アクセンチュアがグローバル調査に基づき提言、“金庫番型CFO”を脱却して目指すべき姿
CFOの役割は「全社変革のリーダー」へ、日本のCFOと企業に足りないものとは?
2024年09月18日 07時00分更新
グローバルではCFO(最高財務責任者)が「全社変革のリーダー」という役割を担いつつあるが、日本のCFOは“真の全社変革”ができていない――。アクセンチュアが実施したグローバルCFOリサーチの最新版「CFO Forward」からは、そんな現状が浮き彫りになった。
アクセンチュアが2024年8月21日に実施した記者説明会では、同社 ビジネスコンサルティング本部 Enterprise Value マネジメントプラクティス 日本統括マネジング・ディレクターの山路篤氏が、同調査から分かったグローバルトレンドと日本の抱える課題、その処方箋などを紹介した。
全社的な変革プロジェクトをCFOが主導するケースが増加
今回発表されたのは、アクセンチュアが20年以上に渡り実施してきたCFO調査の最新版。世界14カ国のグローバル企業(売上高10億ドル以上)に在籍する1420人のCFO、および財務リーダーを対象としたサーベイとともに、20人のCFOへの個別インタビューを実施。日本からは136人の回答を得ている。
今回の調査ではまず、全社変革プロジェクトにおいて、CFOの役割がますます重要になりつつある実態が明らかになった。
調査によると、社内のデジタル化やビジネスプロセスの変革をはじめとする全社変革プロジェクトについて、「オーナーとして2つ以上のテーマを主導している」CFOは、現時点では11%。ただし、1年後には34%まで増える見込みだという。
またCFOが関わる全社変革プロジェクトの数も、現時点では平均3.1テーマが取り組まれているが、今後1年間で平均2.1テーマに着手見込みであり、合計すると1年後には「平均5.2テーマ」の変革プロジェクトが進むことになると推測されている。
山路氏は、継続的に変革を行う企業のほうが売上/利益で高い成長を見せており、さらにその成長率の差は年々拡大していることを指摘したうえで、変革と価値創出におけるCFOの役割を次のように分析する。
「全社変革プロジェクトのオーナーとして『期待以上の価値を生み出せた』と考えるCFOのうち、57%が『4部門以上に影響を与える変革に関与した』と回答している。つまり、財務/経理部門やIT部門(バックエンド部門)だけでなく、事業現場や顧客対応部門、販売部門、マーケティング部門といったフロント部門に影響を与えていることが、『価値』の創出つながっている」(山路氏)
こうした役割を担うために、CFOは、事業部門/間接部門/管理部門を横断して効果を創出できる人材であることが「必然」となる。アクセンチュアでは、これからのCFOには全社変革プロジェクトのオーナーとして、より多く、より早く推進する役割が求められるようになると予測する。
日本のCFOは“真の全社変革”に取り組めていない……解決策は?
調査結果からは、グローバルと日本の間では、CFOの役割にいくつかの違いがあることも浮き彫りになっている。
同調査によると、グローバルと同様に、日本でも全社変革プロジェクトは増えつつあり、CFOがリードする変革プロジェクトの数も平均2.1テーマと、グローバル平均(2.6テーマ)と大きな差があるわけではない。
ただし「全社の」変革という観点では、日本のCFOの取り組みには課題が残る。財務/経理部門、IT部門、販売部門などには影響を与える役割は担いつつも、事業現場部門、顧客対応部門、マーケティング部門などのフロント部門には影響を与えられていない実態が顕著に表れていると警鐘を鳴らす。
「日本のCFOは限定的な範囲でのみ変革を行っており、“真の全社変革”には取り組めていない」(山路氏)
CFOが他部門、とくにフロント部門からの協力を得られていない背景には、変革を行う価値として「定量的な財務効果」を掲げることができていない状況があると指摘する。
実際に調査項目のなかでも、「CFOは事業責任者と価値を事前合意できているか」「主導する全社変革で財務効果を価値として掲げているか」「全社変革プロジェクトによる価値創出において、高品質データの不足は障壁となるか」の各質問に対して、日本のCFOが「YES」と回答した割合は、グローバル平均のそれを大きく下回っている。
この点において、日本のCFOは課題を認識し、意識を大きく変える必要がありそうだ。山路氏は次のように提言した。
「日本のCFOには、変革で目指す価値を事前に事業部門と握れて(合意できて)いない、定量的価値を掲げられていない、データの質に対する感度が低いといった課題がある。日本のCFOは、質の高いデータを無理にでも集め、それに基づいて全社変革プロジェクトの価値を定量化し、事業部長などと事前に方向性を定め、全体を巻き込んでプロジェクトを推進する必要がある」(山路氏)