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いっこく堂もびっくり? 声が出なくても話せるAI音声変換が登場

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

インフルエンザにかかって、声が出なくなった

 喉が腫れて、まったく音が出ない。病院に電話をかけたくても、声にならない。薬局では説明を聞いてもうなずくしかない。「こんなときに腹話術ができたら」なんて思った。まあ、腹話術も実際は声帯から出てるらしいのだけれども。これが一時的な風邪ではなく、手術や病気で恒久的に声を失ったとしたら、その喪失感は想像を超えるものだろう。

 そんな中、名古屋大学発スタートアップ、株式会社TARVOが開発している技術に出会った。声を失った人が、また“自分の声”で会話できるというのだ。

息の音から“自分の声”を復元するAI

 喉頭がんの手術などで声帯を失った人は、音を出そうとしても、かすれた呼気音しか出せない。TARVOが開発したのは、その「ゴボゴボした音」をリアルタイムで“元の声”に変換する音声AI。VTuber向けのボイスチェンジャーのように、誰かの声に変えるのではなく、自分の声を“取り戻す”技術だ。手術前に録音しておいた本人の声を学習し、それをAIが再現する。

発声障害者向けに自己音声再獲得を支援

 実際のデモは衝撃的だった。呼気音が自然な声に変わり、その人らしいリズムや息づかいがしっかりと再現される。これは単に話す手段ではなく、「自分を取り戻す」手段なのだ。

 YouTubeでは、喉頭摘出手術を受けた患者さんがリアルタイム音声変換技術を使って会話する様子が公開されている。ぜひご覧いただきたい。

遊びだけじゃない。声が人の尊厳を守る

 現在は「Save the Voice」というプロジェクト名で、名古屋大学医学部との共同研究も進行中。本人の尊厳を守るための技術として、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の支援を受けるほか、クラウドファンディングも行っている。

 このほかTARVOは、リアルタイムで声を変えるボイスチェンジャー「SuaraLive」や、講義動画の自動字幕生成など、声にまつわるAI事業を幅広く展開中だ。

低遅延ボイスチェンジャー「SuaraLive」

 TARVOの話を聞いて、「ボイスチェンジャーって、ただのネタじゃないんだな」と思った。面白がって遊ぶボイスチェンジャーから、声を取り戻すためのツールへ。声をデザインする技術は、自分の声を好きになる未来にもつながっているんだなぁ。

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