遺伝子“編集”は環境に優しい?食料危機で評価が変わり始めた
最近、食べ物が高すぎない?
最近、米も卵も、コーヒーもチョコレートも、気づけば以前の倍近い値段になった。背景にあるのは、単なる物価高だけではない。
本来、動植物は時間をかけて環境に適応してきた。しかし今は、気温も降水量も病害も、変化があまりに急だ。何世代もかけて起きるはずの適応を待っている余裕はない。
こうした状況のなかで存在感を増しているのが、徳島大学発のバイオスタートアップの株式会社セツロテックだ。
進化の時間を、技術でショートカットする
セツロテックは、動植物の品種改良を支援する「精密育種」の受託サービスを手がけている。ゲノム編集技術を活用し、改良候補を従来よりも短期間で見つけ出せる仕組みを提供している。
ゲノム編集は、一般的に連想される「遺伝子を組み換える」「人工的に作り変える」といったイメージとは少し違う。外部の遺伝子を加えるのではなく、もともと持っている設計図の一部を整える技術だ。例えるなら、原稿を書き換える(遺伝子そのものを編集する)のではなく、危うい表現を正す校閲さんのような存在である。
同社が提供する品種改良サービス「Setsuro Breeding」を支えている技術は大きく2つ。 1つは、ほ乳類の受精卵で高効率なゲノム編集を可能にする「GEEP法(特許6980218号)」や、培養細胞を簡便に改変できる「VIKING法(特許6956995号)」といった特許技術。もう1つが、セツロテックが独自に開発したゲノム編集ツール「ST9.5」である。
これらの技術を使うことで、研究者は「どの性質が環境変化に強いのか」「どんな組み合わせが生き残りやすいのか」を、短期間で幅広く試すことができる。進化の方向を人間が決めるのではなく、選択肢を増やし、自然に選ばせるための下準備を高速化するイメージだ。
おいしいコーヒーとお肉を、これからも
2026年1月にはモンゴルのベンチャーキャピタルなどから資金を調達し、ゲノム編集事業の世界展開に踏み出している。急激な気候変動にさらされる地域ほど、「進化を待つ余裕」はないからだ。
脱炭素や植樹が地球環境そのものを守る取り組みだとすれば、セツロテックの技術は、変わりゆく環境の中で、生きる側を支えるサステナブルな裏方である。おいしいコーヒーやお肉をこれからも手の届く価格で食べ続けられるかは、こうした進化の時間を補う技術にかかっている。



































