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「吸い取って資源化」ゼロエミッション技術が実用レベルに進化していた件

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

“ゼロの魔法”にお世話になる日々

 ゼロカロリーのコーラにゼロ糖質のスイーツ。腹回りが気になる年頃としては「ありがとう、科学……」と手を合わせたくなる毎日だ。「うまい」「太らない」「罪悪感もない」。もはや“ゼロ”という言葉には、ちょっとした魔法がある。

カーボンゼロの魔法も編み出されている

 そんな“ゼロの魔法”が、地球にも求められている。日本は2050年までに温室効果ガスの「カーボン・ゼロ(実質排出ゼロ)」を目指している。とはいえ、私たちがいくらがんばっても、CO₂の排出を完全にゼロにするのは難しい。だから今、「出してしまったぶんを、あとから回収しよう」という動き、いわゆる“ネガティブエミッション技術”が注目されている。

工場の排気を吸い取って炭素を回収する2つの装置

 九州大学発のスタートアップ株式会社JCCLは、まさにその回収技術を社会実装しようとしている。彼らが開発しているのは、CO₂を効率よく“吸い取る”装置「CO₂回収装置(VPSA1)」と「膜分離性能評価装置(VSS1)」。この2つを組み合わせることで、工場の排気などからCO₂を分離・回収できる。すでに月額リースでの提供も始まっており、「ちょっと試してみようか」が可能になっている。

減圧蒸気スイング型CO₂回収装置(VPSA1)

減圧蒸気スイープ型膜分離性能評価装置(VSS1)

 「でも、そんなの大企業だけの話でしょ?」と思うかもしれない。実際、現状では発電所や製鉄所といった大型排出源での導入が想定されているが、将来的には小規模施設でも活用できるよう、装置のコンパクト化やコスト削減も進められているという。「空気清浄機みたいに、家庭用CO₂回収マシンが出たらいいな」と、つい妄想してしまう。

“吸い取る技術”はいずれ当たり前になる

 ちなみに、環境省によれば、日本のCO₂排出量は2022年度で約10億85000万トン。ここから実質ゼロを目指すには、“吸い取る技術”の普及は避けて通れない道だ。

 食べすぎても帳消しにしてくれるゼロカロリー商品につい甘えてしまうように、地球にも「出しすぎた分をリカバリーできる技術」が必要だ。その一手として、大学発のCO₂回収技術の未来も意外とおいしいかもしれない。

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