アクセンチュアがグローバル調査に基づき提言、“金庫番型CFO”を脱却して目指すべき姿
CFOの役割は「全社変革のリーダー」へ、日本のCFOと企業に足りないものとは?
2024年09月18日 07時00分更新
全社データの掌握、効果創出検証チームの組成、新人材育成が必要
説明会では、CFOがオーナーとなった全社変革プロジェクトの事例も紹介された。
世界有数の規模を持つある食品メーカーでは、CFOが自らプロジェクトをリードするだけでなく、CFO以外が主導するプロジェクトに対しても「効果創出支援チーム」を派遣して側面支援を行い、価値創出をマネジメントしているという。
同メーカーのCFOチームにおいては、データレイクやBIツールなどを活用し、事業部からの報告を待たずに財務データやオペレーションデータにアクセスできる環境を保有しており、それに基づいて、変革プロジェクトを推進した際の財務効果の創出確度を検証したり、進捗状況のモニタリングを行ったりしている。
「全社変革プロジェクトの多くは長期化しており、プロジェクトの定義が徐々に変化したり、進捗を正しく理解できなかったりするケースもある。CFO以外が主導するプロジェクトを効果創出支援チームが支援することで、当初掲げた目標に対して効果が出ているのかを正しく算定し、うまく行っていない場合には何をすべきかを議論できる。また、CFOにとってはプロジェクトへの投資継続の判断材料にもなる。CFOが主導していないプロジェクトにおいても、データに基づく提言、指摘を行うことで、CFOが横断的に関与できる」(山路氏)
アクセンチュアでは、かつてのCFOの役割を「金庫番型CFO」とし、そこからの脱却を提言している。具体的には、FP&A(事業業績管理)を通じて全事業の実績をとらえ、予測分析を行う「全社パフォーマンス掌握型CFO」、会社変革アジェンダを持ち、他部門にも影響を与え、将来の企業価値を自ら創出する「全社変革プロジェクトオーナー」への進化だ。
さらに今回のレポートでは、すべての全社変革プロジェクトに関与し、投資の優先度判断やリターンの促進を通じて、将来の企業価値創出の確度を担保する「全社改革プロジェクト横断での価値創出マネジメント」の役割を担うべきだとも提言している。
山路氏は、日本のCFOの多くは「全社パフォーマンス掌握型CFO」ではあっても、「全社変革プロジェクトオーナー」にはなり得ていないと指摘する。
「日本のCFOはまず、データを掌握することが大切だ。各部門の報告を待たずに、データが自動で掌握できる仕組みと体制の構築に取り組まなくてはならない。また、他部門を巻き込んだ変革アプローチにより、価値の定量化や財務効果の把握ができる効果創出検証チームをプロジェクトに組み込むことが求められる。これらの実現には人材が必要であり、経理部門の人材であっても、ビジネス最前線での経験が積めるような育成モデルに改革する必要がある」(山路氏)
さらに、CFO人材の育成については「いまこそ抜本的なキャリアパスの変革が必要なのではないか」と述べたうえで「武者修行型育成モデル」を提示した。財務部門の中でのキャリア蓄積だけでなく、事業管理や事業企画の経験、全社変革プロジェクトへの参画、さらにはCFO就任前に事業CEOの体験をさせるなど、まさに“武者修行型”での育成モデルを意図的に確立することが大切だと語る。
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今回の調査結果でも示されたように、CFOの役割が大きく変化していることは明らかだ。この役割変化においては、デジタルテクノロジーのスキルを備えることも求められている。
米国の先進企業では「CDO(最高デジタル責任者)」や「CDXO(最高DX責任者)」のポジションがなくなり、次のフェーズに入りつつあるという。その背景にあるのは「DXの牽引役は取締役全体である」という意識の高まりであり、CDOやCDXOだけが担うものではないという認識の変化だ。その点でもCFOがデジタルスキルを備えることは当然であり、財務の専門知識も同時に持ちながら、全社変革プロジェクトのオーナーとしての役割を担うことがますます期待されることになるだろう。もはやCFOは「財務部門のリーダー」という役割には留まらない。