な活用イメージが強い。もちろん、いずれも重要な観点ではあるが、その手前に、街への愛着を促したり、愛情を醸成したりする領域も必要だろう。そこで、下野氏が考えたのが、自分の好きな建物を選び、物理的なモノとして手元に置く体験だ。

建物データを介して都市と個人を結び付ける

 Webブラウザで動作し、表示される3Dマップからビルを選択、出力するモデルを編集する。モデルの編集画面には直感的なUI/UXを採用。誰にでも容易に「失敗しない3Dモデル」が作れるようカスタマイズしたデータを提供する。

3D都市モデルから自由に建物を選択

様々なデザインにカスタマイズできる

 高精細なPLATEAUのデータをもとにして、街中の自分の好きなビルや思い入れのある建築物を花瓶にして手元に置き、日生活の中に飾ることで、街を”手触りとして感じる機会”を提供し、愛着を深めてもらうことができる。現在、友人や知人を中心にユーザーテストを行い、ブラッシュアップを続けている。最終的に、オープンソースで公開し、3Dプリント代行サービスの展開も考えているという。

 審査員の川田 十夢氏は、「無料のオープンデータであるPLATEAUの取組から、現実世界できちんと販売できる商品になるものが生まれてくれたらいいなと思っていたのですが、それが成立しうることを示してくれた作品でした。また、建物の形の花瓶に花を生けるという観点には『都市にもっと緑を』というメッセージも垣間見え、すてきなアイデアです」と選定理由を説明した。

 下野氏は、受賞のコメントとして「自分の専門分野(建築、都市計画)でも、PLATEAUについて十分に知られていないところがあるので、この作品を契機にPLATEAUをもっと知ってもらいたいと思います」と述べた。

エモーション賞は「PLATEAU-2D」、街並みを直感的な2Dで表示する

「PLATEAU-2D」は、PLATEAUの3D都市モデルを自動的に「横から見た2D画像」に変換するツール。2025年9月に開催された「PLATEAU Hack Challenge 2025 in Tokyo」でグランプリおよびオーディエンス賞を受賞した作品でもある。

エモーション賞を受賞した鈴木裕之氏(右)

 本AWARDでは、活用の幅を広げるために、江戸時代の日本橋を描いた『熈代勝覧(きだいしょうらん)』をヒントにして、2Dの街並みを絵巻き風に生成するコンテンツや機能のほか、生成したものを冊子にしたりご当地グッズとして展開したりする今後の展望も紹介した。

『熈代勝覧』は1805年の日本橋の風景(大通りの商い、行き交う人々など)を描いた絵巻。鈴木裕之氏はまさに「街の記録」だとして、この『熈代勝覧』にインスピレーションを受け、「PLATEAU-2D」を使って「現代の熈代勝覧を作れないか」と考えたという。

「PLATEAU-2D」の主機能

 そして、誰もが3分で「街の記録者」になれるとして、参加者が撮影した写真から正面図を作成できる参加型のコンテンツ「PL2D-STUDIO」を開発している。

「PL2D-STUDIO」では、生成した2D画像を編集したり、建物の写真を2Dの正面図に変換し編集したりできる機能を備える

 審査員のちょまど氏は、「とにかく作品がかわいいです。ユーザーが街の記録者になれるところ、また、最終的に出力して物理的な作品に持っていくところにもストーリー性を感じました」と選定理由を述べた。

 鈴木氏は、「ハッカソンに参加して以来、自分もこのツールもPLATEAUコミュニティに育てていただいたと思っています。感謝するとともに、これからもこのプロダクトを発展、展開させていきたい」とコメントした。

ビジネス活用賞は都市分析に関わるデータ収集を支援する「PLATEAU GIS Hub」

ビジネス活用賞を受賞した東京大学大学院の能祖遥一氏(写真中央)と吉田翼氏(写真右)

「PLATEAU GIS Hub」は都市分析に必要な3D都市モデルをはじめとした各種のデータを、必要な分だけ手軽にダウンロードできるようにするサービスだ。

 きっかけは、大学院で都市計画の研究を行っている能祖遥一氏の課題意識にあった。PLATEAUのデータが都市計画の領域で、思いのほか活用されていないという。能祖氏はその原因を、PLATEAUのデータを取得する際に自治体やメッシュ単位で大量にデータをダウンロードしなければならないことが一因ではないかと考えた。

 例えば、ある地域の課題を伝えるために建物地図を作ろうとしたとき、必要なのは非常に狭い範囲の建物データだ。しかし、いざデータを取得してみると、自治体単位の数GBのデータがダウンロードされ、解凍すると大量のフォルダが現れる――。データの扱いに慣れていないひとは、ここでつまずいてしまうことが多いのだという。

「PLATEAU GIS Hub」では必要とする部分のデータを範囲を指定してダウンロードできる

 また都市分析では、PLATEAUの3D都市モデル以外に、国土数値情報や国勢調査などの統計もよく扱われるため、従来はそれぞれのサイトからデータを収拾する必要があった。「PLATEAU GIS Hub」では、こうした関連データもまとめて取得できるようにしている。加えて、3D都市モデルの属性情報を、ダウンロード前に事前確認できるプレビュー機能も備えるなど、PLATEAUを活用するにあたって、”かゆいところに手が届く”ものとなっている。

3D都市モデル以外の国土数値情報など関連データも取得可能

 審査員の小林氏は、「自治体のDX支援の現場では、近年、ポリシーメイキング(政策決定)に必須となるエビデンスやデータ分析が注目されています。これから需要が増す分野にマッチしたツールだと思います。こうした業務に非常に役立つだろうと期待しています」と選定理由を説明した。

 能祖氏は「卒業論文でも修士論文でもPLATEAUを大いに活用してきた中で、さらに今回のAWARDもあり、学生生活の集大成としてこの賞をいただけたようで、とてもうれしい」と語った。吉田氏は「従来PLATEAUの特徴について3D表示にばかり目がいっていたのですが、今回ふたりで開発する中で、PLATEAUに含まれる多様な情報が都市分析にいかに役立つかを知りました。その知見を開発にも生かせました」と受賞の感想を述べた。

ドローン導入の障壁を解決する「GlobeXplore pro」がUI/UXデザイン賞

UI/UXデザイン賞を受賞した株式会社ozora

「GlobeXplore Pro」は、ドローンの社会実装を支援するアプリ。実際にドローン運行事業を手掛ける株式会社ozoraが、ドローン撮影の普及に向けた課題解決の取り組みとして開発した。

 代表の高橋氏は、ドローンの社会実装が進まない要因として、具体的な飛行・運用イメージの共有が難しく、それが関係者間の合意形成の難しさにもつながっていると指摘する。その解消に向けて事前ロケハンを行うにしても、高額な費用がかかることが障壁になっているという。

 そこで「GlobeXplore Pro」では、事前プランニングのためのドローン飛行シミュレーションをPLATEAUの3D都市モデル上で実施。時間帯に応じた太陽の位置、天候の変更、レンズの変更(画角の確認)などの機能を備え、ドローン飛行の詳細なシミュレーションが可能だ。

技術構成と機能の一覧。レンズ・太陽・天候のシミュレーションのほか住所検索機能を備える

UI/UXについては、業界で使われているドローンのコントローラー画面と同様のインターフェースになっているほか、現場で使われるコントローラーにも対応するなど実用的な設計

デモ画面

 審査員の野見山氏は、「ドローン撮影が普及して空撮が一般化していく中で、撮影コストを下げるこうしたツールは今後需要が増えてくる領域だと感じました。開発したご自身たちがドローン撮影に携わっている強みを活かして、自分たちが欲しい機能やUI/UXを凝縮して実装していったところがよかったです」と選定理由を述べた。

 チームを代表して高橋氏は、「このような賞をいただけてうれしいです。私たちはドローンが大好きで、こうしたツールをきっかけに世の中の人たちがドローンをもっと使ってくれたら、ドローンが少しでも普及してくれたら、と思っています。私たちもこの機会をきっかけに、もっと成長していきたいと思います」と述べた。

パブリック賞は救急・消防など緊急車両向けVR緊急走行シミュレータ

 パブリック賞は、兵庫県立大学大学院工学研究科 視覚メディア工学研究グループが2022年から取り組み続けてきた「VR緊急走行シミュレータ研究プロジェクト」が受賞した。このプロジェクトは、VRを利用した緊急車両の走行体験を通じて、緊急車両のドライバー向け走行訓練と一般市民向けの安全教育のモデルを作ろうというもので、研究室の学生たちが数年にわたって引き継ぎ、開発を続けてきたものだ。

パブリック賞を受賞した兵庫県立大学大学院工学研究科 視覚メディア工学研究グループ

 その背景には、緊急車両の交通事故リスクの高さと訓練上の課題がある。緊急車両は赤信号の交差点に進入するため危険度が高い一方で、事故が起きると傷病者の容態悪化や社会的信用失墜につながるなど、その影響は大きい。そのため事故防止に向けた取り組みは増えているが、実際に路上で走行訓練することは不可能で、ビデオ学習や模擬的訓練にとどまっているという。

 また、緊急車両の安全走行には、周辺を走る一般車両が道を譲るといった協力も重要になる。しかし、近年の統計によると、救急車の現場到着までにかかる時間はこの20年で約4分増加しており、その一因として適切な道の譲り方がわからないとの意見もあるという。一般市民向けにも、緊急車両への理解と協力の促進が必要になっている。

 こうした課題の解決に向けて、姫路市消防局の協力のもと、VR緊急走行シミュレータを開発するとともに、フィードバックを受け改善を重ねてきたという。そして今回、PLATEAUの3D都市モデルをベースに、実際の都市を舞台とした緊急車両のVR走行シミュレータを開発。「自分の街」が舞台となることで、より臨場感のある形での走行体験を提供できるようになった。

「自分の街」を舞台に消防士向けトレーニングと一般市民向け安全教育

一般市民向けにはHMDとコントローラーを用い、消防士向けにはハンドルとペダルを用いたシステムで臨場感のあるより実践的なシステムを提供

姫路市防災フェアで一般市民向けに緊急走行体験デモを実施

 審査員の十川 優香氏は、「まず研究テーマとして先輩から後輩に引き継がれてきた数年間の集大成であることがすばらしいと思いました。また、単なるドライブシュミレーターではなく、緊急車両にフォーカスしたところが審査員として気づきになりました。そして、消防士や救命士を支援するだけでなく、一般市民にも理解を広げていくためにPLATEAUを活用いただくことは、国土交通省の政策とも合致するところです」と選定理由を説明した。

 受賞者を代表して兵庫県立大学大学院 工学研究科 電子情報工学専攻 准教授の山添大丈氏は、「まず、これまで研究・開発に携わってくれた学生たちに深く感謝いたします。そして、多大なご協力をいただいた姫路市消防局のみなさまにも感謝を申し上げます。このシミュレータを活用して、今後も取り組みを広げていきたいと思います」と述べた。

QGISを用いた地震災害時の避難障害シミュレーション分析 と iOS対応 PLATEAUビューワ

 惜しくも受賞は逃したものの、ファイナリストとして登壇した2作品を紹介する。

Python・QGISを用いた地震災害時の避難障害シミュレーション分析(Nakamura Yoshiyuki氏)

Nakamura Yoshiyuki氏

 PLATEAUのオープンデータを活用し、予測震度や建築物の立地特性を加味した危険エリアや改善すべき道路を把握することにより、実効性の高い地域防災計画やデータ駆動型の施策立案を目指すというもの。

 たとえば、地震災害時に放置された空き家の倒壊などが周囲に与えるリスクを可視化する。これにより、避難の障害となる状況を予測し、関係者間での情報共有を促進するとともに、改善策の検討を後押しする。

静岡市駿河区の一部を舞台にした300回のシミュレーション結果によると、南側に孤立する建物や閉塞する道路が多いことなどが読み取れるという

 今回は2Dでのシミュレーションだが、今後は3D化し、現実味のあるシミュレーションを目指す予定だ。

iPlateau(StudioAnsh)

StudioAnshの宮西氏

 PLATEAUのデータをダウンロードせずに、iPhone/iPadで表示できるアプリ。アプリの動作としては、PLATEAUのストリーミングAPIを利用し、取得した市区町村コード(JSON形式)からCityGMLファイルをダウンロードし解析。その解析結果をApple MKMapViewに重ねて表示する。iPhone/iPadで地図アプリと同様の操作で使用できる。

「iPlateau」のデモ画面。起動するとマップとともにCityGMLの一覧情報が表示される(左)。ズームインすると詳細な情報を表示。udxフォルダのリストをタップすると見たい情報をマップに重ねて表示できる(右)

 また、「iPlateau」に表示されたデータはJw_cad形式のデータに変換できる。データの状況次第だが、LOD2データが存在すれば、計画建物と隣接する既存建物との調和などの検討も可能だ。iPlateauは、日本国内にて無償で利用可能となる予定。

地図のバリエーションは2D/3Dの標準地図やハイブリッド2D/3Dなど(左)。一般的なテキスト検索だけでなく、メッシュコードの検索やPLATEAU udxフォルダの検索なども可能(右)

より実装ベースに近づいたPLATEAU AWARD 2025

 今回のPLATEAU AWARDは作品の完成度だけではなく、ビジネスへの着地点がより明確に見えてきたという印象だ。最後に、審査委員の全体講評を紹介する。

十川氏:本日は皆様ありがとうございました。毎年感じるのですが、1年の中でもっとも密度の濃い時間でした。たくさんの分野・地域から様々なアイデアが、もはや「サービス」として登場してきていることは、本AWARDがこの数年で大きく進歩したところです。あらためて、今回感じたこととして、様々な課題があったり 、こうしたいという思いがあったり、それらが混沌としている中で、多様なバックグラウンドを持った方々がご自身の専門領域とPLATEAUを生かして難題に挑んでいく。それがPLATEAUのデータが持つポテンシャルの1つかなと思います。PLATEAUチームとしても、今回受賞された皆様、ご発表いただいた皆様と、様々な形で連携していきたいと思います。

十川 優香氏

野見山氏:今日の発表を見て、防災のような公共性の高いテーマから、個人のニッチなニーズに応えるものまで幅があって、非常に楽しかったです。空飛ぶクルマやドローンなど、新しい技術が登場し進化していく中で、これまで思いもつかなかったPLATEAUの価値が新たに発見されるということが起きていると感じました。技術の進歩はますます加速しております。今後も、他の新たな技術と合わさってPLATEAUもどんどん進化していくと思うと、非常に楽しみになりました。

野見山 真人氏

小林氏:PLATEAUはオープンデータとして公開されていますが、やはりこれからの社会では「こうした課題を解決したい」、「何かを実現したい」といった自分の課題意識や思いがまず大事なのだと思います。それを実現するためにデータがある、技術がある、ということだと思います。そして、今、そうした環境が整ってきているということを非常に感じました。これからますますいろいろな技術が発展していく中で、来年、再来年、また楽しみだなと思いました。

小林 巌生氏

ちょまど氏:PLATEAU AWARDは、本当に毎年の私の楽しみになっています。今年もありがとうございました。PLATEAUはすばらしいプロダクトで、それを利用して、皆さんはデジタルとリアルを行き来する、本当にすばらしいクリエイターだと毎年感動しています。今年は、特に「自分が欲しいものを作る」という突き抜けたものから、公共性の高いものまで本当に幅広く、非常に可能性を感じました。引き続き、皆さんのご活躍を応援しています。ありがとうございました。

ちょまど氏

川田氏:今回、クリエイティブ領域の人たちもたくさん応募してくれたこと――何か美しいものを作ろうとか、自己表現のためにPLATEAUを使おうという人たちも応募してくれたことが、僕は非常にうれしいです。そして、うれしいことがもうひとつあります。今回のステージ背景の映像を制作してくれたのは、かつてこのAWARDの応募者だったクリエイター(河野 円)です。このように応募者や参加者からスタッフになり、彼らがまた新しい挑戦者たちを迎え、支えていることがPLATEAUコミュニティのすばらしいところだと思っています。とても感動しました。今後もぜひ、いろいろな方たちに応募してもらいたい。今回もとてもいい刺激を受けました。ありがとうございました。

川田 十夢氏

斎藤氏:まず、今日これほどまでに「PLATEAU(プラトー)」という言葉が浸透していることを、名付け親の一人として大変うれしく思います。この名前は、フランス人哲学者のジル・ドゥルーズと精神分析家フェリックス・ガタリの著作に登場する「Plateau(高原・台地)」という言葉から提案したものでした。精神が互いに接続され、強度を持って持続する場所になってほしいという願いを込めました。当初、「読めないのではないか」という懸念もありましたが、いつか誰もが読める時代が来ると信じていました。いまや各地でこの名前が呼ばれており、まさにPLATEAUがインフラ化してきたのだと感じています。

 今の時代、プロジェクトの成功にはIPとファンダム(コミュニティ)が不可欠だと思います。PLATEAUはすでに強力なIPとなっており、今日この場に集まった皆さんのようなすばらしいコミュニティも存在します。「自分が作りたいから作った」「自分が必要だから作ってGitHubで公開した」といった、この純粋な情熱こそが全体のエンジンになります。皆さんの多様なアイデアが日本のインフラに組み込まれたとき、一気にスケールする。そうできる土壌はすでに整えられています。

 PLATEAU AWARDのすばらしさは、応募作品がすでに社会に出ている、あるいは出る直前の段階にあるという実装の近さにあります。今回惜しくも受賞を逃した方も、UIやサービスの質をさらに磨き上げ、来年また挑戦していただきたいです。PLATEAU AWARDは、1年に1回「現在地」を確認する大切な場所でもあって、最新の技術や新たな視点をここで共有し、刺激し合うことで、コミュニティが持続的に発展していく、そんな場なのです。今年も皆さんの進化を大いに楽しませていただきました。これからも、それが続いていくことを願っています。ありがとうございました。

齋藤 精一氏

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