今年のAWS re:Inventも「生成AI祭り」だった。マット・ガーマンCEOの基調講演レポートでも書いたが、AWSは生成AIを前提にサービスを再構築し直すつもりだ(関連記事:AWSの再構築が始まった “既存の”ビルディングブロックはどう変わったか?)。推論とトレーニングを効率的に行なうチップレベルの革新を推進しつつ、機械学習やデータ分析などのサービスをSage Maker Unified Studioで統合していく。
そして競合との差別化ポイントは、Amazon Bedrockで利用できる基盤モデルの選択肢だ。OpenAIに全集中するマイクロソフトに対して、Amazon BedrockではAnthropic、Meta、Cohere、AI21 Labs、Mistral AI、Stability AIなどさまざまな基盤モデルを揃える。今年は動画生成AIのLuma AIやソフトウェアエンジニアリング向けのpoolsideなど、日本ではあまり認知度のない基盤モデルも追加された(関連記事:Amazon BedrockにLuma AIやpoolside追加 GraphRAGやプロンプトルーティングにも対応)。あわせて特化型や新興プロバイダーの100以上のモデルにアクセスできる「Amazon Bedrock Market」も発表された。日本からもPreferred NetworkやStockmark、KARAKURIなどのモデルがすでに公開されているという。
基盤モデルの品揃えで勝負するAWS。Amazon CEO アンディー・ジャシー氏も登壇し、御謹製のAmazon Novaもラインナップに加わった。ただ、現時点のAmazon Bedrockは将来性はあるが、まだまだ実績の乏しいインディーズバンドのフェスに見える。正直、AI界隈はクリスマスまでの12日間、毎日新しい発表をし続けるOpenAIの「12 Days」に夢中だ。大手クラウド事業者の代理戦争とも言える基盤モデルの争いだが、注目度ではOpenAIがやはり優位と言わざるを得ない。グーグルの食いつき方も激しいが、AWSはまだ存在感を示せていない。
文:大谷イビサ
ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。