リアルなカーボンと上質なレザーで囲まれたインテリア
「DB12」のインテリアの印象は「オーソドックスだな」というものでした。柔らかく触り心地のよい上質なレザーに、繊維までがハッキリと見えるカーボンで構成されています。最近、はやりのデスクトップモニターのような大げさなディスプレイはありません。インパネ中央部とメーターに必要十分なだけのディスプレイが用意されています。
そしてセンターコンソール部には、小さなシフトノブと、ドライブセレクトのダイヤル、各種のボタンが並びます。しっかりと物理スイッチが用意されているところに好感が持てました。行き過ぎたデジタル化は、操作しづらくなるからです。重要な操作には、やはり物理スイッチを残しておくべきというのが個人的な考えです。超高級ブランドが、僕と同じ方針というのは、ちょっとうれしいところです。
シート、ドア、天井など、細かな部分まで、きっちりと丁寧に仕上げられており、このきめ細やかさこそ、超高級ブランドならではです。サンバイザー裏にあるミラーの開閉の動きが、今まで体験したことないほど滑らかだったことにも驚きました。
ゆったりと走れば快適そのもの
「DB12」のエンジン始動は、センターコンソールにあるダイヤルの中のボタンを押すことで行われます。一瞬の間の後、ブオン!という野太い音と共に、目覚める4L V8デュアルツインスクロールターボ・エンジン。ハイブリッドが増えた現在では、古典的な演出です。ただし、その音量はミニマム、良識の範囲内であり、周囲に気を配るほどではありません。
街中を走り出してみれば、大きな車幅こそ気になるものの、軽いステアリング、静かなエンジン音、快適な乗り心地に、すぐにリラックスして運転できるようなりました。ゆったりと街中を流せば、運転は何も難しいものはありません。21インチもの巨大なホイール&タイヤであることを忘れるほど、まずまずの乗り心地です。
東京都内の渋滞を抜けて、横浜方面に首都高の流れにあわせて走ってみれば、まったく普通のクルマのようにイージーそのもの。80km/hで走行しても、エンジン回転数は1500回転ほどしか回っていませんから、エンジン音もほとんど聞こえません。助手席との人の会話に困ることはありません。
ただし、道が空いた状況で試しとばかりにアクセルを深く踏み込めば、一瞬のためのあとに、一気にエンジン音が高まり、最大トルク800Nmの強烈な加速を味わうことができました。その加速は、モーターの“ドン!”という後ろからモノがぶつかって押されるようなものではありません。ターボらしい、加速するほどに、より加速が強くなるような伸び感のあるものです。
やはり、最高出力500kW(680PS)/6000rpmに、最大トルク800Nm(81.6kgm)/2750~6000rpmというスペックは特別です。
わずかな時間しか走らせることはできませんでしたが、「DB12」の特徴は揺らぎません。最上級の高級車であり、その一方で最上級のスポーツカーでもあったということです。ゆったりと快適な空間でくつろぎながら、その気になれば周りを置いてけぼりにするスポーツカーにもなるというわけです。なるほど、これが「スーパーツアラー」なのかと納得させられる試乗となりました。
アストンマーティン「DB12クーペ」の主なスペック | |
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サイズ | 全長4725×全幅1980×全高1295mm |
ホイールベース | 2805mm |
車重 | 1788kg |
エンジン | 3982cc V8 DOHCデュアルツインスクロールターボ |
最大出力 | 500kW(680PS)/6000rpm |
最大トルク | 800Nm(81.6kgm)/2750~6000rpm |
トランスミッション | 8速AT |
タイヤサイズ | 前:275/35ZR21 後:325/30ZR21 |
車両価格 | 3090万円 |
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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