Hondaがアストンマーチンと組んでF1復帰を発表! 「2026年の開幕戦から勝つ!」

文●栗原祥光(@yosh_kurihara) 編集●ASCII

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左から株式会社ホンダ・レーシング代表取締役社長 渡辺康治氏、本田技研工業取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏、アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チーム会長 ローレンス・ストロール氏、アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チームCEO マーティン・ウィットマーシュ氏

 本田技研工業(以下Honda)は今日24日、本社ビル1Fにて「四輪モータースポーツ活動に関する記者会見」を実施。2026年からアストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チームと手を組み、FIAフォーミュラ・ワン世界選手権(以下F1)に参戦することを発表した。

 HondaのF1活動は2021年をもって終了。現在は、子会社であるホンダ・レーシング(HRC)の技術支援の下、レッドブル・パワートレインズがHonda製パワーユニットの運用をしている。だが、レッドブルは2026年からフォードと契約することを発表。Hondaの去就が去就が注目されていた。

ホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺康治氏

 F1参戦に際し、ホンダ・レーシング 代表取締役社長の渡辺康治氏は「素直にうれしい。継続的に参戦することがブランドとして重要だと考えている」と語ると共に、「アストンマーティンとは今年1月頃から交渉を初め、4月にワークス契約をした。開発はすでに始まりつつある」と、今回はワークス体制で参戦することを明らかにした。なお、プライベーターへの技術供給も可能とのことだが「現在のところ、その話はない」(渡辺氏)という。

新レギュレーションがHondaの方向性と合致している

 気になるのは、2021年で撤退を決めたHondaが、どうして再び参戦を決めたのか、という点だ。2020年の撤退発表時のコメントと照らし合わせながら、参戦の経緯を書き記したいと思う。

 HondaがF1からの撤退を決めた理由としては、カーボンニュートラルに開発リソースを注入する、というものだった。当時のF1は電動化は進みつつあるものの、基本的にはガソリンエンジンで、これからの自動車の流れ(電動化)とは異なるものだった。

三部敏宏 本田技研工業取締役 代表執行役社長

 だが、F1は2030年のカーボンニュートラル実現を目標として掲げており、2026年以降はカーボンニュートラル燃料の使用が義務付けられているほか、最高出力の50%を内燃機関、残りを電動モーターが補うというレギュレーションに変わる。「この方向性がHondaのカーボンニュートラルの方向性と合致している」と、三部敏宏 本田技研工業取締役 代表執行役社長は語る。

 とはいえ、復帰の理由はそれだけではないことが明らかだ。まずはコスト。以前は開発費が青天井で、一説では数千億円という巨費を投じられていたという。三部社長は会見で「これからはコストキャップが課せられる。業績が好調ということもあるが、以前のような参戦における負担は軽減される」と、金銭的な面でF1が継続参戦できると考えているという。あわせて体制面でも、以前は本田技術研究所を中心に行なっていたため、どうしても会社の業績であったり方針に左右されるところがあった。だが今回は、子会社であるホンダ・レーシングが主体とすることで、運営面でも本社とは独立している。

 この方法は、メルセデス・ベンツ本体とAMG、ルノーとルノースポール(現アルピーヌ)と似ており、長期にわたるF1参戦において必須の体制といえるだろう。

 次に技術面。以前のF1では、得られた知見を市販車などへ技術転用することが難しかったという。だが「電動化の技術やノウハウが、電動フラグシップスポーツを初め、これからの量産電動車の競争力に直結する可能性を秘めている」(三部社長)と、今後のF1で得た技術が市販車に活かせると考え、参戦を決めたという。

 さらに「カーボンニュートラル燃料は、我々の航空産業にも転用できる技術であるし、高出力モーターは現在研究開発を進めているeVTOLの分野などに活かすことができると考えている」と、自動車だけではない分野への転用も明らかにした。

三部敏宏 本田技研工業取締役 代表執行役社長

 三部社長は「2021年の撤退後も、要素研究は続けていた」と、復帰に向けての準備を整えていたことも、2026年からの参戦の後押しになっていると語った。「第三期と第四期の間は7年間のブランクがあった。それゆえ、勝つまでに時間がかかった。今回はそうではない」とし、「2026年の開幕戦から勝てる!」と力強い言葉を残した。

 最後にブランディング面。三部社長は「今までF1に参戦しても、ブランディングとして結び付いていなかった。現在、F1は北米で5戦開催されている。北米市場は、Hondaにとって主戦場。参戦する価値がある」として、過去のF1参戦でHondaブランドの価値を高めることはできなかったが、今回は違うと笑顔をみせた。

当初は復帰することは考えていなかった

アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チーム会長 ローレンス・ストロール氏と三部敏宏 本田技研工業取締役 代表執行役社長

 アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チームと手を組む理由と、経緯はどのようなものだったのか。渡辺氏は、昨年12月12日に行なったHondaの2023年モータースポーツ活動計画発表会において、国際自動車連盟(FIA)に2023年からのパワーユニット製造者登録を正式に済ませたことを明らかにしている。この時、渡辺社長は「頂点であるF1の研究を加速していくために登録した」と説明。2026年以降の新レギュレーションはカーボンニュートラル(脱炭素)や電動化が推し進められているとし、「基本的な方向性は一致する」と語った。そして、製造者登録することで技術の議論に加われるほか、レースにおける電動化など、開発におけるヒントが得られる、としていた。

 今回の会見で「製造者登録を届け出た時は、F1参戦は完全に白紙だった」ことを告白。報道が出た後から、いくつかのチームと面会をし、その中の1つにアストンマーティンがいたという。「交渉は1月頃から始まりました。そして今年4月に契約締結に至った」という。その間の2月には、レッドブルが2026年からフォードと手を結ぶということを明らかにしていた。

アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チーム会長 ローレンス・ストロール氏と三部敏宏 本田技研工業取締役 代表執行役社長

 アストンマーティンと手を組む理由について三部社長は「勝利への真摯な姿勢と情熱に大いに共感をしている」と、契約締結した理由を説明。「アストンマーティンは、勝利を目指し現在新施設を建設するなど、様々な強化策に取り組んでいます。今、もっとも勢いのあるチームであり、我々のF1技術を高く評価してくださいました」と声を弾ませました。そして「アストンマーティン・アラムコ・ホンダとして、共に勝利を目指すことにしました」と力強くチーム名を語った。

アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チーム会長 ローレンス・ストロール氏

 その後、アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チームのローレンス・ストロール会長と力強く握手。ローレンス・ストロール氏は「HondaはF1における巨人です。これまで輝かしい歴史を得てきました。Hondaのパワーユニットは、アストンマーティンF1がチャンピオンを獲得するための、最後のパズルのピースになります。ワークスパワーユニットはチャンピオン獲得にとても重要です。そして新しいレギュレーションは、すべてのパワーユニットをリセットすることにつながり、それゆえHondaの知見がとても重要になります。最後になりますが、素晴らしい2社が一緒になることを、ワークスパワーユニットを通じて成功をすることを、心から楽しみにしています」と挨拶を述べました。

 この決定には、アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チームのマーティン・ウィットマーシュCEOの存在も大きく影響している。マーティン・ウィットマーシュは10年前、マクラーレン・ホンダ誕生会見の際に、マクラーレンCEOとしてこの場に立っている。

アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チームCEO マーティン・ウィットマーシュ氏

 「東京にきてワクワクしています。ちょうど10年前、ここにうかがいました。そして89年からの4年間も、Hondaと一緒に仕事をしていました。残念ながら、マクラーレン・ホンダの最後の時にはいませんでしたが、上手くいかなかったことは覚えています。ですが、私はぜひ、またHondaと手を組みたいと思っていました。いつもいつも、私はHondaに憧れをもっていました。ですから是が非でもまたやりたいと思っていました」。失敗を経験している彼がいるからこそ、今回のプロジェクトでは同じ轍は踏まないことだろう。

 現在、チームでは当時のドライバーであったフェルナンド・アロンソ選手がステアリングを握っている。3年後も彼がステアリングを握っているかは不明だが、アロンソといえば、Hondaのお膝元である鈴鹿で「これはGP2エンジンだ」と無線で叫んだことで知られている。三部社長は「過去は過去の話。ドライバーについての選択権はチームが持っているので、チームにお任せする」とし、渡辺社長も「非常に苦しい時期を共にした。アロンソ選手についてはリスペクトしている。チーム運営にまったく関わらないということはないが、最終的な決定はチームにある」と、自分たちに決定権はないということを明らかにした。

三部敏宏 本田技研工業取締役 代表執行役社長

 さて、アストンマーティンとのコラボレーションは、量販車にも及ぶのだろうか? 三部社長は「現時点では、F1だけの話」としながらも「可能性はゼロではない」という。何より会見では電動フラグシップスポーツという言葉が幾度も出てきたことから、ひょっとしたら……という期待を抱かせた。Hondaはソニーとも業務提携をしていることから、今後、とんでもないコラボレーションが生まれるかも、と期待してしまう。

三部敏宏 本田技研工業取締役 代表執行役社長

 三部社長は「Hondaは世界のレースに挑戦し、勝利することで成長してきた企業です。創業者である本田宗一郎が技術で世界一になることを目指し、1959年にマン島TTレースに参戦以来、様々なレースに参戦してきました。Hondaがレースに参戦する理由は、技術と人を育てるためです。モータースポーツは走る実験室です。得られた技術は量産車にフィードバックされ、ユニークで高性能な商品をお客様にお届けしてきました。2020年の参戦終了発表時は、皆さまから厳しい声をいただきました」

 「最高峰のレースに挑戦し、モビリティ技術の限界に挑み、感動を共有する。これはHondaの企業スローガン「Power of Dreams.」「How we move you.」を体現するものです。moveはモビリティの移動するという機能を表すほかに、感動も含んでいます。世界最高峰レースで勝ち感動をする。同じ志をもつアストンマーティンチームと共に2026年から新たに挑戦していきます。ぜひご期待ください」と締めた。

 Honda F1第五期が、どのような歴史になるのか。今から2026年が楽しみだ。

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