メルマガはこちらから

PAGE
TOP

まだスマホで人流見てるの?“空間そのもの”を可視化する時代が始まってる

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

「この店、いつも空いてるよね?」それ、勘違いかも

 「あのカフェ、いつ行ってもガラガラよ」。ご近所さんの一言を信じて行ってみたら、まさかの大混雑。昼間は静かでも、夕方は学生でぎゅうぎゅう。週末は駐車場に列ができていたりする。人の記憶や口コミなんて、案外あてにならない。

人流データが、都市の“設計図”を変えていく

 目に見えている“にぎわい”と、実際の人の動きにはズレがある。例えば、バスの路線を見直すなら、「乗ってる人」だけじゃなく「乗れずに諦めている人」や「近くを歩いてるけど使っていない人」の存在も考慮したい。

 こうした”見えづらい人の動き”を捉えるために用いられるのが人流データだ。都市計画や商業施設の運営、防災、観光、物流まで、あらゆる分野で使われ始めている。

スマホのログだけでは見えないものがある

 今のところ、人流データの取得方法は、スマホのGPSやWi-Fi、Bluetoothから位置情報を拾う方式が主流。この方式のメリットは、広範囲にざっくり把握できること。スマホを持って歩いているだけでログが取れるから、特別な機器も不要だ。

 でも弱点もある。屋内の細かい動きや、1~2メートル単位の滞留までは見えないし、スマホを持たない子どもや高齢者はカウントされない。何より、プライバシーへの配慮がめちゃくちゃ大変だ。

顔もスマホもいらない、人の“気配”をとらえる技術

 そういった懸念に対応するのが、大阪大学発のスタートアップ・株式会社HULIXだ。スマホを使わず、LiDARセンサーで空間をスキャンし、人を“点の集合”として捉える技術を開発している。顔のプライバシー問題もスマホの有無もクリア。ただ空間の中で「何かが動いている」ことだけを、高精度で追跡する。

HULIXのLiDAR設置シミュレーター

 この技術はすでに、大型商業施設EXPOCITYや物流施設、空港などで実証が始まっている。

「個人情報を持たずに、人の流れを把握したい」――そんなニーズにピッタリはまる、非接触・非個人情報の人流解析として注目されている。

 かつては、イベント会場の出入口で人がカチカチとカウンターを押していた。その後、スマホのGPSやWi-Fiログで自動的に人の動きが取れるようになり、世の中は「データでにぎわいを見る」時代に進んだ。そして今は、空間全体を“光”でスキャンして、人の気配そのものをとらえるところまで来ている。人流データも着実に進化しているのだ。

合わせて読みたい編集者オススメ記事

バックナンバー