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GeFore RTX 50シリーズまとめ 第6回

RTX 4080 SUPERやRadeon RX 7900 XTXには勝てるのだけど……

GeForce RTX 5080、RTX 4090に下剋上ならず

2025年01月29日 23時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトライッペイ/ASCII

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RTX 40/50シリーズの上位モデルやハイエンドRadeonと比較

 今回の検証環境を紹介しよう。RTX 5090レビュー時からほとんど時間が経過していないため、RTX 5090とRTX 4090の検証結果をそのまま継承し、新たにRTX 5080とRTX 4080 SUPERを追加した。さらに、ライバルである「Radeon RX 7900 XTX」(以下、RX 7900 XTX)も加え、合計5つのGPUで実力を比較した。それ以外はRTX 5090レビューとまったく同じ環境でテストしている。

 消費電力のデータをHWBusters「Pownetics v2」で計測する関係で、PCI Express x16にライザーカードを装着する必要があるが、そのためにPCI Express x16スロットのリンク速度はPCI Express Gen 5ではなくGen 4に固定している。ただし、RTX 5090をPCI Express Gen 4で動かしても性能低下は最大でも2%程度だったので、今回すべてのデータはGen 4環境で取得している。

 ドライバーはRTX 5080とRTX 4080 SUPERがGameReady 572.02 (WQHL)。前回の検証データを流用しているRTX 5090とRTX 4090に関しては、GameReady 571.86を使用している(ざっと動かしてみた限り、前回のドライバーから全体的な性能の出方に変化はないようだ)。RX 7900 XTXについては、Adrenalin 24.12.1を適用している。

 Resiazble BARやSecure Boot、メモリー整合性やHDRなどはひと通り有効化、ディスプレーのリフレッシュレートは144Hzに設定した。

検証環境
CPU AMD「Ryzen 7 9800X3D」 (8コア/16スレッド、最大5.2GHz)
CPU
クーラー
EKWB「EK-Nucleus AIO CR360 Lux D-RGB」
(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザー
ボード
ASRock「X870E Taichi」(AMD X870E、BIOS 3.16)
メモリー Crucial「Crucial Pro CP2K16G56C46U5」(16GB×2、DDR5-5600)
ビデオ
カード
NVIDIA「GeForce RTX 5090 Founders Edition」(32GB GDDR7)、
NVIDIA「GeForce RTX 5080 Founders Edition」(16GB GDDR7)、
NVIDIA「GeForce RTX 4090 Founders Edition」(32GB GDDR6X)、
NVIDIA「GeForce RTX 4080 SUPER Founders Edition」(16GB GDDR6X)、
AMD「Radeon RX 7900 XTXリファレンスカード」(24GB GDDR6)
ストレージ Crucial「T700 CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0)、
Silicon Power「PCIe Gen 4x4 US75 SP04KGBP44US7505」(4TB M.2 SSD、PCIe 4.0)
電源
ユニット
ASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(24H2)

RTX 5090から11~41%下の性能

 まずは「3DMark」のスコアー比べから。前述の通り、RTX 5090もRTX 5080もPCI Express Gen 4で動かしている。

GeForce RTX 5080、RTX 4090に下剋上ならず

3DMark:ラスタライズ系テストのスコアー

GeForce RTX 5080、RTX 4090に下剋上ならず

3DMark:レイトレーシング系テストのスコアー

 RTX 5080はRTX 5090に対して、最少で11%落ち(Fire Strike)、最大41%落ち(Steel Nomad)という結果になった。レイトレーシングを使わないSteel Nomadでも40%以上の差がつくという事実は強烈だが、これはそれだけRTX 5090が“常軌を逸したモンスターGPU”であることを示している。

 一方で、従来のGPUと比較すると、RTX 4080 SUPERに対しては10%〜20%程度のマイルドな伸び幅にとどまった。かつてRTX 4080が登場した時は、前世代のフラッグシップであるRTX 3090 Tiを軽くヒネってしまったことで、自作PC界隈に衝撃を与えた(当時の記事)。

 しかし、今回のRTX 5080ではそういった逆転劇はなかった。RTX 30シリーズからRTX 40シリーズは、内部構造の劇的な変化(特に巨大なL2キャッシュの採用)がこの下剋上をもたらした。だが、RTX 40シリーズからRTX 50シリーズはAIの強化が主軸であり、CUDAコア数から見てもRTX 4090のほうが上(16384基対10752基)であるため、RTX 4090を上回ることは到底できない。

 RTX 4080 SUPERに対しても、GDDR7の採用によるメモリー帯域の上昇や、クロック上昇がスコアー向上の原動力だ。そのため、スコアーの向上率は地味である。RTX 5080はVRAMこそ少ないがRTX 4090を超えられるかも……と期待していた人(筆者を含む)にはとても残念なニュースだ。

消費電力はRTX 5090よりもだいぶ控えめ

 今回もPownetics v2を利用し、各電源ケーブルやPCI Express x16スロットを流れる消費電力を直接計測する。テストは3DMarkのSteel Nomadを実行し、その最中のPC全体の消費電力およびビデオカード単体の消費電力(Total Board Power)を計測した。

 グラフでは高負荷時のデータを3つ掲載しているが、これは平均・99パーセンタイル点・最大値を示している。また、アイドル時の消費電力は、文字通りアイドル状態で3分間放置した時の平均値だけを比較している。

GeForce RTX 5080、RTX 4090に下剋上ならず

システム全体の消費電力:ATXメインパワーとEPS12V×2、PCI Express x16スロット、ビデオカードの補助電源ケーブル、それぞれに流れた電力の実測値から算出した

GeForce RTX 5080、RTX 4090に下剋上ならず

ビデオカード単体の消費電力:前掲の消費電力データから、PCI Express x16スロットとビデオカードの補助電源ケーブルの消費電力だけに注目した値

 RTX 5090の消費電力は「カード1枚だけで」平均590W近く、最大瞬間風速では650Wも消費していたというのが同GPUレビュー時のハイライトだった。だが、RTX 5080はRTX 4080 SUPERよりも平均値で20W増、最大値では同等というおとなしさ。

 RTX 5090だと高品質電源ユニットで、焼損防止に16ピンケーブルには温度センサーが必須(でないと万が一が怖い)だが、RTX 5080程度であれば質の良いATX 3.1対応電源であれば、必要以上に恐れることはないだろう(温度センサーがあればさらに安心ではある)。

 RTX 4090のほうがよっぽど電力を消費するというあたりも、RTX 5080の位置付けの難しさ―――RTX 4090を置換するのではなく、あくまでRTX 4080やRTX 4080 SUPERの上位存在にすぎない―――ということがよく表れている。

 ちなみに、RX 7900 XTXについてはRTX 5080よりも消費電力的にはやや上ということが示されている。RX 7900 XTXが養える電源ユニットであれば、RTX 5080も十分運用できるだろう。ただし、その際は16ピンケーブルでスマートに接続するか、少々見苦しいが変換ケーブルで済ませるかは悩むことになるが……。

 次のグラフはRTX 5090およびRTX 5080環境において、「Cyberpunk 2077」を4K・最高画質(レイトレーシング:オーバードライブ+DLSS RR+DLSS「クオリティー」+DLSS MFG「x4」)で5分程度放置した際のTotal Board PowerをPownetics v2でモニターし、そのデータを度数分布分析にかけたものである。

 どちらもデータ数は約30万(1msおきに測定)、横軸はTotal Board Powerの範囲(300〜320なら300W以上320W未満であることを示す)を、縦軸はその範囲に入ったデータが観測された度数を示している。例えば、RTX 5090の場合、640W以上660W未満のデータが40198回観測できたと読み取れる。

GeForce RTX 5080、RTX 4090に下剋上ならず

ゲーム中のTotal Board Power:RTX 5090でCyberpunk 2077を4K&最高画質でプレイした際のTotal Board PowerをPownetics v2で追跡・集計。青のバーは観測された頻度を、オレンジの線はパレート線であり、全体に対する累積パーセンテージ(右軸)を示している

GeForce RTX 5080、RTX 4090に下剋上ならず

ゲーム中のTotal Board Power:RTX 5080でCyberpunk 2077を4K&最高画質でプレイした際のTotal Board PowerをPownetics v2で追跡・集計

 RTX 5090とRTX 5080の電力の使われ方はここまで違う。RTX 5090の場合、700W以上720W未満のデータが273回観測されたがどれも一瞬(1ms)で終わっている。これは全体のデータ(約30万)からすると0.007%。最も多かった範囲が640W以上660W未満で40198回。続いて、620W以上640W未満で38209回となり、この2つの区間だけで全体の約26%を占めている。

 16ピンケーブルに600Wを超える電力が、かなりの頻度で流れていることがわかる。電源ケーブルの質や16ピンケーブルの安全に対するマージン、セーフガードの多さが重要になるのは明白だろう。一方で、RTX 5080のほうは非常におとなしい。

 RTX 5090と対比させるために、データ区間をそのままにして集計しているが、300W以上320W未満が106656回観測され、全体の約35%はここに属している。こちらも超短時間(1ms)で420W以上440W未満のデータが123回記録され、400W以上420W未満のサンプルも全体の8%程度観測できたが、RTX 5090とは比べるべくもない。

 先ほどのSteel Nomadの計測結果と乖離があるのは、Tensorコアの活用の有無。レイトレーシングやDLSSをフル活用するのであれば、16ピンケーブルに400W程度の電力が流れることを覚悟すべき、とこのデータは語っている。

 RTX 5090ほど神経質になる必要はないが、16ピンケーブルはしっかりと根元まで挿し込み、ケーブルの根元から曲げない(16ピンケーブルの場合、コネクターより35mmまでは曲げないことが推奨されている)こと、粗悪な変換ケーブルの利用は避けるなどの注意は必要だろう。

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