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COMPUTEX TAIPEI 2025レポート 第31回

次世代ラックスケールシステム「Kyber」を2027年に出荷予定 NVIDIAのエンタープライズ戦略

2025年05月23日 11時00分更新

文● 中山 智 編集●北村/ASCII

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 NVIDIAはCOMPUTEX 2025にあわせ、GTC Taipeiを開催。エンタープライズ向けテクノロジーのデモショーケースを報道関係者などに向けて公開した。

 展示内容は、AIインフラストラクチャーからエッジデバイス、Physical AI、デジタルツイン、そして開発・運用を支えるクラウドプラットフォームまで、多岐にわたるソリューションを紹介。データセンター規模から手元のデスクに至るまで、AI開発・活用のためのエンドツーエンドの環境提供を目指す姿勢を示した。

データセンター向けAIインフラストラクチャーを強化
次世代ラックスケールシステム「Kyber」を2027年に出荷

 データセンター向けAIインフラの中核として、最新のBlackwellアーキテクチャーに基づくシステムが展示された。空冷式のHGX B300や、水冷式のラックマウントシステムGB300 NVL72が紹介された。GB300 NVL72はNVLink Switchと、Blackwell Ultra GPUを採用した水冷式のラックスケールデザインを特徴としている。ラックあたり72基のGPU、36個のArmベースのNVIDIA Grace CPUを搭載することで、大規模なAI計算能力を効率的に集積できる。

 また、コンピューティングの選択肢として、1台のサーバーに8つのRTX PRO 6000 Blackwell Server Editionを搭載したサーバーも展示された。この構成は、大規模なAIトレーニングからファインチューニング、デジタルツインのシミュレーション、さらにはグラフィックス処理まで、幅広い用途に対応可能。顧客のニーズや既存のコンピューティング基盤に応じてさまざまな構成を取れ、使用するソフトウェアは共通のため、小さく始めて大きく拡張することも可能であると説明された。

 さらに、ラックスケールシステムの次世代として「Kyber」が2027年に登場する予定。現行の「Oberon」に続くもので、より高密度で電力効率の高いシステムとなる見込み。これはRubin Ultra世代に相当するという。

 データセンターにおけるネットワーキングも重要な要素として展示された。NVIDIAはイーサネットおよびInfiniBandのスイッチを開発しており、その内部で動作するASICも開発している。最新のモデルでは、光ケーブルをGPUに直接装着できるようにすることで電力効率を高めているという。

エッジおよびデスクトップ環境でのAI活用

 手元の環境でBlackwellアーキテクチャーの性能を利用可能にするソリューションも示された。「パーソナルAIスーパーコンピューター」と銘打たれた「DGX Spark」は、デスクトップに置ける非常に小さな筐体サイズでありながら、1ペタ(1千兆)フロップスの性能を発揮。これにより、大規模なAIモデルも小型フォームファクターで動作可能になる。3月のGTCで発表され、今回のCOMPUTEXでは参加パートナーの拡充が発表された。NVLinkで複数台を接続し、より大きなステーションとして利用することもできる。

 さらに強力なワークステーションとして、「DGX Station」が紹介された。ワークステーション筐体の中にGrace CPUとBlackwell Ultra GPUを搭載し、20ペタフロップスを発揮。これにより、より大規模なシステムを手元のデスクで利用できるようになる。DGX StationはNVIDIAブランドでの直接販売はなく、Supermicroなどのパートナーメーカーから提供される。

 これら製品の大きな特徴は、データセンター向けのシステムと共通のOSおよびソフトウェアが動作すること。これにより、手元で開発したAIモデルをクラウドで大規模に展開したり、クラウド上でトレーニングしたモデルをそのまま手元のDGXで動かしたりといった、シームレスな連携が可能となる。

 次世代のエッジおよびロボティクス向けコンピューティングプラットフォームとして、新しいJetson AGXを搭載したモジュールが展示された。データセンターの加速空間上でしっかりとトレーニングしたAIモデルを、このエッジデバイスに実際に搭載して動作できる。豊富なインターフェースを備え、さまざまな用途の開発に対応できるとしている。これは、データセンターからエッジまでのハードウェアおよびソフトウェアを、Physical AIの実現に向けて構築・提供するというNVIDIAの戦略の一環である。

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