「飲めるかどうか」は生まれつき。“肝臓スペック”を見える化する遺伝子検査キット
サヨナラ、飲みニケーション
私はアルコールが苦手だ。過去にはお酒を断って空気を悪くしてしまったこともあったが、最近は飲みニケーションも下火になり、「練習すると飲める」とか「いいお酒は酔わないから」という他人の謎理論でゴリ押しされることのない平和な時代になった。多様性万歳だ。
“飲酒離れ”でも、依然とリスクはある
そんな若者の“飲酒離れ”が進んでいるとされる一方で、飲みやすくて度数の高いカクテルや缶チューハイの影響で、急性アルコール中毒や飲酒運転による事故が後を絶たない。実はこうした問題の背景には、「アルコールをどれだけ分解できるか」という体質の違いがある。
「気合」ではどうにもならない、お酒と体質の関係
お酒に強いかどうかは、本人の気合いや練習ではなく、体内の酵素の性能でほぼ決まっている。ポイントとなるのは、「ADH1B」（アルコール脱水素酵素）と「ALDH2」（2型アルデヒド脱水素酵素）という2つの酵素だ。前者はアルコールをアセトアルデヒドに分解する速度、後者はその有害なアセトアルデヒドを無毒化する速度を左右する。日本人の約4割はこのALDH2の働きが弱く、お酒が体内に残りやすい体質だとされている。
アルコール分解の仕組み。ADH1Bによってアセトアルデヒドに分解され、次にALDH2によって無毒な酢酸に分解される
遺伝子チェックで「酔い方の個性」がわかる
こうした体質差は遺伝子での違いがあるが、そのレベルも可視化される時代になっている。大阪大学発のバイオベンチャー、株式会社ビズジーンはこの判定キットを提供している。使用方法はシンプルで、唾液を採取して送るだけ。数日後にはスマホに結果が届き、自分が「飲んでも平気」なタイプか、「酔いやすくて残りやすい」タイプかが一目でわかる。つまり、自分専用の“飲み方マニュアル”が手に入るようなものだ。
ビズジーンの「アルコール分解型判定キット」。Amazon等で購入できる
遺伝子検査は一生に一度でOK。練習しても強くはならないのだ
お酒は文化であり、楽しみでもあるが、酔い方・抜け方には個人差がある。そして、その差は、努力や慣れでは埋まらない“遺伝的な個性”で決まっている。自分の肝臓スペックを知らずに飲むのは、RPGでステータスを見ずに戦うようなもの。お酒をもっと楽しむためにも、一度チェックしてみてはいかがだろうか。
