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本当に意味あるの?企業が抱える“SDGsのジレンマ”

サステナビリティは経営判断として“本当にプラス”になるのか?

連載
羽山友治の【新規事業が動く思考スイッチ】

著者紹介●羽山 友治(はやま・ともはる)
スイス・ビジネス・ハブ 投資促進部 イノベーション・アドバイザー。10年以上にわたり、世界中のオープンイノベーションの研究論文を精査し、体系化。戦略策定・現場・仲介それぞれの立場での経験を持つ。著書に『オープンイノベーション担当者が最初に読む本:外部を活用して成果を生み出すための手引きと実践ガイド』がある。

「うちも何か始める?」が現実に迫ってきた

 近年、社内で「SDGs対応」「サステナビリティ戦略」といった言葉を聞く機会が増えていないだろうか。もしくは、「うちもそろそろ何か始めた方がいいのでは?」と上司に言われたことがある人もいるかもしれない。

 サステナビリティの話は、大企業のCSRや先進的なスタートアップの取り組みだけでなく、地方の中小企業や自治体にとっても無関係ではなくなってきている。今後、新しい事業や外部との協業を考えるうえでも、「持続可能性」は避けて通れないテーマになりつつある。

みんながSDGsに取り組む理由

 SDGsは、2015年に国連で採択された「よりよい未来をつくるための目標」で、貧困や気候変動、ジェンダー平等など、17の大きなゴールが設定されている。

 企業がこれに取り組む理由はさまざまだ。もちろん「社会のために」という思いもあるが、それだけではない。金融機関や投資家からのプレッシャー、社員の意識変化、新たな取引先の獲得など、実利面も大きい。最近では「SDGsに対応していること」がビジネスの条件になる場面すら増えている。

でも、やった方が本当に得なのか?

 ここで気になるのは、「本当に効果があるのか?」という点だ。

 ある海外の研究では、「SDGsに熱心な企業よりも、あまり力を入れていない企業の方が利益率が高かった」という結果もある。別の調査では、環境に配慮した取り組み(エコイノベーション)は企業の業績にもプラスになるという声もあるが、業種や国、会社の規模によってバラつきがあるようだ。

 つまり、「SDGsに取り組めば儲かる」という単純な話ではない。

どのゴールに取り組むかで違いが出る

 SDGsには17ものゴールがあるが、どれに取り組むかで効果も違ってくる。例えば、「働きがい」「つくる責任 つかう責任」「気候変動」などは、業績向上につながる可能性が高いとされる。一方、「貧困」や「教育」といった社会課題は、取り組むのにコストがかかり、すぐに目に見える成果が出にくい傾向にあるだろう。

 何でもかんでもやればいいわけではなく、自社の方針や事業内容に合ったテーマを見極めることが大切だ。

SDGsは「正解」より「相性」が大事

 SDGsをやるべきかどうか。その答えは会社によって違ってくる。「これが正解」という型はなく、自社の文化や社員の意識、地域との関係性などをふまえた判断が求められる。

 例えば、あるビールメーカーは、外部のベンチャー・スタートアップ企業と組んで生分解性のボトルを開発している。このように、オープンイノベーション──つまり、外と組む力──が活きる場面も増えている。

 やるなら「何のために、誰と、どうやって取り組むか」を考えるところから始めたい。


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