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UX最強の紙を、運用そのままデジタルへ LINE WORKS DAY 2025基調講演レポート

業務課題のラスボス「紙」に向き合うOCR+AIエージェント「LINE WORKS PaperOn」

2025年06月11日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 「紙は、善か悪か?」。紙の運用を変えずに、デジタル化を実現するLINE WORKSの新サービス「LINE WORKS PaperOn」が登場した背景には、かつて最強のUXを誇った「紙」がいまだに残る業務プロセスに課題があった。現場の業務にこだわるLINE WORKSの現在地と、業務課題のラスボス「紙」の課題に向き合う新サービスを、2025年6月10日に開催された「LINE WORKS DAY 2025」の基調講演からひもとく。

創業10周年を迎えたLINE WORKS AIを基盤にしたマルチプロダクトカンパニーへ

 ビジネスチャット「LINE WORKS」を展開するLINE WORKSの年次イベント「LINE WORKS DAY 2025」。基調講演に登壇したLINE WORKS代表取締役社長の島岡岳史氏は、まず創業10周年を迎えたLINE WORKSの10年を振り返る。

LINE WORKS代表取締役社長 島岡岳史氏

 2015年6月に「WORKS MOBILE JAPAN」として設立され、製品名も「WORKS MOBILE」だったLINE WORKS。2017年にはサービス名をLINE WORKSに変え、2020年には導入企業10万社を突破し、2021年にはARR(年間経常収益)も100億円を達成している。ビジネスチャットのLINE WORKSは今年1月時点で52万社、ユーザー数は520万ユーザーを突破。国内のビジネスチャットの市場で、高いシェアを誇っている。

 大きな転機になったのは、2023年のLINEのAI事業・LINE CLOVAの統合だ。長らくビジネスチャットのLINE WORKSのみで戦ってきた同社だが、2024年1月には社名をLINE WORKSに改め、マルチプロダクト化を進めている。

マルチプロダクト化が進むLINE WORKS

 現在LINE WORKSが展開するのは6製品。看板プロダクトであるLINE WORKSに加え、LINE AIから引き継いだAIコンタクトセンター向けの「LINE WORKS AI Call」、OCRサービスの「LINE WORKS OCRサービス」、画像認識サービスの「LINE WORKS Vision」などのAIサービスが提供されている。

 昨年は「CLOVA Note β」として展開していたAI議事録アプリを「LINE WORKS AiNote」にリブランディングし、2025年4月には有償版も提供された。CLOVA Note βの登録者数は100万人を超えていたが、LINE WORKS AiNoteの導入社数も10万社を突破しているという。現在はワンクリックでのAI要約や、Microsoft TeamsやZoomなどWeb会議サービスとの連携機能も追加されている。

 そして、今年の2月には「LINE WORKS ラジャー」を市場に投入している。音声の文字起こし、テキストの音声化などをAIで実現するトランシーバーアプリで、もちろんLINE WORKSとも連携する。介護、建設現場、小売などの現場で導入が加速しており、リリースから半年経たない現在だが、すでに1700社が導入を決めているという。

「中小企業向け」「AIは本気?」「しょせんビジネスチャット」の声に応える

 講演中、島岡氏はユーザーからの声を元に、LINE WORKSのさまざまな誤解を解きほぐす。たとえば、「LINE WORKSって中小企業向けでしょ?」というコメントに対しては、実は1/3が大手企業であることをアピール。特に金融や不動産は、LINEとLINE WORKSとの連携機能を用いて、営業マンが個人ユーザーとの営業チャネルをして利用されることが多い。規模に関係なく共通しているのは「現場での利用」と「ITリテラシが低くても使える」という点。「教育なしに利用できる。現場最前線の方に使ってもらっている」と島岡氏は語る。

 また、「AIをどこまで本気でやるの?」という疑問に関しては、CLOVAをリリースした2017年から蓄積してきた実績をアピールした。約8年間の研究では音声認識や自然言語処理、画像・文字認識などの技術資産、実サービスの実装と運用を通じて得たAI開発の手法、そして特定領域における高度なアルゴリズムやチューニングなどの知見を資産として蓄積してきた。これを実現してきたのが、3000~4000人と言われるAIエンジニアで、音声・言語処理の国際会議での論文採択や認識技術の受賞などの輝かしい成果も達成している。

 さらに「LINE WORKSはしょせんビジネスチャット。DX用のツールではない」という声については、LINE WORKSが現場のAI業務端末として利用されてきている点、既存システムとの連携可能な点について解説。トーク画面から呼び出せるミニアプリから業務の情報入力端末として利用できる点のほか、既存のCRMシステムと連携したトヨタディーラー向けの「トヨトーク」、LINE公式アカウントとLINE WORKSの情報を統合し、成約率10倍の見込み客を可視化した日本生命などの事例も披露した。

 「いろんな製品を出しながら、成長してきた」と語る島岡氏。ビジネスチャットを中心としたコミュニケーション基盤からシフトし、まだまだアナログの多い現場をデジタルし、価値を提供するプラットフォームの会社へと成長していくという。その上で「お仕事の現場をデジタルで支えていきたい。現場ではまだまだアナログ業務が多い」と語り、新サービスを紹介する執行役員CPOの大竹哲史氏にバトンをつないだ。

フロントラインのデジタル化を推進するLINE WORKSの方向性

紙の運用を変えない 気の利くAI OCR「LINE WORKS PaperOn」

 LINE WORKSがこだわる現場のデジタル化。ここでの課題は、長らく業務フローに組み込まれている紙の存在だ。果たして「紙は、善か悪か」。新サービス投入の背景となる紙の功罪について大竹氏は聴衆に問いかける。

LINE WORKS 執行役員CPO 大竹哲史氏

 「誰でも使える」「すぐに書ける・見られる」「インフラが不要」など、「かつての紙は『最強のUX』だった」と大竹氏は指摘する。しかし、誰しもがスマホを持ち、ネットワークでつながる時代となり、紙は時代錯誤になってきた。せっかくPCで申請書を作っても、印刷し、捺印し、回覧しなければならず、コロナ禍においては「紙のために出社」という煩雑さが問題となった。また、加工や活用にも手間がかかる。チェックして、転記して集計するにも、検索するにも、紙は大きなハンデを抱える。

 こうした現状を分析した大竹氏は、紙の善悪について「UIとしては善、業務プロセスには悪なのではないか」と持論を披露する。使い慣れ、業務プロセスに固着する紙の価値を壊さず、物理的な紙の制約から解放する。これを実現するのが、新サービスである「LINE WORKS PaperOn」になる。

 LINE WORKS PaperOnの発端は、「ペーパーレスって企業に優しくないと思うんですよね」という一人の社員の一言だった。確かにペーパーレスを実現するためにはデバイスを導入し、WiFiを整備し、既存システムの大幅改修が必要になる。こうして苦労して構築されたペーパーレスのシステムが現場に受け入れられず、「紙の方がよかった」と言われることも多い。紙の運用をそのまま残し、手軽にデジタル化できるのがLINE WORKS PaperOnだ。

新サービスのLINE WORKS PaperOn

 LINE WORKS PaperOnは、業務に特化したAI OCRと言えるサービスだ。紙の注文書を撮影し、画像をPaperOnにアップロードするだけで、データ化と自動修正・変換などが行なわれる。あとは担当者が内容を確認すれば、業務システムやLINE WORKS Driveへのアップロードが可能になる。1枚あたり約10分かかる注文を1200枚行なうと、月に200時間かかる計算だが、LINE WORKS PaperOnを利用すると、78%減の45時間で済むという。

 LINE WORKS PaperOnが既存のOCRと異なるのは、人でないと判断が難しかったイレギュラーな文字入力まで自動処理してくれる点だ。たとえば、帳票フォーマットから逸脱した「先週追加発注した商品を同量お願いします」といった入力箇所を読み取ると、過去の処理履歴、商品マスターを元に注文データ化してくれる。また、「できる限り、6/12に配送してください」といった顧客の追記を読み取った場合は、追記を考慮した納品日を設定してくれる。

イレギュラーな文字入力まで自動処理するのが特徴

 LINE WORKS PaperOnは、業務で必要な変換を先取りしてやってくれる「気の利くOCR」とも呼べるし、紙の申請書に特化したAIエージェントアプリとも言える。「いつもの紙を、いつものLINE WORKSで、はやく、正確に。」を謳うLINE WORKS PaperOnだが、まずは2025年秋に請求書・領収書・注文書などの会計分野をカバーし、2026年には作業日報や検査記録などの紙書類にも最適化させていく予定となっている。

 最後、舞台に戻った島岡氏は、4月にオープンしたばかりの渋谷オフィス、10年目を迎えて、新たに作り直したミッション、ビジョン、バリューを紹介。新しいLINE WORKSの姿をアピールするとともに、「人に優しいテクノロジーの提供」という変わらぬこだわりを披露。「シンプルでわかりやすいから、活用しやすい。でも、これは高い技術はなければ実現できない。ここにはとことんこだわっていきたい」とアピールし、基調講演を終えた。

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