ガジェット充電し放題! 車内の電源性能は充実
SEALのもう1つの特徴は、電気自動車らしい大容量のバッテリーを活かし、最大6台のスマホやタブレットを同時充電できる電源供給性能だ。USB Type-CとType-A端子を前席・後席それぞれに1つずつ、計4ポートを備えるほか、Qi規格15Wのワイヤレス充電パッドも搭載。助手席側のType-Cは60W PD対応でノートPCも充電可能だ。
ただし、最新世代車種では50W級ワイヤレス充電や全ポートType-C化、後席含む60W級の高出力対応が一般化しており、この点でもSEALはやや世代差を感じる。車種によってはV2L(Vehicle to Load、EVのバッテリーを外で使う)アダプターを必要とせず、車内に備えたコンセントから電気を取り出せるものもあり、この点でもやや劣る印象は否めない。
走行性能と装備も充実だが
走りを楽しむ要素は薄い
SEALは高い走行性能を持ち合わせる。AWDモデルは0-100km/h加速3.8秒、最高出力527psを誇り、高速道路でも余裕の走行が可能。車重2210kgと重量級ながら、ハンドリングは軽快で日常走行に不満はない。峠道やウェット路面では重さを意識する場面もあったが、総合的な走行性能、クルマとしての安定感は高いと感じた。
内装は価格以上の質感を備え、本革電動シート(メモリー機能付き)、DYNAUDIO監修オーディオ、空気清浄機能、ベンチレーション(シートを冷やす機能)など、価格を超えた装備が標準搭載。
走行面では加減速から停車まで全自動の前車速追従クルーズコントロール、レーンアシスト、緊急ブレーキを備える。このほか、運転席のHUDや全周囲カメラ、幼児置き去り防止検知機能なども装備する。
充電性能も現時点ではCHAdeMO規格で105kWの受け入れに対応。バッテリーに冷却機構を搭載しているため、炎天下でも熱落ちすることなく急速充電ができた。バッテリー容量も82.56kWhと大容量で、電費的に不利なAWD仕様でもWLTC値で575kmの航続距離も魅力。
筆者も実走してみたところ、新潟~大阪間往復の1200kmは休憩ついでに15分程度の急速充電でカバーでき、新潟ー仙台往復の530kmは無充電で走行できたので、航続性能はかなり優秀だ。
一方で、「車を操る楽しさ」といった感覚を刺激する要素はあまり備えていない。SEAL自体がコンフォートセダンに近い側面があることに加え、中国市場では新エネルギー車=自動運転を始めとした機能が求められていることも理由と考える。
中国では人間が運転して楽しい車両よりも、自動運転で安全かつ、快適に移動できる車両のほうが求められている。これは普及価格の車両にとどまらず、電動スーパーカーのYANGWANG(仰望) U9やXiaomi SU7 Ultraのような、驚異的な走行性能を持つ車両も例外ではない。
サーキット走行にも耐える性能を持つクルマでも、「走り」に重要な車両の軽量化よりも、先進運転支援機能のほうが求められているのだ。
【まとめ】中華スマホっぽい圧倒的コスパのBYD製EV
SEALは初回割引で495万円から、補助金を活用すれば地域によっては実質300万円台で購入も狙える。SEALに限らず、日本向けの車両はすべて中国での最上位グレードが投入されているため、性能・装備・質感の総合力は価格以上。そして、車両としてのコストパフォーマンスも良好だ。
スマートフォンに例えると「10万円を超えるGalaxy Sシリーズの性能・機能・質感を、5万円ほどのPOCO F7の価格で手に入れる」感覚だ。まさに高いコストパフォーマンスを得意とする中国メーカーの真骨頂ともいえる1台である。
一方で、ソフトウェアアップデートの提供頻度の少なさ、遅さは否めない。実際、SEALも発売から1年が経過してインフォテイメントのアップデートが1回のみ、車両アップデートは未提供という、スマートカーとしてはソフトウェアアップデートがほとんど行なわれていない状態なのだ。
自動車はスマートフォンと比較したら長いスパンで利用するものだが、インフォテインメント、車両ともに機能改善のアップデートは、中国と同じく半年から1年に1度はしてほしい。
現在、BYDは日本市場にREEVの新型車両ならびに軽EVの投入を予告している。スマートフォン同様に納得の性能、質感を備えつつ、日本の事情に沿ったローカライズされた製品を展開できれば、自然と注目度は高まると考える。
すでに正規ディーラーは全国に50店舗以上、提携整備拠点も拡充させており、日本でも本気でクルマを売りにきているBYD。今後の動向にも目を離せない。

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