近赤外光で水道管など狭い場所の検査に活躍 東京理科大学「Beyond Optical Technologies」
近年、問題になっているのが道路や水道管などのインフラの老朽化。そのため各地で劣化具合の検査が必要となっている。こうした建造物の検査で役立つのが「非破壊検査」と呼ばれる、対象物を壊すことなく内部を解析する方法。この非破壊検査に、医療分野での可視化、解析技術を活用して注目を集めているスタートアップがある。それが東京理科大学発の「Beyond Optical Technologies」だ。
従来よりも小さく、狭い場所でも解析可能にした
「Beyond Optical Technologies」は、東京理科大学の創域理工学部機械航空宇宙工学科に所属する、竹村裕教授の研究を社会で活用することを目指し立ち上げられたスタートアップだ。
竹村教授は、「近赤外」という、生体透過性の高い光を用いた可視化、解析技術を研究しており、同技術を用いた「近赤外ハイパースペクトラルイメージング内視鏡技術」を世界で初めて開発。「Beyond Optical Technologies」では、この技術を産業分野で活用することを目標としている。
「Beyond Optical Technologies」の宮本修代表は、「近赤外光を用いた解析機器は以前から存在していたが、従来の機器は大型なものだった。私たちが開発した機器は小型で持ち運びも可能な点が特徴。近赤外光を用いた高度な解析を、狭い場所でも利用可能にした点は、技術的に見ても唯一無二なもの」と話す。
実際に同社では直径2.5ミリのワイヤー型をはじめ、さまざまな小型の計測装置を開発しており、狭所や1ミリ角の対象物も検査と解析が可能。また、小型でありながらミクロからマクロまで撮影可能となっている。
建造物以外にも食品検査でも活躍
「Beyond Optical Technologies」の技術で「小型化」以外で注目なのが「カラーパターン」だ。
近赤外光を用いて分析をする際、カラー画像を撮影すると通常はRGBの3色のみと、カラーパターンが限られる。
しかし、「Beyond Optical Technologies」では、解析時にさまざまな波長の光を照射することで、1ピクセルと小さな画像の中でもRGB以外のカラーパターンを生み出す。複数のカラーパターンを設けることで、より細かな成分分析ができるようになっているという。
そのため、インフラや車両の劣化診断のほか、食品の成分の可視化・分析(味の分析)といった分野での活用も期待されている。
例えば果物。あらかじめ成分を解析して「おいしい状態(成分)」を記憶させておけば、次から切ったり割ったりすることなく、どれが「おいしいかどうか」を判別することが可能になるだろう。
また、お菓子などの包装内部の検査や、服などの衣類に針など危険なものが残っていないかなど、私たちの身近なものの安全性を高めることにもつながる技術だ。
他にも、検査時の安全性を高めることを目的に、従来はX線を照射して確認していた検査を近赤外光に切り替えるといったことも考えられる。
「近赤外光を用いた非破壊検査」と聞くとピンとこないかもしれないが、食品の安全性や品質、また機器、建設物の安全性を維持するといった、日常生活のあらゆる場所で活躍する技術といえるだろう。
竹村教授によると「今後は非破壊検査の分野はもちろん、従来の用途であった医療分野での活用も実現させたい」とのこと。産業、医療と幅広い分野での活用が期待される技術「近赤外ハイパースペクトラルイメージング」の今後に注目だ。
































