ソフトバンクがAI(人工知能)とRAN(無線アクセスネットワーク)の統合ソリューション「AITRAS(アイトラス)」を発表した。同一のコンピュータプラットフォーム上でAIとRANが動作する仕組みで、高品質なRAN環境を提供すると同時に、AIアプリケーションの運用も可能となる。
ソフトバンクの商用ネットワークに導入されるほか、2026年以降には国内外の通信事業者への展開・拡大を目指すという。発表に先駆けて、12日にメディア向けの説明会が開催され、AITRASを活用したデモンストレーションも披露された。
AIとRANの統合ソリューション「AITRAS」を発表
説明会は慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)で実施された。SFCにはAITRASのアンテナが20基設置され、AITRASの実証実験が行なわれている。
AITRASのプレゼンテーションは、ソフトバンク 執行役員 兼 先端技術研究所 所長 湧川隆次氏が担当した。
湧川氏は、ソフトバンクが日本で最もトラフィックが多い通信事業者であり、通信の大容量化に向けて、TD-LTE、C-RAN(集中型RAN)、Massive MIMOなどを導入してきたことを紹介。そのうえで、“次の一手”として「AITRAS」を発表した。
基板にはNDIVIA GH200を採用
AITRASは、サーバーにNDIVIA GH200 Grace Hopper Superchipを使用。仮想化基板やオーケストレーターなどのソフトウェアはソフトバンクが開発。エッジAIサーバーには「NVIDIA AI Enterprise」を実装し、用途・目的に合ったAIアプリケーションを開発・運用できる。
ソフトバンクとNVIDIAは、これまでに5年以上のパートナーシップ関係があり、それによって実現したシステムともいえよう。また、AITRASの開発にあたっては、世界的なオープンソースソリューションのプロバイダーであるRed Hatと富士通ともパートナーシップを締結している。
SFCでは、TDD(4.8GHz~4.9GHz)の周波数帯を使って、20セルでエリアを構築。実際に稼働しているサーバールームも見学させてもらった。7層のNVIDIA GH200で構成されるサーバーは、上の2つがRAN、下の4つがAIに用いられるという。さらに、予備のサーバーも備えている。それぞれのサーバーは、オーケストレーターによってRANとAIの役割を切り替えられる仕組みだ。