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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第89回

OpenAI「Sora」残念な離陸 中国勢が飛躍する動画生成AI

2024年12月23日 07時00分更新

文● 新清士

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Soraのメリット:Remix(リミックス)が強い

 それでもSoraには、今のところ他社が持っていない優位性が残っています。それは「Remix(リミックス)」という機能です。この機能では、動画を最大1080p動画に変換することができます。10秒までという制限はあるものの、720p以下で作られた画像をディティールアップしながらアップスケールすることができるのです。

 筆者も、以前Runwayで作った720pの廃墟動画を、1080pにアップスケールしてみました。変換には3段階あり、強度によって変化の度合いをより大きくしたり、オブジェクトを追加したりできます。元々の動画では、廃墟の中にいる鳥の存在の前後関係が曖昧で、形状も不安定でしたが、Soraを使うことで、はっきりとした形状になり、安定化しています。また、全体的な廃墟のディティールアップがされています。

 こうした機能は、AI動画の品質を引き上げるために、大きく貢献するかもしれません。

▲720pの廃墟動画を1080pに変換したもの。10秒ごとにリミックスモードで生成し、動画編集ソフトで結合している。右下が元の720pの動画

 ただ、AI画像のアップスケールサービスを展開しているスペインのMagnific.aiが動画用のアップスケーラーサービス「Clickative AI」のリリースを予告しています。今後、同様に他の動画AIサービスも追従してくることが予想されます。

動画だけならRunway+Hailuo AIがオススメ

 それでは、今のSoraへのProプランの課金はお勧めできるかというと、正直、積極的には勧めにくいというのが現状の結論です。ポテンシャルは感じるものの、ユーザーインターフェース周りも使いやすいとは言えず、他社サービスに比べて細かいところの使い勝手がまだまだ悪いという印象があります。画像の生成拒否も多いため、特にアニメ系のi2vを目的としているなら、合わない可能性もあります。

 そして、何よりも価格が高い。同じ200ドルならば、カメラ設定など様々な機能を持っているRunwayのUnlimitedプラン(95ドル)や、i2VのHailuo AIのUnlimitedプラン(95ドル)を組み合わせたりする方が、お得ではないかと考えます。ただし、動画AIは秋以降、本当に競争が激しい分野なので、2025年にどこが覇権サービスとなっていくのかは、まだはっきりとはわかりません。各サービスにはそれぞれの得意不得意があるので、自分が目指すAI動画に応じて、サービスをうまく選定することが重要になってきます。

 もちろん、Proプランは、LLMの「ChatGPT o1」や「o1 Pro mode」が無制限に使えるという大きなメリットがあるので、その利用との組み合わせで考える必要があるでしょう。また、Soraも、年明けにはアップデートもあると予想できますので、今後の展開にも期待したいところです。

 

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筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。株式会社AI Frog Interactive代表。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。現在は、新作のインディゲームの開発をしている。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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