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COMPUTEX TAIPEI 2025レポート 第2回

NVIDIAがデータセンターを「AI工場」として再定義、将来的に数兆ドル規模に達すると予測 COMPUTEX2025基調講演

2025年05月20日 00時50分更新

文● 中山 智 編集●北村/ASCII

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 5月19日、COMPUTEX 2025の基調講演にてNVIDIAのCEO ジェンスン・ファンが登壇。AIとロボティクスが牽引する新たな産業時代の到来を強調し、台湾のパートナー企業や友人に30年以上支えられてきた歴史に触れつつ、NVIDIAがチップ企業からコンピューティングプラットフォーム、そしてシステム、最終的には「AI工場」とAIインフラストラクチャ産業の中核へと進化してきた軌跡を語った。

NVIDIA ジェンスン・ファンCEO

データセンターを「AI工場」として再定義

 ファン氏は、現代のコンピューターは単体のPCやサーバーではなく、データセンター全体がひとつのコンピューティングユニットとして機能するという認識を示した。特にAIアプリケーションは、多数のプロセッサーが連携して動作し、膨大なクエリに対応するため、データセンターのアーキテクチャが根本的に変わると述べている。従来のネットワークに加え、コンピューター同士が相互に通信するネットワークの重要性が増加するとのこと。

 これらのAIデータセンターは、エネルギーを投入してトークンという非常に価値のあるものを生産する「AI工場」であると再定義。企業が四半期ごとや月ごとに生産したトークン数を議論するようになり、間もなく時間ごとの生産量で語られるようになるだろうと予測した。このAI工場とAIインフラストラクチャー産業は、将来的に数兆ドル規模に達する可能性を秘めている。

BlackwellアーキテクチャーとNVLinkによる大規模システム

 AI工場の中核を担うのは、最新のBlackwellアーキテクチャーに基づいたコンピューティングシステムである。Grace Blackwell GB300システムは、前世代のアーキテクチャーと同じ物理的なフットプリントと電気/機械的特性を持ちながら、推論性能は1.5倍、HBMメモリー容量は1.5倍、ネットワーキング性能は2倍に向上した。一つのGB300ノード(40ペタフロップス)は、2018年のSierraスーパーコンピューター(18,000基のVolta GPUを使用)全体に匹敵する性能を持ち、6年間で4000倍の性能向上を実現した。

 NVIDIAはAIにおいて、10年ごとに約100万倍のコンピューティング性能向上を目標としており、現在もその軌道に乗っている。チップ自体の速度向上や大型化には限界があるため、Blackwellでは2つのチップを接続する技術を採用し、TSMCと協力して新しいCo-ASLプロセスを開発した。

 さらに大規模なシステムを構築するために、「NVLink」と呼ばれる高速スイッチング技術が開発された。NVLinkスイッチは7.2テラバイト/秒の帯域幅を持ち、9つのスイッチが「NVLink Spine」と呼ばれるシステムで接続され、その帯域幅は130テラバイト/秒に達する。これはインターネット全体のピークトラフィック(900テラビット/秒)よりも多くのトラフィックを処理できる。

 NVLink Spineは、72基のGPUすべてを相互に接続し、すべてのGPUが同時に他のすべてのGPUと通信することを可能にする。電気信号の伝送距離に限界があるため、これらのコンポーネントは1つのラック(120キロワットの電力消費)に統合され、液体冷却が必須。これにより、GPUを1つのマザーボードからラック全体に分散させ、ラック全体を1つのマザーボードのように扱うことが可能になった。

 これらの巨大なシステムは、CoreWeave、Oracle Cloud、xAI Colossus、StargateといったAI工場に導入されている。Stargate工場は400万平方フィート、1ギガワットの規模であり、その建設には600億ドルから800億ドルがかかり、コンピューティング部分は400億ドルから500億ドルを占める。

 台湾のエコシステムへの貢献として、NVIDIAはFoxconn、台湾政府、TSMCと協力し、台湾に最初の巨大AIスーパーコンピューターを建設すると発表した。これは台湾のAIインフラストラクチャーとエコシステムを強化することを目的としている。TSMC、Foxconn、Wistron、Pegatron、Delta Electronics、Quanta、Wiiwin、Gigabyteなど、多数の台湾企業がNVIDIAのパートナーとして、これらのシステムの開発と構築に貢献している。

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