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“光×コンピューティング”で進める低消費電力化

ついにサーバーの中まで“光”が NTT、IOWN 2.0でブロードコムらと「光電融合スイッチ」投入

2025年10月10日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 NTTが推進する、光技術を軸とした通信・情報通信基盤である「IOWN」。これまで展開してきた「IOWN 1.0」では、データセンター間を光でつなぐことで“距離の問題”を解消してきた。そして、次段階である「IOWN 2.0」では、データセンター内における“消費電力の問題”に取り組む。

 NTTは、2025年10月6日、メディア・投資家を対象に「Toward the Future with IOWN」と題した説明会を開催。IOWN 2.0で打ち出す光コンピューティングの進捗を披露した。米Broadcomらとのパートナーシップのもと、同社の光電融合技術を組み込んだ「光電融合スイッチ」を2026年第4四半期に出荷予定だ。

 NTTの代表取締役社長 社長執行役員 CEOである島田明氏は、「IOWN最大のポイントは、消費電力という社会問題を解決すること。今回の光電融合デバイスはその“本丸”」と語る。

NTT 代表取締役社長 社長執行役員 CEO 島田明氏

IOWNの次の一手は、サーバー内通信の低消費電力化

 IOWNは、大容量・低遅延・低消費電力なネットワーク・情報処理基盤を実現するという構想であり、IOWNを構成する要素技術のひとつに「光電融合デバイス」がある。

 IOWN 1.0では、超高速・低遅延を活かした光ネットワーキングとして「APN(オールフォトニクス・ネットワーク)」の実装を進めてきた。APNの中継装置やデータセンター接続には光電融合デバイス「PEC-1」が適用されている。そして、IOWN 2.0では、低消費電力を実現する光コンピューティングへ実装領域を拡大する。

光電融合デバイスのロードマップ

 背景にあるのは、AIの利用拡大による消費電力の増加だ。AIに欠かせないGPUサーバーの消費電力は、従来サーバーの約5.9倍といわれ、2030年にはデータセンターの消費電力が、2024年の2倍に達すると予測されている。

 NTTはこの課題に、2つの方向からアプローチする。ひとつは、データセンターの分散化だ。電力の余剰がある地方にGPUを分散配置して、インフラ運用を効率化する。もうひとつが、今回のテーマである、光コンピューティングによるインフラの総消費電力の低減である。

 AI利用により処理量・GPU数が増大していくと、サーバー内の通信も大容量化していく。加えて、サーバー内の配線は電子信号を用いているが、処理速度と伝送距離に応じて消費電力が急増し、数cm単位でも大きな影響がある。一方で、光による通信は、処理速度や伝送距離によって消費電力の差が生じないのが特徴だ。そこでIOWN 2.0において提供されるのが、サーバーの中のボード間を光でつなぐ光電融合デバイス「PEC-2」である。

伝送距離に応じた消費電力の差

 既に、IOWN 2.0は、大阪・関西万博にて実証実験が進んでいる。来場者の表情をAIでリアルタイム解析してパビリオンの幕の動きを反映する仕組みを、PEC-2を実装した光コンピューティングで実現し、消費電力を8分の1に抑えているという。

 光電融合デバイスの開発を担う、NTTイノベーティブデバイスの代表取締役副社長 CTOである富澤将人氏は、「光は消費電力を増加させず、周波数(処理速度)にも依存しない。データセンターの中、サーバーの中、そして半導体チップの中まで、光が入る時代がすぐそこまで来ている」と語る。

NTTイノベーティブデバイス 代表取締役副社長 CTO 富澤将人氏

Broadcom・Acctonとの共同で「光電融合スイッチ」 単体の消費電力も50%削減

 このサーバーのボード間をつなぐ光電融合デバイスは、BroadcomやAccton Technologyとパートナーシップにより、「光電融合スイッチ」として市場に投入される。Broadcom製のスイッチASICの周囲に、6.4TbpsのPEC-2を16個配置し、102.4Tbpsの容量を確保。これを、台湾のネットワーク機器ベンダーであるAccton Technologyが光電融合スイッチとしてパッケージ化する。

光電融合スイッチの各プレイヤーの役割

 光電融合スイッチ自体も低消費電力設計をとっている。従来の光通信スイッチでは電気配線の距離が300mm程度あったものを、10分の1まで短縮。スイッチ単体で消費電力の50%削減を実現している。

 独自の「ソケット型」を採用しているのも特徴だ。他社のように直接はんだづけするのではなく、取り外しが可能な構成をとる。「故障してもひとつひとつ取り外しが効き、修理コストを抑えられ、短距離や長距離、波長多重など、さまざまな要求にも柔軟に対応できる」と富澤氏。将来的には、需要の拡大に対応できるよう、マルチベンダー・サプライヤーでのエコシステムを形成することも見据えており、その際にもソケット型であることが優位に働くという。

光電融合スイッチの設計

 光電融合スイッチは、2026年第4四半期に、商用サンプルを市場投入する予定で、1ラインで月5000個の生産体制を確保しつつ、ラインの増設も既に計画しているという。なお、最初のターゲットとなるのは海外ハイパースケーラーであり、コストを最適化する中で国内展開も検討していく。

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